ちょっと待ちなさい!

バスの運転手さんがマイク越しにそう言い、
あたいはおもわず、うわぁ~!ってなっちまった。

…バレちゃった。
ダッシュして逃走することもせず(てか、ビビってできず)、
あたいがその場に立ちすくんでいると、
運転手さん、

確かそんとき乗客が30人ほどもいたのに、
それほっぽって、
バスから降りてきた。

「お金がないんなら、正直にそう言いなさい!」

あまりの正論、
そしてその、運転手さんの、揺るぎなく毅然とした態度に圧倒されたあたいは、

「あ、はい」
としか言えなかった。

そののち、運転手さんは、
クルっと半周し、スタスタと、
バスへと、
戻っていった。

なんだか、
とてもカッコよかった。

…なので、
わたくし、
それ以来、
バスの無賃乗車はしておりません、
それ以外もナニもワルさはしておりませぬ、

とかだったら、
かろうじて美談になる(?)のであるが、
んなわけねぇよなぁ、このポンコツ(はい、拙者のことでござる)はなぁ!!……

その二年後、
こんどは、もっと高額(かつ悪質)な、
タクシー無賃乗車をするのである。

…そうさなぁ、
あの夜は、
コンコンと雪が降り積もっていた夜であった。

あたいの、
暗黒時代の真っ最中、
17の冬の、できごとであった。

所持金約200円のわたくしは、真夜中、
当時のボスの家から、
約5キロ離れた自宅まで帰るのに、
ヤケクソ気味に、タクシー使うことにした。

そして、
わざと、自分のうちから少し離れた場所で降り、

お金取ってくるんで〜、
とかテキトーなこと言って、
逃げて家までひたすら走った。

家に着きそのままおらの部屋へと入り速攻ベッドに潜り込み、なんとか逃げ切れたと思った。

…ところがだ!
なんでだか、
数分後、

自宅のドアが、
コンコンとノックされ、
さらにその数分後、玄関先で、
母親が、
すみませんでした、
と言いながら、

タクシー代を払っていた。
タクシーの運転手さんとおまわりさんがいたようであった。

そして、そのあと、
「あんた!ナニやってんの!?」
っつ〜、母ちゃんの説教を受けつつ、
わたくしは、
とりあえず反省は置いといて、

なんでバレちゃったんだろ!?
と、アタマの中は、はてなマークでいっぱいだったんどすが、

しばらく考え、
理由がわかった。

あ、

雪だ。

…このシリーズも、
まだ続く、
どす。