20年程前の当時のアヤワスカ日記より④
古来、一部のシャーマンにしか開かれていなかった世界が、自分にも開かれる。その期待は並々ならぬものだった。サンパウロでは、実はアヤワスカを用いたセッションを行う団体や組織がいくつもある。なかには宗教団体化しているところもある。
私が訪れたコミュニティは、宗教とは一線を画し、純粋に、アヤワスカによるビジョンや啓示を、個々人が追求する集会だった。シャーマンはまた、シャーマニズムそのものを研究しているブラジル人で、ペルーやアマゾンに実際に何度も通い、現地のシャーマンとも交流を行っていた。シャーマニズムの技法にも色々あるそうで、研究のために、南米各国を旅しているそうだ。
壁一面には、キリスト、仏陀、クリシュナ、シヴァ神、ガネーシャなどなど、各宗教の指導者や開祖、あらゆる国で崇拝されている神々の肖像画や写真が飾られている。
儀式場へは、男女に分かれ、入口から交互に入場していく。部屋に入ると、シャーマンのアシスタントが、香炉から出る煙を入ってくる人にかけて清める。正面から、そして背中から、芳しいお香の香りがゆっくりと体を取り巻く。
男性は部屋に向かって左側、女性は右側に分かれ、地べたに座る。壁一面には、これまたあらゆる神々の肖像画や写真、イラストが飾られている。インドも日本もブラジルも中国も、神々に国境はないというのがシャーマンの主張だ。
部屋の中央には祭壇があり、そこには大きな水晶や、またあらゆる神々の像や置物が飾られていた。部屋の奥にはシャーマンが用いる、太鼓やティンシャなどの楽器が並べられている。やがて最後に、シャーマンが部屋に現れると、入口の扉が締められ、儀式が始まった。
シャーマンは白いタイパンツに、白いシャツ、そしてネイティブアメリカンが好んで身に付ける、鷹の羽でできた、1メートルはあろうかという大きな被りものを頭に乗せ、目元には、これまたネイティブアメリカンの化粧と同じ、赤いラインが鮮やかに引かれていた。
シャーマンは、様々な神々の置かれた祭壇の前で膝まづき、右手の平を平げて地面に突っ伏し祈りを捧げると、立ち上がり、儀式の開始を宣言した。
彼は、紫色の液体が入った2リットルのペットボトルを取り出すと、ショットグラスにそれを注ぎ始めた。既に儀式を知る人々は、ぞろぞろとシャーマンの前に列をつくる。私もアシスタントに促され、列に入った。これも男女が交互にシャーマンから、グラスを渡され、次々に煽る。また一人、また一人と私の順番が近づいてくる。どれだけこの時を待ち続けただろうか?
その深い紫色の液体に、私が知り焦がれてたまらなかった秘密が詰まっているはず。
皆、液体のまずさに顔をしかめ、なかには口直しにミネラルウォーターのボトルを口にする人もいた。しかし、私はどれだけまずくても、顔をしかめることはしないと決めていた。3年前からこれを飲むことを切望し、はるばる日本からやってきたのだ。どんなまずさも全て受け止めようと決めていた。そうでなければ、アヤワスカに失礼だとまで感じていた。
生まれて初めてのアヤワスカ。一気に煽った。そして口に残る後味を十分に堪能しながら、席に戻った。
つづく…