ふと、トラ住職は気づく。
ライムちゃんが、時おり、何もない空間を見上げていることに。
「……ラピスちゃんの娘さん、ですな?」
ライムちゃん、鈴を押さえて小さく鳴らす。
チリン……
「にゃ。(ママ、静かな人)」
トラ住職、微笑む。
「ええ。よく、見ておられる」
分かれ道。
トラ住職、立ち止まる。
「……ここまでですな」
ライムちゃん、一歩前に出て、急に真剣な顔。
「にゃ……」
チリン。
トラ住職、身構える。
(まさか、別れの言葉……?)
次の瞬間。
ライムちゃん、トラ住職の袈裟に鈴を引っかけた。
「にゃ!(忘れ物防止!)」
トラ住職、爆笑。
「はははは……
これは……
母上より賑やかですな」
ライムちゃん、どや顔。
その後。
トラ住職が歩くたび、どこからか聞こえる。
チリン……
チリン……
振り返っても、姿はない。
ただ、風と鈴の音だけ。
トラ住職、そっとつぶやく。
「……見守り役も代替わりですな」
静けさは、少しだけ賑やかになった。
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