字を書くのが楽しくなり、もっとお稽古したくなるペン字・書道教室の太田真采世です。
外出自粛が続く中、数々の展覧会が作品展示をとりやめたり、中止になったりしております。
私もせっかく表具して出品したにも関わらず、展示されずに返されるかと思うと、非常に残念でなりません。
そこでお家時間の長い今、過去の作品を振り返り、少しずつご紹介することにいたしました。

これは童謡「月の砂漠」を調和体で書いた作品です。
「月の砂漠」という曲には思い入れがあります。
私が子供の頃に、父がピアノを弾きながら歌ってくれた歌です。
父は大学時代は混声合唱部に所属し、ギター、ピアノ、尺八など、楽器を演奏するのも好きでした。
晩年、脊髄小脳変性症という小脳が委縮して徐々に運動神経がだめになっていく難病になり、10年患って他界しました。
元気な頃はカラオケも好きで、カッコつけて歌っていた姿を思い出します。
そんな父は、字がとても上手でした。
几帳面で、どんなに急いで書いても整った楷書を書くので、子供ながらに『急いで書くメモなんて続け字で速く書けばいいのに』と思ったほどです。
その父がだんだん歩けなくなり、しゃべれなくなり、食べれなくなり・・・と、何年かがかりでいろいろな機能を奪われていく・・・、本当に残酷で苦しい介護時代がありました。
この曲は、そんな悲しい時代のことも、子供の頃のいろんな楽しい思い出も、いろいろ入り混じって思い出され、曲調の物悲しい雰囲気と相まって、書きながらとても切なくなる作品です。
金と銀の鞍置いて、二つ並んでゆきました・・・のイメージから、砂漠を金と銀で描き入れてあります。
辛く悲しい思い出もありますが、やはり父を一番思い出す童謡なので、この歌は今後も書き続けていきたいと思っております。