頑張ろう、とする時に
かくん、と
膝カックンでも入れるみたいに
頑張るを
へし折るような
そんな存在なんだなと
不意にまどろんだ数分ののち
目を覚まして
じんわりと思い出す
この時期があの時期と
同じ風の匂いだからなのか
微睡の中で
あの瞬間ハッと跳ね上がった周波数に
わたしの芯の悦びに
その言葉がいまだ刺さっているからなのか
なんだろな
急にこうして
あの頃の言葉の数々を
押し寄せる波のように
ざばっと浴びる時があって
真理に気づいてハッとする
わたしが頑張って
笑顔を貼り付けているときに
家庭の中で起こる悲壮な叫びを隠して
社会向けの明るい笑顔を貼り付けて
おはようございますと振りまいている時に
『昨日なんかあった?』と
まったく貼り付け効力がない
その笑顔の下を見透かされるから
わたしはいつもその瞬間
嬉しさとやるせなさと不甲斐なさに
どの気持ちがそうさせるのか
わからないけど
胸の奥から鼻の奥に
涙のはじまりが突き上げてきて
あわててもう一度
明るい笑顔を貼り直したんだった
なんで?いや、うん、、あった
えへへ
いやなんでわかるの?
わからないわけないだろう
真面目、なんかじゃないだろう
ほんとうはエロいだろう
頑張って隠してるのに
あっさり見透かされるのは
恥ずかしさと同じくらいの恍惚もあり
なんでこの人はわかるんだろう、と
なんで?なんでそんなに
わたしのことがわかるの?と
聞きたくて聞きたくて
その時の嬉しさもそのまんま
その時空に置きっぱなし
もういいわ
本当にもういい
いくらなんでもこんなに一方通行は
さすがにもう馬鹿みたい
ちゃんと返事してくれて
ちゃんと意思疎通できる人と
近くにいる方が幸せだし
そう思う矢先に夢で逢うのは
頑張るちからが入るのをかっくんするため
なのかもな
がんばるを超えたその先の
もっともゆるんだ
掴めない場所が
この気持ちよさを知っているから
そこに
何もないその気持ちいい場所に
わたしが還ってしまうんだ
夢ででもいいから逢いたいと
祈りながら寝ていた夜と
夢でなんて逢いたくない
わたしを抱いて触れにきてと
焦がれるように泣いた夜明けと
夢でしか逢えないのなら
もう死んだ人も同然だわと
乾いた笑いを噛み締める朝
幾多の
どんな夜もどんな朝も
白昼夢みたいにみていた姿も
要らないとも言わず
欲しいとも言わず
捨てるとも諦めるとも思わず
微かに残る笑顔と声が
ただの追憶のかけらになっても
がんばるなよ
その言葉が
わたしの胸に刺さったまんま
残響音がふわりと
響き続ける
頑張らないを
がんばってしまうことを
やめよ
掴めないのにずっとあって
ずっとあるのに何も無い
それをそのまま
どうにもしようとしないまま
水準器の水平を保つみたいな
凪のまんまで
いる
すべての期待を手放しても
無くならない遠い光
掴めないけどあるんだもの
風化した痛みもそのままで
いくしかないなと
もう何度目か
数え切れない
慣れきってしまった
いつもの白昼夢を
泡のようにふわりと
胸の中で噛みしめた
