テツオがその席を守る夜編 | 猫ポスト

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コーギー、猫との暮らし。昨年はベンガル猫をお迎えし、ダックスと銀次郎を看取りました。

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― 用心棒(自称)、動かず ―


夜。

本堂の灯りは、一つだけ残っている。


人はいない。

説法もない。

ただ、席だけがある。


テツオは、本堂の端に立っていた。



腕を組み、いつもより深く息を吸う。


見張りだ。

……誰も来ないのに。


座布団は、二つ。

一つは、今日使われた跡がある。

もう一つは、ずっと使われていないのに、一度も乱れていない。

テツオは、その前を通らない。

近づきすぎると、守れなくなる気がした。


夜風が、本堂を抜ける。

灯りが、ふっと揺れた。

テツオの耳が動く。


(……来たか?)


来ない。


それでも、テツオは動かない。

床が、きし、と鳴る。

自分の足音だ。


「……静かにしろ」

誰に言ったのか、自分にも分からない。


木魚を見る。叩かれていない。

だが、叩く位置が、ちゃんと覚えられている。

テツオは、それを知っている。

背中で、何度も聞いてきたからだ。


夜が深くなる。

テツオは、一歩だけ前に出る。

座布団の前で、止まる。


触らない。

直さない。


そこにあることを、

確認するだけ。


「……問題なし」


低く、短く。

報告は、誰にも届かない。

それでいい。


夜明け前。

鳥が鳴く。

テツオは、腕を組み直す。

少しだけ、力を込めて。


誰も来なかった。

それでも、席は守られた。

それだけで、用心棒の夜は終わった。



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