日本酒。ライスワインとしていま海外での方がブームらしいです。結構なことです。しかし向こうの方の熱心さがかえって日本という国の特異性、というより風土、国土の特異性を改めて浮かび上がらせてしまった。どこの国でも酒はあります。しかし酒造りに必要な良質の水源は滅多にありません。イギリス人は酒が好き。しかしイングランド本土ではなかなか酒がうまくできない。早い段階から材木を切り出しすぎて水源を劣化させてしまった。そのため良い水を求めてスコットランドで酒を造った。マッサンの世界です。どんなに広い国でも酒どころというのはそれほどたくさんはないんですよ。お隣の中国や韓国でも同じです。フランスもそう。
ところが日本だけは国土の至る所に酒どころがある。海外の連中が驚くのはその点なんです。しかも軟水と硬水の両方の名水がそれほど遠くない距離で混在している。これは世界的に滅多にない水資源大国です。概して東へ行くほど水がよく、中部関西で軟水と硬水の混在地域となる。酒どころが最も集中しているところです。西へ行くと今度は米の質の良くなる。西日本の酒は昔から米で勝負してきた。
みそのバラエティー以上に、驚くべきは醤油の蔵元のバリエーション。蔵元は日本酒のそれよりもはるかに多い。全国10万以上だそうです。関西の醤油職人が漂流して九十九里にたどり着き、そこで醤油文化を根付かせた話は有名ですが、同じ醤油といっても地方で全く味が違っている。とりわけ九州の醤油。枕崎醤油を初めて食べられた方。少なからず驚かれると思います。特に九州南部ほど甘くきわめて特徴的な味で、関西や関東とも全く違っている。
もともとラーメンの原型は中華そば。老舗の中華そば屋さんほどシンプル。鶏がらスープ+薄口醤油を小さじ3分の2杯。しかしそのブレンドする醤油を工夫している。なにせ10万種類。量と組み合わせのバリエーションは無限大です。しかしそこが研究のしどころ。秘伝中の秘伝。超企業秘密なんです。
ちゃんこ料理。最近は少なくなりましたが、かつては豚肉鳥肉魚がちゃんぽんなんてこともありました。普通だったら気持ち悪くて食えないですよ。しかし和食はそれで食べられる。生姜と味噌なんです。まず生姜の成分が味覚をリセットしてしまう。そして味噌や醤油の醗酵食品の成分が、普通なら混在は不可能な全く異質な味覚をジョイントしてしまうんです。インドカレーに必ず付いてくるマンゴーミルクラッシー。あれも辛さをリセットする機能が発酵食品に。生姜と発酵食品は時と場合により、その性能を互いにブーストする。ちゃんこ料理がそれを最もうまく使っている。
発酵食品を媒介項に異質な味をジョイントするという和食の知恵。さらに料理を選ばない奇跡の酒・日本酒。すでにヨーロッパ人の脳機能の研究者が研究に着手してるみたいです。しかし向こうはいい水が採れない。本格的に研究しようと思ったら日本に来るしかないでしょうね。酒も味噌も醤油もポイントになるのは麹。これもなかなか向こうでは使わない。このテーマは奥が深すぎて、とてもじゃないけど少しのアーティクルでは無理です。1億人の研究課題ですね。