あれはできな、これはできないと不満ばかりをいう「できない君」いつも言われたこと以上のことをやろうとする「できる君」
2人の職場はお弁当屋さん。
入社も同じ時期で年齢も一緒。でもタイプは正反対。
そんな2人のお話です。
(以下、できない君をB君、できる君をA君とします。)
彼らの仕事は、お客様に喜ばれるお弁当を作り販売すること。
主にお弁当の内容を考えるお仕事です。
このお弁当やさんのお客様の7割は女性客です。
そこで弁当屋の社長は「女性に喜ばれる看板商品を作れ!」と指示をだします。
できないB君は、こう言います。
「僕は男性だから、女性の気持ちはわからないな~」
できるA君は、こう言います。
「女性が喜ぶ弁当か~わからないけど、いろいろ調べて食べてみよう!」
すでに、スタートから考え方が違うのです。
A君はB君にこう言います。
「仕事が終わったらデパ地下のベンんとうコーナーに行ってみよう!」
できないB君は「え!残業代はでるの?でないならやりたくないな~」
A君、「出るわけないじゃん!それより、他のお店がどんな弁当を作ってるか見にいこうよ!」
B君はOkしませんでした。
結局、できるA君は1人でデパ地下に視察に行くことにしました。
19時のデパ地下は賑わっていました。
何より驚いたことは、こんなに弁当屋惣菜を求める人がいるんだ~ということ。
この光景をみただけでも、ワクワクします。
もし、うちの弁当屋がここで出店できたら、どんなに楽しいだろう!
そして、ある行列店を見つけます。
「なんだ!あの行列店は?」
このデパ地下で一番売れてる「デラックス中華弁当」の行列でした。
しかも並んでいるのは全員女性。
で、どんな弁当なんだ.....
え!
2,000円?
A君B君が働く弁当屋で一番高い商品は1,000円でした。
しかも1,000の商品は滅多に売れません。
平均単価は600円くらい。
A君は、早速この2,000円の弁当を買ってみることにしました。
待つこと20分。
ずっしり重たいデラックス中華弁当を持ち帰ることなります。
結局家に戻ったのは夜の11時。
お腹が空いてたのですが、この中華弁当を食べませんでした。
一つ一つのおかずのグラムを計り、原価計算をします。
そして、また同じように箱に入れ、冷蔵庫に。
A君は、次の日出社したら、この商品に行列ができていたことを、みんなに教えたかったのです。
次の日
「社長!みんな!これ見てよ!」
「この弁当いくらだと思う?」
興奮しているのはA君だけ。
みんなは「は?」といった感じです。
それを見た社長「なんだそれは??」
A君は昨日の視察と原価計算とこの弁当の価値をレポートにまとめていたので、すぐに社長に詳しく伝えることができました。
社長「2,000円の弁当か..こんなのが飛ぶように言うれたらどんなに楽しいか^^頑張ってくれよ!」と一言だけ。
1分もしないで話は終わりました。
それを見ていたできないB君はこう言います。
「デパ地下だからだろ?ここは住宅街だし無理だよ。客層が違う。」
「で、その弁当代や交通費は経費ででるの?」
A君「これは僕が好きでやってることだから経費なんかいらないよ!」
「ふ~ん、よくやるな..」
お互い理解できない部分でもありました。
そんなある日、お客様からこのような声が入ってきます。
「全部の弁当に入ってる玉子焼きの大ファンなんです!玉子焼きだけを売ってもらうことはできませんか?」
弁当ではなく、おかずの1品玉子焼きの大ファンがいたのです。
実は、この玉子焼きレシピを考えたのはB君でした。
B君はA君にこう言います。
「2,000円弁当もいいけど、1つ1つ中身が重要なんだよね。でも、うちは弁当屋だ。玉子焼きだけを売ることはできないね。」
A君「いやいやそれは違うだろ!お客様はわざわざ手紙まで送ってくれたんだ。できない!で終わられるのはもったいないよ!」
B君はこう言います。
「玉子焼きがどれだけ大変かわかるだろ?時間はかかるし単価は低い。無理なんだよ玉子焼きを看板メニューにするなんて...」
その日はちょど会議。
玉子焼きの単品メニューをどうするかを話し合うことになります。
社長は喜んでました。
「おお!そんなお客さんがいたのか~!」
「よし!じゃあA君の言う通りこの玉子焼きを単品販売できるように、準備を進めてくれ!」
いろんな議論を交わしましたが、B君以外は手作り玉子焼きの単品販売をやるべき!と言いました。
B君はその時、こう思ってました。
「玉子焼きを甘く見えてるな、、どれだけ手間がかかるか実際にやったことがないからわからないんだろう」
確かに、B君の言うことも間違いではありません。
玉子焼きは誰でも同じように作れる簡単なものではありません。
仮にできたとしても、とても時間がかかるのです。
B君はそれがわかっているだけに、玉子焼きプロジェクトが反対だったのです。
なんだかんだでA君がこのプロジェクトの責任者となり、玉子焼きキャンペーンの日がやってきます。
販売目標は300個となりました。
B君はこう言います。「300??ムリムリ!300なんてできっこないよ!」
無理だということをみんなに伝えましたが、やる気満々の社内のムードは変わりませんでした。
そして、キャンペーン当日。
B君の言う通り、店内は大パニックです。
作り置きの150個の玉子焼きはあっという間に売れ、残り150個は作りながら販売します。
焼きたての熱い玉子焼きをパックに入れることができない。
卵を溶く人も足りない。
焼き加減や完成にムラがある。
他の弁当も遅れ遅れ。
店内はスタッフがウ身動きできないくらいぎゅうぎゅう。
そして、最悪の事態に。
会議用の弁当30人分の注文をすっかり忘れていたのです。
結局、玉子焼きは180個で販売終了。
社長のクレーム対応は5件。
店内はぐちゃぐちゃになってしまい、その後もバタバタした1日になってしまいました。
B君は、こう言いました。
「だから言っただろ?無理なんだよ。」
一番ショックを受けたのはA君でした。
A君は弁当屋の仕事が大好きでした。
「できない」「無理」と言いたくないのです。
でも、お客さんにも社長にも、たくさん迷惑をかけてしまったのが現実。
しばらくは、おとなしくしてよう。
自信もモチベーションも一気に下がってしまったのです。
玉子焼きプロジェクトは1回で終わったのかというと、その後も続きました。
責任者はB君に変わり、B君は冷凍玉子焼きの開発を担当することに。
ニーズが見えればあとは仕組みを作ること。
担当といっても、手作りを止め外注にしただけです。
売上はというと、手作りのような爆発的人気はありませんが、ぼちぼちの売上です。
看板商品とは言えないけど、玉子焼きのファンは確実に増え続けています。
そうこうしているうちに忘年会シーズンになりました。
この弁当屋の会社でも忘年会をやります。
そして1年に一度、スタッフにいろんな賞を与えます。
売上アップ賞
接客優秀賞
総合管理優秀賞
「今年は、玉子焼きの1年だったな。はじめは失敗したけど、B君!なんとか立て直してくれてありがとう!」
できないB君は「玉子焼き特別賞」を受賞することになります。
「お!さすが!」
「おめでとう!」
「すごいですね~!
B君はみんなに祝福されました。
これが現実です。
「B君は会社に利益を出した。」
「自分は損失を増やした。」
やっぱり、この差は大きいよな....。
誰よりも会社やお客様のことを考えてたA君が忘年会の席で表彰されることはありませんでした。
玉子焼きプロジェクト以来すっかり元気がなくなったA君は自分で自分の居場所をなくしていたのです。
数日後、社長はA君を呼び出してこう言います。
「この弁当屋の次の社長になる気はないか?」
A君は何を言われてるのか、さっぱりわかりませんでした。
「社長!僕は提案したことも取り入れられることはないし、想いばかり強くて失敗しかしてません。経営者なんて無理です。」
「無理か...無理なら無理だな」
「以前の君なら、即答でやります!言ってくれたんだけど、みんなと同じになっちゃったのか?」
「うちの会社で一番足りないことはチャレンジだよ。」
「できる範囲のことはつまらないし、お客さんも感動しない。」
「今の冷凍玉子焼きが売れて喜んでるのは誰だ?お客様に喜ばれていないから売上もボチボチから変化しないだろ?」
「少なくとも、俺は嬉しくない。A君も同じだろ?」
「失敗してもいいんだよ。喜ばれるまでチャレンジし続ければ..」
社長は本音で話をしてくれました。
A君のモヤモヤは一気に吹き飛びました。
見ててくれる人がいた
認めてくれる人がいた
A君は社長の目の前で今までの想いが一気に溢れ出てきて、涙が止まりませんでした。
その後、A君は経営者になるための道へ進み、B君はビジネススキルと管理能力を高める道を進むことになります。
この2人が中心で店舗数が増え、会社の業績は一気にがりました。
社長の判断は正しかった。
A君は何ができるか?
B君は何ができるのか?
悪い部分を見るのではなく、良いところを見ていたのです。
で、手作り玉子焼きプロジェクトはどうなったか?
30年たった今も手作り玉子焼き企画がうまくいったことはありません。
社長になったA君と現場責任者のB君は、今日も玉子焼きのことで揉めているそうです。
自社ビルの最上階の役員室で。
おわり
このお話は、実話を幾つか組み合わせたフィクションです。
あの会社のお話ではありません。笑