(大野)


・・・ショックだった・・・


渡海くんの手を離しちゃダメだ。


さっきの残像が消えないまま


俺は全身から汗が止まらなかった。


ふたり知らない土地へ行きたかった。


俺や渡海くんに執着しない人の街へ


行きたかった。


俺らを放っておいてよ。


そんな気持ちが強かった。


海辺を走る電車はこんな時でも


キラキラ光る水面の横を通り過ぎていく。



電車にふたり揺られたまま


いつしか人が混み合ってきた。


・・・東京だ・・・


東京の街は俺らを放っておいてくれるから


渡海くんとただ漂いたかった。


だけど安全に泊まれるところを確保しないと。


渡海くんを危険な目に遭わせられない。


・・・お金をそれほど持っていない。


渡海「・・・佐伯教授に連絡しようか?」


それは・・・嫌だった。


大野「俺の婆ちゃん家でもいい?」


渡海「お婆ちゃん家❣️」


・・・あ。喜んでくれてる。


俺はバァバに連絡した。


すぐにいらっしゃいと言ってくれた。


渡海「・・・何も持ってきてないや・・・」


渡海くんがソワソワし始めた。


すごくちゃんとしているんだな。


東京駅の構内に全国の有名なお菓子を


売ってたのを思い出してそこに寄った。


千円以内の銘菓を見つけた。


これなら買える。


渡海「蓮のお菓子にしよう」


・・・俺が蓮だから・・・


渡海くんが選ぶのをこそばゆく見ていた。


夕方になっていたから


それぞれ自分の家に連絡した。


母さんにはLINEを入れて、電話も掛けた。


大野和(母)📱「了解。バァバによろしく」


渡海くんの様子を伺うと


何やら言われているみたいだった。


悪いことしたなぁ・・・


渡海「母さんがお婆ちゃまにご挨拶したいから、連絡先を教えてだって」


俺はバァバの家の電話番号を伝えた。


大野「・・・ごめん」


渡海「いいんだ。嬉しいもん」


俺の体操着を来てはにかんで笑う。


・・・俺の匂い、嫌じゃなかったかな。


大野「婆ちゃん家に着替えあるから」


渡海「これ、脱ぎたくないよ」


俺は驚いて渡海くんを見つめた。


渡海「だって・・・大野くんに包まれて


まるで守られているみたいだもん」


・・・溢れてくる好きの気持ちが


俺のカラダを駆け巡る。


行き交う人々の真ん中に俺と渡海くん。


しばらく見つめあって・・・


大野「行こう」


俺らは総武線の青い電車に乗り込んだ。


快速電車に揺られること、ほんの13分。


父さんと母さんの出身地


東京の新小岩に着いた。


下町だけど平気かな?


そっと様子を伺うと


渡海くんは目をキラキラさせながら


商店街を俺と一緒に歩いてくれてた・・・