夕方の本堂。
日が傾き、境内が橙色に染まる。
本堂の入口――
テツオ、腕組み。直立。無言。
その横を、
メルタン住職が通りかかる。
メルタン住職、足を止める。
テツオを見上げる。
「……テツオさん」
テツオ、動かない。
(だが、聞いている気配はある)
メルタン住職、少し考えてから言う。
「今日、何かありました?」
沈黙。
風が吹く。
テツオ、
ほんのわずかに首を動かす。
「……猫が三匹通りました」
メルタン住職
「はい」
間。
テツオ
「犬も一匹」
メルタン住職
「平和ですね」
さらに間。
テツオ
「……葉っぱも一枚」
メルタン住職
「それも監視対象なんですか?」
テツオ
「はい」
メルタン住職、
少しだけ笑う。
「大変なお仕事ですね」
テツオ、
腕組みを組み直す。
「……平和なので」
その瞬間。
本堂の中から――
ガターン!!
木魚、転がる音。
二人、同時に振り向く。
中では、
ジャンジャン和尚が
木魚を追いかけている。
メルタン住職
「……あちらは?」
テツオ
「……対象外です」
メルタン住職
「えっ」
テツオ
「常習犯なので」
メルタン住職、深くうなずく。
「なるほど……
用心棒にも、線引きがあるんですね」
テツオ
「はい」
テツオ、再び正面を向く。直立。
夕日。
平和。
(なお、葉っぱはもう一枚通過した)
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