生き物であることはわかったのだが、一瞬何の生き物かわからず、思
わず心の日記にこの状況を記してしまった。

しばらくして、落ち着いて見てみると、それは生後1週間も経ってないで
あろう産毛に覆われたキジバトの雛であった。 巣から落下したとしか思
えないので、辺りを探すも巣は見つからず、本当にどこから出てきたのか
不思議であった。 過去の記事にも書いてあるが、僕の住んでいるマンシ
ョンの前は、自転車も通れる広い歩道で、その向こうは片側2車線の道路
である。 このまま放っておくと、雛は確実に死んでしまう。 少々悩む。
野鳥を拾うには、いろいろと問題があるからだ。 しかし、目の前の命を
無視することができず、部屋に連れて帰った。 その日の夕方、もう一度
巣を探したが、結局見つけることはできなかった。
キジバトとの生活が始まった。
僕はまず、このキジバトは飼うのではなく、保護するのだと自分に言い聞
かせ、必要以上に構ったりしないことに決めた。 もちろん名前など付けな
い。 キジバトの方も、僕が少しでも動くと、口ばしをカチカチと鳴らして威嚇
し、指を近づけると噛み付いてくる。 これでいいのである。 しかし、3日ほ
ど経つと、キジバトは僕に懐きだし、僕もキジバトに懐いてしまった。 そして
1週間も経つと、僕はこのキジバトを 『キジ松』 と呼ぶようになっていた。

キジ松は食欲旺盛で、僕が作った亀久特製ブレンドご飯をモリモリ食べた。
驚いたのは、その成長の早さである。 日に日に産毛が消え、ハトらしくな
ってゆく。 2週間もすると、少しだが飛べるようにもなった。
ある日、キジ松が自分専用の小さな水入れの前で、身体を震わせるような
仕草をした。 ひょっとしてと思い、100均ショップで浅くて大きめの皿を買い、
それに水を入れてキジ松の前に置いてみた。 するとキジ松は、ピョンと皿の
中に入り、勢いよく水浴びを始めた。 何も教えなくともやるのだなぁ、と感心
したが、そのまま皿の中で身体を横にして寝てしまうのには少々困った。
困ったといえば、もう一つ。 僕がパソコンでブログの記事をカタカタと打って
いると、なぜかキジ松は慌てて飛んできて、僕と同じようにキーボードを口ばし
でカタカタと打ち始めるのである。 文字と文字の間に打ち込まれた謎のハト語
を消しながらの作業は、いつもの倍ほど時間がかかったりした。

キジバト特有の首筋の青い縞模様が無いのが少々気になったが、3週間を
過ぎた頃には狭い部屋の中を器用に飛び回るほどにキジ松は成長した。 そ
して時折り、窓辺に止まり外を見ながらピーピーと鳴いている。 そろそろかな、
と思った。 キジ松と別れるのはやはり寂しいが、仕方ないことである。 僕は、
涙を呑んでキジ松を放つ決心をした。
9月27日晴れ、僕はキジ松を小さな鳥カゴに入れ、公園へ向かった。 しば
らく歩き回った後、程よい場所でキジ松をカゴから出した。 キジ松は勢いよく
飛び上がり、木の一番高い枝に止まった。 あっさりとした別れであった。

僕は、1時間ほどキジ松を眺めていたが、さぁ、帰ってウンコまみれの扇風機
でも洗うか!と、その場を後にした。
以来、大量に余ったハトの餌をたまに公園で撒いたりしている。
その後のキジ松は、実は先日の記事 『秋の公園』 の中に書いている。 記
事中にはハトと書いているが、あれはキジ松のことである。
亀久
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