天使がくれたピアノ(第8楽章) | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

楽譜「トラステ賞」
天使がくれたピアノ 第8楽章

祖母が私に聴かせてくれた最初の曲は「乙女の祈り」だったわ。4拍子の明るいテンポの曲で3歳の私でもすんなりと溶け込める、とっても素敵なピアノの為に作られたような曲っだった。祖母の指が奏でるメロディの美しさに聴き入っていた私。祖母と二人だけの教室で乙女が踊っているようだった。母は印刷会社を支えるため、昔のように忙しい日々を送っていた。従業員でも雇ったらと祖母に言われていたが、将来は4色機の大きな印刷機を購入しようという計画を持っていたの。ローランドというその印刷機はドイツ製で非常に高価なものだった。とても人を雇う余裕などなかったし、人件費を払うくらいなら自分が二人分働いて経費を浮かせようとしていたわ。私は暫くの間母から離れて祖母の家にいたの。毎日ピアノが私のお友達になってくれた。小さな指で初めて鍵盤に触れた時の感触、今でもはっきりこの指先に残っているわ。自分で叩いた初めての音、ちょっと重くて力が必要だったけれどピアノは私に音で応えてくれた。私はすっかりピアノが気に入ってしまったの。祖母が夕餉の支度をしている時だった。リンリンリンリン…電話のベルが鳴った。