キム・ヨナの演技を見終わった時、身体中に鳥肌が走った。
世界最高得点を叩き出し、自己の記録更新も達成、そして金メダル。
文句の付けようが無いキムヨナの滑りは、圧倒的な力強さと優雅な美を両立させていた。
浅田真央の最大のライバルである彼女の演技を意識しないと言えば嘘になるだろうが、僅かに硬さが見られ、浅田本来の演技が出来たかどうかは別にしても、堂々の銀メダルに輝いた。
浅田真央を敢えて評価するならば、ジャンプに固執し過ぎた結果、全体の演技が僅かに疎かになったことだろう。
キムヨナにあって浅田真央に無いもの、それは妖艶な美と切れ味鋭い刃物の危うさだと思う。
自分に足りないものをキムが持っている事を浅田本人は知っていたが、キムのコピーでは競技にならない。
浅田には浅田の持ち味があり、それに磨きを掛け、メダルに挑む。
それは全ての選手に言えることだが、頂点に立つことの難しさは滑る者にしか分からない。
安藤美姫もメダル圏内にはいたが、惜しくも5位に終わった。
それにしても回を重ねる度に進化する各アスリート達の努力と精神力は、まさに超人(鳥人)と呼ぶに相応しい。
オリンピックの原点はメダル獲得が目的ではなく、自己表現を達成し、挑戦を繰り返す場である。
キムヨナが頂点に立ったのは、もちろん浅田真央というライバルの存在があったからであるが、それだけではない。
おそらく彼女最大のライバルは自分自身だったのだろう。
スケートの人生に幼い頃から練習に励む。
それは生きる為の練習そのものなのである。
生きることの練習は、日々の生活の中で必要不可欠な栄養源である事を忘れてはいけない。
アスリートたちから学ぶものはメダルでもなく、記録でもない。
生きる為の練習を怠らないということである。
