おとといの夜(1時すぎ。)、紅茶を飲みながら、妻と日米首脳会談後の記者会見をTVニュース(生中継)で見る。ブッシュ大統領とともにやや緊張の面持ちで現れた我らが小泉純一郎総理。米国大統領の報告に引き続き、「同盟国である米国を支援する。テロとの戦いには決意と忍耐が必要だ…」と英語でスピーチした。




 小泉総理のファンであるうちの奥さんと顔を見合わせ思わず拍手。記者の質問に答えた二度目の発言は日本語だったが、歯切れのいい「小泉流英語」(日本語と同じトーン)はアピール効果十分。米国大統領とのツー・ショットはCNNでもそのまま流された。新しいタイプの総理であることを改めて米側に印象付けたに違いない。それにしても、ブッシュ大統領の言葉はシンプルでストレート。「ジャスティス」(正義)、「イーブル」(悪玉)、「ディターミネーション」(決意)という言葉が繰り返し登場する。クリントンやゴアだったら、また違ったスピーチになったと思うが、ここらへんの親しみやすさ、分かり易さがブッシュの真骨頂。特にこういう非常事態?においては、米国民の共感を得ることは間違いない。




 外国首脳との共同記者会見で外国語を使った総理は、これまでほとんどいなかった。それだけに(原稿なしの総理就任演説の時と同様に)とても新鮮に感じた。唯一、記憶にあるのは80年代のはじめ、留学先の米国で聞いたレーガン・中曽根会談の後の記者会見。(だったと思うが…。)小泉総理よりはすっと短かいセンテンスだったが、たしか「ウィー・ディスカス・ベアリアス・イシュー。(いろんな問題について話し合った。)アウア・コミュニケ・ウィル・ビー・イシュード・トモロー」(明日、共同コミュニケを発表する。)」と中曽根総理(当時)が話した場面を、やはりTVで見た覚えがある。




 ふと、「日本の歴代総理の中で、通訳を使わずに各国首脳と会談できる政治家っていただろうか」、と考えてみる。うーん、率直に言って、映画「スターウォーズ」のヨーダの叡智を持った「宮沢総理」(風貌もそっくり)だけだろう。国連総会演説で英語を使った総理は、細川さんだけ。当時勤務していたニューヨークの国連機関本部の部屋で聞いた英語のスピーチはかなり滑らかだった。(事前に猛練習したらしい。)




 山本一太の英語も(謙遜しているわけではなく)残念ながら、あんまり大したことない。「議論や交渉の出来る最低限のレベル」といったところか。一応、英国BBCラジオのインタビューは今でも月、1,2回のペースでこなしているし、昨年ニューヨークのミレ二ウム国連総会に出席した際には、マンハッタンにあるCNNのスタジオに生出演。「リズ・カーンのQ&A」というアジア方面ではかなりメジャーな番組で(15分ほど)持論を展開したこともある。外務政務次官時代には(最初の仕事だった米国オルブライト国務長官との会談を含め)外交交渉は直接英語でやらせてもらった。だから、「最低限の…」といっても許されると思う。




 自分の英語が「ギリギリのレベル」だと自覚しているので、それより出来ない政治家は「英語を話す」という定義にはあてはまらない、と考えている。自分と同等以上のコミュニケーション能力とさらに優れた国際感覚を兼ね備えた政治家は、と考えてみるとやはり「新世代」が多い。すぐに思い浮かぶのは、塩崎恭久氏、河野太郎氏、武見敬三氏、林芳正氏…うーん、思ったより少ないなあ。「英語が出来る」ことになっている政治家は結構いるんだけど…。(実際、米国議会スタッフとの懇談?みたいな集まりに呼ばれて行ってみると、いつも同じようなメンバーだ。)今回の参議院選挙で当選した舛添要一氏(国際政治学者)とか、小林温(ゆたか)氏(米国シンクタンク研究員)、有村治子氏(大学講師)なんかは「達人」のレベル(まだ聞いたことはないが)に違いない。




 少し上の世代でいくと、大野功統代議士も(これも聞いたことはないが)相当お上手らしい。田中外相(マッキー)は(高校時代留学していただけあって)「自然に口から出てくる」という感じ。「ティーンエージャーの英語みたいだ。」と意地悪なことを言う人も中にはいるが、山本一太より上のレベルであることは確かだろう。大臣になる以前、真紀子さんが外国人特派員クラブで行った講演を聴いた米国人のジャーナリストが「感銘を受けた」と言っていた。無所属の会の椎名素夫参議院員は別格。大統領候補にもなったブラッドレー元上院議員らとの日米議員交流を立ち上げた日本の政界を代表する国際派の一人。広中和歌子氏(参院)も、国際会議などでかなり精力的に活躍されているようだ。加藤紘一氏は英語の他に中国語、そして韓国語(以前、勉強中だとおっしゃっていた)も出来るらしい。英語のコミュニケーション能力は(もちろん、知識や見識でははるかに及ばないが)山本英語のほうがやや上回っていると思う。(加藤先生、ごめんなさい!)




 民主党は、若い議員が多いこともあり(経歴をチェックしてみても)自民党よりずっと「国際派」(英語使い)が多そうだ。その中でも、浅尾慶一郎氏(参院)は「ほぼ完全なバイリンガル」といっていいだろう。(いわゆる帰国子女だし、お父さんは元イタリア大使だし…ほとんど反則。)国際経済、金融、そして外交の知識も抜群だ。公明には若手国際派の上田勇氏(元農水省。米国コーネル大学院留学)がいる。自由党の東祥三氏(元外務政務次官)は、英語でもスペイン語でも仕事の出来る政治家。保守党の小池百合子氏も英語はもちろん、アラビア語まで駆使して外交活動をされているらしい。




 あくまで、自分の知っている政治家の中での話。「外国語を話す国際派」は他にも大勢いるに違いない。そして、「英語(語学)が出来ればいい」というものでもない。要は中身(知識や政策)であって、通訳を立てれば済む話だろう。それでも、「同じ言語で直接コミュニケーション出来る」ことが、外交交渉を円滑に進めるためにも、また、個人的な「友情」「信頼関係」を築く上でも大きなプラスになることは言うまでもない。




 国連開発計画(UNDP)のニューヨーク本部に勤めていた頃の同僚達(NYの国連機関で働く日本人職員)は、仕事で恒常的に使う英語に加え、フランス語やスペイン語、アラビア語といった「国連公用語」を一つか二つマスターしている人が多かった。現在、東京にある某国連機関事務所に勤めているうちの奥さんでさえ、フランス語やスペイン語で仕事をしていることがある。新しい世代の「国際化」は進行しつつある。




 自らのビジョンや日本の立場を自在に英語で語り、通訳抜きで首脳会談をこなす。外国のメディアに飛び込み、その国の国民に直接アピールする。そんな「新世代総理」が誕生するのはそれほど先の話ではないだろう。