年棒400万円の男。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

中村紀洋

11月1日、ナゴヤドームは歓喜の波に揺れた。日本シリーズに王手をかけた中日、そして背水の陣で迎え撃つ日本ハム、この一戦はプロ野球の歴史に残る見事な投手戦となった。負けられない日本ハムは第一戦で気迫のピッチングを見せたダルビッシュ。彼に対し中日打線は沈黙を余儀なくされ完敗。苦手意識が残る中でそう簡単に点は取れないだろうと落合監督も投手戦になる事を覚悟していた。
日本一を目前にした場合、不利なのは王手をかけたチームだろう。その優勝への重圧は選手一人一人のプレーに現れてくるもの。追う立場の日本ハムにしてみれば勝つしかない。ヒルマン監督は選手たちに自由に自分たちのプレーをしろと選手たちをマウンドに送り出しただろう。ここへ来ての焦りは禁物。リラックスした状態の中でプレーをさせるのが良い結果を生む。
試合は予想通りの緊迫した投手戦。中日もダルビッシュに負けじと山井を指名。スコアボードに0が並ぶ。1点を取る難しさがそれを物語っていた。しかし連勝中の中日には勢いがあった。犠打でもぎ取った1点が勝利の女神を呼び込んだのである。
中日ドラゴンズは53年ぶりとなる日本シリーズ優勝。今シーズンからプロ野球は新しい制度でである「クライマックスシリーズ」が導入された。わたしはそれを知らずにいたので巨人が日本シリーズに出場するものと思い込んでいた。
中日の優勝に貢献したのは選手全員であるが、この中で一際輝いていたのが、MVPに選ばれた中村紀洋選手である。彼については皆さんもよくご存知であるから詳しくここで述べる事もないと思う。華々しい過去の栄光を背負って大リーグに挑んだ彼を待ち受けていたものは、結果だけが全ての世界でそれを成し得なかった無念だけだった。
日本の地に戻り再スタートをするも怪我に泣かされ、思うような結果も出せず自由契約というプロの世界では素人同然の立場に追い込まれた。年棒5億円という看板が重くのしかかり、どのチームからも敬遠されてきた。
それに手を差し伸べたのが落合監督だった。提示された金額は年棒400万円。入社したての新人サラリーマンなみの金額。「俺はプロだ」と彼は思ったかも知れないし、野球を諦めようと考えたかも知れない。しかし野球に対する情熱が彼の心を揺さ振った。
金など問題ではない、俺から野球を取ったら何が残る…。彼は5億円のプライドを捨て、新人としてバットを握ったのである。