恐怖王イワン | おととひの世界

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イワン4世。日本ではイワン雷帝ってことになってます。とても文学的な訳です。英語ではアイヴァン(イワン)・ザ・テリヴル。直訳すれば恐怖王イワンです。こっちの方が実像に近かったと思います。

セルゲイ・エイゼンシュタインのとても有名な映画「イワン雷帝」。結局第2部で終わってしまいました。第3部は作られていたらしいのですが、ある意味自分をイワン雷帝になぞらえていた大独裁者、ヨシフ・スターリンの逆鱗に触れ、映画そのものが丸ごと破棄されてしまった。ためにどんなものかは知る由もないけれど、あの映画ご覧になった方。イワン雷帝は結構まともな人間に描かれています。しかし彼に関する記録をまともに信じるならば、あんなものではなかった。まさしく恐怖王そのもの。この人に比べれば織田信長なんてごく普通の人です。

ロシアって国、2世紀以上モンゴルに踏みつけられていた国です。そういう点では700年近くイスラム教徒の支配を受けていたイスパニアと似ている。異教徒の文化がかなり残っている。もちろんキリスト教徒から見ればですけれど。残忍苛烈な支配を受けたロシア人から見れば、その汚名をすすぐにはモンゴルやタタールに同じくらい残忍苛烈なけじめをつけなければ自分たちの独立は達成できない。どうもそう思っていたフシがあります。そう考えなければ、なぜイワン雷帝のような無茶苦茶な人間が結構天寿を全うできたといっていいほど長生きし、またその死が全国民から悼まれたという事実をとても理解できない。西ヨーロッパではネロやヒトラーのような人間はまず天寿を全うできません。

27歳ぐらいで気が狂った。そう考えたほうがいい。当時のロシアはボヤールと言われた大地主貴族が権力抗争をやっていた。イワンはそれを徹底的に押さえ込み、いわゆる絶対王政をしいた。特段ヨーロッパを意識したとも思えない。どう考えても教養人でも文化人でもなかった。しかし晩年半分やもめになって、当時のイギリスのエリザベス一世に我々が政略結婚すればバルト諸国もスウェーデンも我々のものになると言ってプロポーズし断られたという、スーパー鉄面皮の人です。彼の最初の妻・アナスタシアが何者かによって毒殺された。イワンはそれから化け物になった。オプリチ二キという首斬り斧を常備した親衛隊を組織。少しでも気に障る者は片っ端から首をはねた。彼は怒鳴ることもしない。面倒くさそうに気に入らぬ者へ目をやり、少し眉をひそめ、少し首をかしげる。それが殺せというサインだったのです。どう考えたってこれは付き合えるもんじゃないですよ。傍にいたらいつ殺されるかわかったもんじゃ・・。だから私開発してきますと言って力があるものは東方へと逃げた。この恐怖の圧力によってロシアのシベリア開発は始まったのです。庶民に生まれても貴族に生まれても、ちょっと災難としか言えない国です。

かといって待つこともできた。力で屈服させられない相手は忍耐強く待っていた。ですから単なる精神異常者でもない。病的ではあるが・・・。ともかくこのような人間が原型を作った。それがロシアという国。誰と言わないけど。そういう人物を主として受け入れる国。そう思って付き合う必要があるんです。