小説「恋するプリンセス ~恋してはいけないあなたに恋をしました~」あらすじ&目次
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11 再会
第137話 誓い
ギルの話を聞いたセイン王子は、深く心を痛めた。
多少なりとも誰かを悲しませただろうとは予想していたが、心の傷を負わせているとは思ってもいなかった。
ギルはセイン王子の中にいるレイを見つけたのだろう。だから側近になりたいと申し出たのだ。
「ギル。気持ちは嬉しい。だけど俺はレイではないし、レイの代わりにはなれない」
「重々承知しております。確かにセイン様の中にレイを見ました。しかしそれだけではありません。レイと出会った時に見えた光が、セイン様にも見えたのです」
「光……」
真っ直ぐ見据えるギルには迷いがないように見える。
「側近でなくても構いません。セイン様にお仕え出来ればそれで良いのです。お願いします」
「ううん。アトラスにとって大事な人材を受け入れるわけにはいかない」
心は揺らいだが、頷くわけにはいかなかった。
「セルダ室長も言っておりましたが、私は自由の身。陛下の側近であるセロード様より、やるべきことが決まれば城を出ていってもかまわないと言われております」
「……では、ギル。このまま城に残ると言うの?」
「はい。私は聖職者ではなくなりましたが、神のお導きには従います」
揺るぎないギルの言葉に、断る理由が見つからない。
「……ギルの気持ちは分かった。しかし、国同士の関係もあるから、この城に残るにしても慎重に行わなければならない。追って連絡する。それでいい?」
「ありがとうございます! 宜しくお願いします!」
ギルは声を弾ませ、頭(こうべ)を深く垂れた。
◇
ギルと別れた後、セイン王子はリアム国王の私室に向かった。
「兄さん。今アトラスから来ているセルダ室長とギルについてだけど――――」
全ての経緯を説明すると、執務机に座るリアム国王が瞳を閉じて考え込んだ。
「セインはギルを側に置きたいと考えているのか?」
「……うん。何があったのかは分からないけど、レイは彼を大切にしていたんだと思う。だからきっと俺にとっても、大切な存在になると感じてる」
居心地の良い存在であることは、僅かな時間でも感じることが出来ていた。
「そうか……。セルダ室長はレイを死んだように見せかける手伝いをしている。全てをセルダ室長に伝えてはいないらしいが、セインがレイであると勘づいているのかもしれない。知った上で推薦したのであれば、セインにとっても、そのギルという者にとっても側にいるのが望ましいと思ったのかもしれない」
リアム国王は険しい表情を崩さず、紙とペンを取り出す。
「シトラル陛下に状況を伝え、判断を委ねる。許可が下りればセインの好きにしていい」
「側近でも?」
「ああ。しかし、その場合は側近として必要な知識をつけることと、ギルが自分の身は自分で守れるようになることが条件だ」
「そっか、側近になれば危険も増えるもんね……人質として利用されたり……」
簡単に自分の手からいなくなるような者を右腕として使うことは、セイン王子の強さにも影響を及ぼすことだった。全てを知り尽くす男が人質になればローンズ王国を脅かす存在になってしまう。
セイン王子は姿勢を正し、理解したことを示した。
◇
数日後、リアム国王が送った手紙はシトラル国王の元に届いた。
「ギルが……?」
セロードの報告にシトラル国王の表情が険しくなる。
「リアム陛下はギルと陛下の判断に委ねると申しております」
「ギルは何故、ローンズに残りたいと?」
セロードはもう一通の手紙をシトラル国王に手渡した。
「こちらはギルからの手紙です。要約すると神の導きであるとのことです」
「それが本当に神の導きなのか……。或いはあの兄弟が裏で手を引いているのか……」
手紙を握り締めるシトラル国王をセロードは静かに見つめる。
「リアム陛下は全て陛下に委ねると仰っております」
「だが、ギルはもうあの男達と繋がった。むしろローンズの息がかかった者をここに置いておくわけにはいかない。ギルの思うようにせよと返事を」
「はっ」
次から次へと自分の足元が崩れていくのを感じながら、瞳を憎悪の色に変え、睨むようにセロードに命を下した。
◇
ローンズ城に残ることが決まったギルは、リアム国王の側近であるハルから直接側近としての基礎知識を学び始めた。また、セイン王子が自分の身を守るための訓練と補助魔法の訓練を行う。
「いい、ギル。自分に補助魔法をかけて、上手く逃げる方法を一緒に考えよう。それが一番簡単な身を守る方法だから」
「ですがそれではセイン様をお守り出来なくなります。お側にいることが私の務めでは?」
「んー。側近は必ずしもずっと側にいるわけじゃない。離れて行動することもある。ギルが一人で行動をしている時になにかあっては困るんだ」
「はい」
ギルは何もかも吸収しようと努力を惜しまず、全力で取り組んでいった。
それは葉が緑から赤に染まる秋まで続く。
セイン王子はローンズ城庭園の奥へと進み、高く聳える黒く光る石碑の前へとギルを連れてきた。
「母が眠る場所だよ」
セイン王子が石碑の前で跪き、祈りを捧げるとギルもそれに倣(なら)った。木の葉が擦れる音が優しく聞こえる。
「ギル」
セイン王子は立ち上がり、名前を呼ぶとギルが不思議そうに見上げた。ギルの赤い瞳を見つめると、頬が勝手に綻ぶ。
「今日この時をもって俺の右腕となり、生涯を共に歩むことを許す」
「え……」
「よろしくね、ギル」
手を差し伸べるとギルの瞳が揺れた。
「……誓いを」
「は、はい!」
ギルは手を取り、額を付ける。
「全てを捧げ、セイン様と共に歩ませて頂きます」
「うん、ありがとう」
セイン王子の側近としてギルが正式に認められた――――。
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セルダ室長
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