狂躁亭払暁通信・天才夭折の道理1801270600 | おととひの世界

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リンクも始めましたよ

今日は
モーツァルトの誕生日

だけどその話から始めはしない

この人も天才には違いない
グスタフ・マーラー
(1860~1911)
でもちょっと生臭い

現実世界で
ある種の強い権威・権力者だったから

ウィーン国立歌劇場音楽監督
ウィーンシュターツオーパー
カペルマイスター

音楽界では
ベルリンフィル常任指揮者と並ぶ最高ポスト

ユダヤ人なのになった
抵抗はひとかたならずなんてもんじゃ
結局石もて追われた

新大陸に渡り
ニューヨーク
メトロポリタン歌劇場で
大指揮者だから仕事にあぶれることは
なかったけれども

一人娘は死ぬわ
重度のうつ病にはなるわ
致命的な心臓病を宣告されるわ

最後は身も心も満身創痍

音楽を聴くと
50になる相当手前でボロボロだよ
満51歳に届く手前で死んでる

昭和天皇崩御の日
AM FM ラジオ一斉に流された
マーラーの交響曲第9番

交響曲ナンバー10
完成させてはいたみたいだけどね
しかし実質的な辞世が9番

なぜあの時一斉に?
というのは未だに分からないんだけど
どうも昭和天皇の
好みだったのでは?という説

多分そうだろうと思うな
でなければ普通は選ばれない
儀仗プロトコルと違う

冠婚葬祭用音楽のプロトコル
ってのがあるからね
ベタなところではベートーヴェン
英雄の第2楽章だとか

大喪の礼も違ってた

朝比奈隆指揮大阪フィル
ブルックナー
交響曲第7番第2楽章

葬送行進曲じゃありませんよ
ショパンのピアノソナタ第2番とか
ベートーベンの3番エロイカみたいに

しかしこの曲は

アントン・ブルックナーが
尊敬してやまなかった
リヒャルト・ワーグナーが

ベニスで七十歳で死んだという
一報をブルックナーが聞いて
書かれた曲

他のどの音楽よりも
『巨星墜つ!』という実感
ドーンとくる音楽

ドッと悲しいというより
気持ちにドっカーンと風穴があく感覚
YouTube にいっぱいあるから後で

何でマーラーの話を
モーツァルトに先立って?

マーラーの最期の言葉が
『モーツァルト!』
だったらしいんだよな

今日はモーツァルトの誕生日

彼は35歳で亡くなりました
音楽の世界では多い
神童タイプの大音楽家
また夭折タイプの神童代表格

モーツァルトが35歳
メンデルスゾーン38歳
シューベルト31歳
ショパン40歳

カルメンの作曲者ビゼーも
そのくらいだったと思う

モーツァルトはまだ
前のめりで死んだと思うな

今まで人類史は冬だったけど
これから素晴らしい
『春』がやってくるんだ!
って信じながらだからね

交響曲第36番リンツ・第38番プラハ
『春が来た!春が来た!』って曲
イタいほどにね


ショパンはどうだったかな?

ビゼー畢生の大傑作『カルメン』

フリードリヒ・ニーチェをして
史上最高の地中海芸術と言わしめた

ニーチェは有名な
サンマルコの石畳の上で発狂するまで
カルメンの鼻歌を歌っていた

そのくらい好きだった
カルメンの指揮と言うか
成功失敗の分かれ目

作曲者本人の心境まで
そこに投影できてるかどうか?だと思う

ギリギリテンパって
悲劇的な賭けを続けざるを得ない

作曲者本人の人生が
はっきり出ていると私は考えます
一見とても明るくカラフルだけど

意外なのフルトヴェングラー
カルメンが大好きだったという話ね

カルメンは
もう神経自体がボロボロって感じ
聴いていてすごくする
ラストに行くほどそんな
もうあとがないっていうところまで
追い詰められてる

しかし愁嘆場とか悲劇調にならない
『なんでこうなるのかなァ?』
という哀れさと言うか可笑しさが
どこかにある

ラスト30分は本当に見事だよね

シューベルトはもっとそうだよね
マーラーは極端にそう

第9はもうラスト巡礼航海に
出かけるって感じな
タイタニックや戦艦大和片道燃料出撃
もうこれは行ったきりという

天才が夭折する必然
そこだと思うんですよ
モテる才能ほどには
神経は強靭タフではないんです


とてつもない能力を持っている

他の人が100年200年かかることを
一瞬でやってしまう
天才ってすごいなと凡人は思う

しかし持っているのは能力だけ

それに見合うだけの
神経のタフさ強靭さを
持ち合わせてはいないんで

あれだけの仕事をすれば
神経は消耗する当然のことで

そして色々な軋轢も生じるから
ますます神経はすり減る

人の何十倍も仕事をし
多分何十倍もすり減って消耗して
ボロボロになっている

モーツァルトも最後はそうだった
シューベルトはもっとそうだったと思うよ

   『 シューベルト?サイアクだよ!
          ともかく人は何よりもまず
            健康でないとね 』

天才ピアニスト
ウラディミール・ホロヴィッツの言葉
ホロヴィッツはシューベルトの
名手だったけどね

同じような道を辿ってきたから
よくわかっていたんでしょ

ホロヴィッツは『謎の引退』を
何度か行ってます

最も有名なのは1950年代に突如引退
その後1960年代後半に突如復活

ホロヴィッツ本人の言によれば
心身の消耗が激しかった
それは最大の理由だけど

エネルギーを放出するばかりで
チャージするゆとりがなかった
人生にはそういう時も必要だと

それができた天才って
あんまりいないんだよね
しかし天才が生きながらえようと思ったら
ホロヴィッツ流に生きるしかない

途中離脱リタイアする
そしてまた復活すればいい

しかし天才は需要がありすぎ
周りがほっておかない

だから消耗させすぎて
早死にさせてしまうというケースが大半

ホロヴィッツは巧妙にそれを避けた

晩年年相応にテクニックは衰えた
しかしそれを上回って有り余る
音楽がそこにはあった

あれは相当長年のチャージがなければ
できなかったことだと思います

そういう生き方ができる人も
滅多にいないけどね
みんな食べるにもに困るから

才能は無限大に近くても
神経の耐久力というか

一定なんですよね人間は

だから仕事をやりすぎた天才は早死にします

音楽家とりわけ作曲家
その傾向がはっきり出てますよね

上手な生き方ができた人が一人

ジュゼッペ・ヴェルディです

ワーグナーと同い年1813年生まれ
80歳以上まで生きながらえた

しかし椿姫やらアイーダやら
たくさんの傑作を残しつつ
56歳で引退しています

あの有名な激しい音楽
『レクイエム』を残してね
身寄りのいない音楽家の養老院を建て
悠々自適の暮らしだった

広大な農園を経営しつつ
若い人の話を聞きながら
余生を送るつもりだった

若い妻とも再婚でき幸せいっぱい

しかし70歳を超えたあたり
もう一度書いてみたくなった

『オテロ』
なんとなく音楽に
悪魔が潜んでいるような
恐ろしい音楽だけど大傑作
大評判になった

ヴェルディ本人が予想だにしないほど
良い出来になってしまった
そして音楽的遺言として最後に
喜劇を一発

若い作曲家が脚本を手伝ってくれた
シェイクスピアの
『ウィンザーの陽気な女房たち』
『ヘンリー4世』

共通登場人物
ヘンリー4世の良き友・戦友

サー・ジョン・ファルスタッフ
彼を主人公とした喜劇
 
   『ファルスタッフ』

イギリスの人がたまにチャーチルのこと
     “  Falstafflike( figure) ”
  『  ファルスタッフライク 』と
表現することがある

  『Falstaff』だけでもおなじ意味

ふとっちょで威張り屋の英雄
しかし時々大失敗をする
ヘコんだところがまたサマになる

貴族仲間と
ウィンザーの陽気な女房たちが
威張るファルスタッフを
へこましてやろうと

散々な目にあわされる
もう降参と白旗を挙げたところで
みんながやってきたことを白状するが

みんな一人一人がそれぞれ
騙されていたことに気づく
若いカップルの婚姻を即席でやり

ラストの歌を歌う

                『  この世はみな冗談  』

               『  ♪この世は  みんな冗談
                         人は   みんな道化
        みんなお互いばかしあって笑っている
                         けれどもよ

                  ♪ 最後に笑っているやつが
              一番笑っているんだからな!』

全員でこれを繰り返して終わり
2分半くらいの大合唱

数え80歳の大作曲家による

   『  人生はそれでも素晴らしい! 』
            『   生きるに値する! 』

という己の人生の結論

類例がないほど強く人生を肯定する
豪快な哄笑・高笑いで終わる

あれっておそらく
モーツァルトが長生きしてしまったら
書いていたであろう音楽

その特権はモーツァルトではなく
ヴェルディに与えられた

ヴェルディの人生も決して
ラクなものではなかった

しかし信じる道に従って生き
強烈な愛国者になった

オペラ『ナブッコ』の歌

    『  飛べ!  黄金の翼に乗って! 』

イタリア人の悲願だった
祖国統一の国民的テーマソングとなり
現在も第二国家になっている
祖国統一のサポート役になった

ヴェルディはそこまで
傲慢じゃなかったと思うけど
むしろ謙虚な人だったけど

モーツァルトに勝ってますよね
本人も手応えあったんじゃないか?

なんとなく
『神から与えられた恩典』
という感じがするんですわね

人生の最後の最後に
八十歳の声聞く頃

あれだけすごい
しかも喜歌劇を書いてるんだから
ヴェルディ以外の誰にも書けなかった
素晴らしい歌を書いた

長生きすると良いこともあるさという
ある種の励ましになってくれる

そういう特権が与えられる天才
本当に一人二人だろうけど