第52話「卒業Ⅲ」
電話を切ろうとして・・・
「ガチャッ、はい、もしもし・・・?」
電話を切るのが、ちっとばかし遅かった(汗)
って何でやねん!!
用があって電話してんのに、何をいまさらビビッってんだよ・・・
俺はバカか・・・凹
「小川・・・さんのお宅ですか?
私、▲▲進学塾のヒカルと申しますが・・・」
「ああ、先生!! 本当に娘がお世話になりました。」
ってお母様かよ?!
ビビッて損した・・・(-ω-;)
なんでぇ、静香じゃねぇのかよ、
などと急に強気になってみる俺は、
器の小ささをわざわざ証明しているようなもので・・・
ああ・・・ホント情けない・・・
「とんでもございません。
合格は静香さんが一生懸命頑張ったからだと思いますよ。」
「いえいえ。まさかウチの子があんな学校に入れるだなんて
夢にも思っていませんでしたから。先生方のお陰ですよ。」
俺たちへの褒め言葉のオンパレードがしばらく続きまして・・・
ま、聞いてて気分は悪くないっす(笑)
やっぱ塾なんて受からせて何ぼって商売だよねぇ。
結果させ出しちゃえばどんな親でも頭を下げるもんだよなぁ・・・
な~んてしみじみ物思いに浸ってる場合じゃないんだっつうの。
「あの・・・お母様・・・今日は、静香さんは・・・」
「ああ、静香、今日はお友達と遊びに行ってるんですよ。」
ええええ!?
そ、そうなんですか・・・な、なんてこったい・・・(汗)
「あ、あの・・・何時ごろにお帰りになるでしょうか・・・」
「う~んと、そうですねぇ。
今日はみんなと打ち上げだとか言ってましたから、
遅くなると思いますが。」
打ち上げ!?
中学生の分際で?!(;゚Д゚)
あの野郎・・・
100年早ぇってんだよ。
わざわざ俺様が
もう、バカバカバカ(涙)
「先生、それじゃ私の方から伝言いたしましょうか?」
お母様、今日は何でそんなに親切なんですか・・・
そんなことされたら・・・
俺、この家に電話する理由が
なくなってしまうじゃないですか
・゜・(ノД`;)・゜・
「・・・じゃあ、伝言お願いできますか?」
って言うしかねぇよなぁ(号泣)
「じゃあ、よろしくお願いします・・・」
「わざわざご連絡ありがとうございました。」
電話が終わってしまった・・・
静香に連絡する必要が
無くなってしまった・・・
はは・・・仕事が楽チンだったね・・・よかったよかった・・・
俺の心は何だか空虚のままで・・・
本当に俺は・・・
心から愛している婚約者がいるというのに、
静香という一人の中学生の女の子に
情けなくも完全に心を奪われてしまった俺は・・・
本当にバカだとは思うけど・・・
こればかりはどうしようもなくて・・・
決して届くことのない静香からのメール・・・
何度も携帯をチェックしても、
やっぱり静香からの連絡は無く・・・
お前が初めてメールを覚えたときは、
あんなに毎日毎日嫌というほど届いたというのに・・・
『せんせぇ♪ メールって安いからお得だねぇ♪』
『せんせぇ♪ 今、暇ですかぁ?』
『せんせぇ♪ 明日デートしようよ♪』
あれほどウザかったメールだったけど・・・
今は・・・
お前からのメールを・・・
もう一度読み返したくてたまらない・・・
でも、お前からのメールは確認したら
すぐに削除してたから残ってないんだよね・・・
ほら・・・バレちゃまずいからさ・・・ハァ・・・
しょうがないさ・・・
これで良かったんだと思う・・・
結局、静香と話すことができなかったのは、
本当にケジメをつけたほうがいいっていう
天からの思し召しかもしれない・・・
あいつは、きっと・・・
祝賀会にもこないと思う・・・たぶん・・・
もう2度と静香には・・・
会えないような気がする・・・
でも・・・
これで良かったんだよ・・・
きっとさ・・・
帰りの電車の中で、なんとなくだけど、
多少は気持ちの整理ができたような気がして・・・
静香のことは忘れよう・・・
俺は・・・
俺が愛する人をたった一人、大切にしていけばいい・・・
静香には・・・
また新しい出会いがあって・・・
彼女が幸せになることを遠くから祈っていよう・・・
℡℡℡℡℡・・・
(゚Д゚;≡゚Д゚;)
うわっ?!
マナーモードにしていたはずなのに、
なにかの拍子で解除されちゃったみたいです(汗)
大きな着信音が鳴り響き、
周りの「うっせ~な」という視線にびびりながら、
慌てて、携帯の音源を消そうとして・・・
・・・・・!!!
着信画面に・・・
俺が・・・
諦めかけていた・・・
「S」という文字が表示されていて・・・
「も、もしもし!?」
「・・・・・・」
しばらく・・・多分、ほんのちょっとの時間だったと思うんだけど、
俺には、とても長い時間に感じられて・・・
「もしもし・・・静香?」
「・・・うん・・・。」
静香・・・
俺はまだ言ってなかったよね・・・
君から電話があったあの時・・・
俺は本当に嬉しかったんだ・・・
もう2度と君に会うことも話すこともできない、
そう覚悟を決めたあの日・・・
君からもらった電話が・・・
すごく嬉しかったんだ・・・
「本当に・・・静香なの・・・?」
「うん・・・せんせぇ・・・」