七色の石が覚えていたこと|亡きテツオが白猫メルタンへ残した想い | 猫ポスト

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猫とコーギーたちが暮らす「ニャン寺」
笑える日常から歴史・科学・ことわざまで、動物たちと楽しく学ぶ物語ブログです。

実在する動物たちの個性をもとに、笑ったり、学んだり、ときにはほっこりする物語をお届けしています
初めての方もコメント大歓迎です♪


↑1話はこちら↑


ニャン寺の縁側。

白猫メルタンは、胸元の七色の石を、ずっと見つめていた。



トコトコトコ。

門番のテツオがやって来た。


テツオ

「……ああ。」


白猫メルタンの前まで来ると、テツオは静かに座った。

そして――七色の石を見る。


テツオ

「聞きたいことがある。」


白猫メルタン

「なあに?」


テツオ

「その石。」



白猫メルタン

「うん。」


テツオ

「キラキラ島のテツオが、くれたんだな。」


白猫メルタン

「……うん。」


少し離れた場所には、トラ住職。

そしてジャンジャン和尚。

みんな、静かに話を聞いていた。



テツオ

「前に聞いた。」


テツオ

「キラキラ島のテツオは……亡くなったらしいって。」


白猫メルタン

「…………。」


テツオ

「風の噂だったんだろ。」


白猫メルタン

「うん。」


テツオ

「本当なのか?」


白猫メルタンは、七色の石を両前足でそっと包んだ。



白猫メルタン

「分からなかった。」


白猫メルタン

「ずっと、分からなかったの。」


チョコは、白猫メルタンの隣に座る。



チョコ

「噂だけだったからね。」


白猫メルタン

「だから、信じたくなかった。またキラキラ島へ行けば、会えるかもしれないって。」



その時――。


キラァァァ……。



七色の石が、これまでで一番強く光った。


白猫メルタン

「…………!」


チョコ

「メルタン。」


トラ住職

「石が……。」


石の光は、縁側の前に、淡い七色の景色を映し出していく。



そこは――

遠い、キラキラ島だった。


夕暮れの海。

白猫メルタンが、再び旅へ出る前の日。

キラキラ島のテツオは、海辺の岩の上に座っていた。

その前には、まだ小さかった白猫メルタン。


キラキラ島のテツオ

「これを持っていけ。」


前足で差し出したのは、七色に光る小さな石だった。



白猫メルタン

「きれい。」


キラキラ島のテツオ

「この島の石だ。」


白猫メルタン

「どうしてくれるの?」


キラキラ島のテツオ

「…………。」


テツオは、海の向こうを見る。


キラキラ島のテツオ

「怖くなった時に見ろ。」


白猫メルタン

「石を?」


キラキラ島のテツオ

「ああ。」


キラキラ島のテツオ

「一人じゃないって、思い出せる。」


白猫メルタンは、石を大切に受け取った。

「ありがとう。」


キラキラ島のテツオ

「礼はいらん。」


白猫メルタン

「でも、ありがとう。」


キラキラ島のテツオ

「…………。」


その時。

ポタッ。

一滴の涙が、七色の石に落ちた。



白猫メルタン

「雨?」


空は、きれいに晴れていた。

白猫メルタンが顔を上げると、テツオは海の向こうを見ていた。


キラキラ島のテツオ

「……いっぱい友達を作れ。」


白猫メルタン

「うん。」


キラキラ島のテツオ

「困っている奴がいたら、助けろ。」


白猫メルタン

「テツオみたいに?」


キラキラ島のテツオ

「俺みたいには、ならなくていい。」


白猫メルタン

「でも。」


白猫メルタン

「優しいテツオみたいになりたい。」


キラキラ島のテツオは、何も答えなかった。

ただ、もう一滴だけ涙を落とした。


その涙が――

七色の石へ、ゆっくり沁み込んでいく。


キラキラ。


七色の石が、初めて強く光った。

景色が変わる。


白猫メルタンが旅立った後の、キラキラ島。

同じ海辺。

同じ岩。


だけど――

そこに、テツオはいなかった。


海風だけが、静かに吹いている。

岩のそばには、小さな花が置かれていた。


そして――

海を見つめる島の動物たちの姿。



誰も、言葉を出さない。

ただみんな、同じ場所を見ていた。


最後に映ったのは、夕陽に照らされた海。

そこへ向かって、小さな光が一つだけ、溶けていく。


キラキラ。


まるで、テツオの想いが、海の向こうへ旅立っていくように。


光の景色が、ゆっくり消えていく。

ニャン寺の縁側に、静けさが戻った。


白猫メルタン

「…………。」


白猫メルタンの目から、ぽろりと涙が落ちた。



白猫メルタン

「風の噂じゃなかった。」


チョコ

「…………。」


白猫メルタン

「この石が。」


白猫メルタン

「テツオの最後を、覚えていた。」


ジャンジャン和尚

「……キラキラ島のテツオ殿。」


トラ住職は、七色の石を見つめている。


トラ住職

「そうか。」


トラ住職

「この石は、ただの思い出の品じゃなかったんだな。」


白猫メルタン

「うん。」


トラ住職

「テツオの涙と。」


トラ住職

「白猫メルタンを守りたいという想いが、残っていた。」



テツオは、昨日まで足跡が止まっていた場所を見る。


テツオ

「じゃあ……。」


白猫メルタン

「?」


テツオ

「濡れた足跡は。」


トラ住職

「キラキラ島のテツオ本人ではない。」


テツオ

「…………。」



トラ住職

「石に残された、あの子の想いだったんだろう。」


チョコ

「メルタンが怖がらずに、ここまで来られるように。」


白猫メルタン

「旅の間も。」


白猫メルタン

「石が光るたびに、テツオがそばにいるみたいだった。」


チョコ

「うん。」


白猫メルタン

「ニャン寺へ近づいた時も、そうだった。」


ジャンジャン和尚

「では。」


ジャンジャン和尚は、ニャン寺のテツオを見る。


ジャンジャン和尚

「なぜ足跡は、テツオ殿の前で止まったのでありますか?」



テツオ

「俺も聞きたい。」


白猫メルタンは、少し考える。


そして――

ふっと笑った。


白猫メルタン

「テツオが、テツオだったから。」



テツオ

「意味が分からん。」


ジャンジャン和尚

「拙僧も分からないであります!」


チョコ

「ふふっ。」


白猫メルタン

「キラキラ島のテツオはね。」


白猫メルタン

「誰かが困っていると、絶対に放っておけなかった。」


白猫メルタン

「ニャン寺のテツオも、同じでしょ?」


テツオ

「…………。」


白猫メルタン

「だから石は、分かったんじゃないかな。」


白猫メルタン

「同じように、誰かを守る子がいるって。」


テツオは、しばらく黙っていた。

そして――

白猫メルタンの前に座った。


テツオ

「俺は、キラキラ島のテツオを知らない。」



白猫メルタン

「うん。」


テツオ

「会ったこともない。」


白猫メルタン

「うん。」


テツオ

「でも。」


テツオは、七色の石を見る。


テツオ

「そいつが守ってきたものなら。」


少しだけ、目を細めた。


テツオ

「これからは、俺も守る。」


白猫メルタン

「…………。」


チョコ

「テツオ。」


ジャンジャン和尚

「テツオ殿……。」


トラ住職は、静かにうなずいた。


その瞬間――。

キラァァァ……。



七色の石が、やさしく光った。

今までのような、不思議な光ではなかった。


どこかあたたかくて。

安心したような光だった。



庭の石畳。

最後まで残っていた、小さな濡れた足跡が――

朝の光の中で、静かに消えていく。


一つ。

また一つ。

そして、もう新しい足跡は現れなかった。



カラン……。


誰も触れていない山門の鐘が、一度だけ鳴った。


ジャンジャン和尚

「……さようなら、でありますな。」


トラ住職

「いや。」


トラ住職は、白猫メルタンとテツオを見る。


トラ住職

「“ありがとう”だろう。」



白猫メルタンは、七色の石をそっと握った。


怖がりだった自分に、勇気をくれた石。

大切な友達の涙が沁み込んだ石。


そして――

遠いキラキラ島から、自分をニャン寺まで導いた石。


白猫メルタン

「ありがとう、テツオ。」


チョコは、白猫メルタンの隣で静かに海の方を見た。


白猫メルタンも、その視線の先を見る。

二人は旅の途中だ。

ニャン寺は、旅を終える場所ではない。


けれど――次の一歩を踏み出す前に、

大切な想いを受け取る場所になった。


七色の石はもう、何も語らなかった。

ただ――白猫メルタンの胸元で、静かに輝いていた。


↓第十話↓


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