夜明け前の本堂。
まだ鐘も鳴らない時間。
ジャンジャン和尚は、
一番後ろの柱の影で、じっと座っていた。
お腹は空いている。
眠くもある。
正直に言えば、少し不安だった。
トラ住職がいなくなってから、
本堂は静かすぎた。
説法の合間に落ちてくる、
あの低い声。
失敗しても怒らず、
「まぁ、そういう日もある」と笑う声。
ジャンジャン和尚は、
毎朝、門の前まで走った。
誰もいないとわかっていても、
つい、しっぽが少し上がってしまう。
「今日は来るかな」
誰にも聞かれないように、
小さくつぶやく。
ある夜。
座禅が終わったあと、
メルタン住職が灯りを一つ多く残した。
――待つって、
何もしないことじゃない。
信じて、
場所を守って、
灯りを消さないことなんだ。
その夜、
ジャンジャン和尚は珍しく、
吠えなかった。
ただ、
トラ住職の座っていた場所の前で、
きちんと姿勢を正した。
小さな体で、
精一杯まっすぐに。
「帰ってきたら、
ちゃんと“おかえり”言いますから」
誰に聞かせるでもなく、
そう思った。
数日後――
門の向こうから、
聞き慣れた足音がした。
ジャンジャン和尚は、
走らなかった。
立ち上がり、
胸を張って、
一歩だけ前に出た。
守れた。
ちゃんと。
そう思えた、
最初の朝だった。
↓住職シリーズの
season1 エンディング動画です。
※年初の動画を一部流用しています。
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