宇宙開発の夢ではなく、
人間が作り出した“巨大な嘘”を描いたサスペンス
午前十時の映画祭16
映画「カプリコン・1」
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「もしも、世界中がテレビの前で熱狂したあの歴史的快挙が、すべて巨大なセットで作られた“映像”だったとしたら……?」
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■作品情報
1977年/アメリカ/123分
<監督>
ピーター・ハイアムズ
<音楽>
ジェリー・ゴールドスミス
<出演>
エリオット・グールド、ジェームズ・ブローリン、O・J・シンプソン、テリー・サバラス
■内容~火星着陸は、作られた映像だった
有人火星探査船「カプリコン1号」。
世界中が注目する中、3人の宇宙飛行士が火星へ向かう予定でした。
しかし、打ち上げ直前、宇宙船に重大な欠陥が発覚します。 このままでは乗組員の命が危険。
ところが、その失敗を公表することはできません。


そこで関係者が選んだ方法は…… なんと、巨大なセットを使って、火星着陸に成功したように見せかけることでした。
世界中がテレビで見ている映像は、実は作られたものだったのです。
その秘密を知ってしまった3人の宇宙飛行士は、今度は自分たちの存在そのものを消されようとしていました。

一方、テレビ中継に不自然さを感じた新聞記者コールフィールドは、独自に調査を開始。 国家ぐるみの巨大な嘘を暴こうと動き出します。
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■宇宙映画だと思ったら、全く違う作品だった
午前十時の映画祭で鑑賞。
おそらく以前にも観ている作品だと思うのですが、正直なところ、細かいストーリー展開まではあまり覚えていませんでした。
「宇宙飛行士を巡るサスペンス映画だったかな?」
というくらいの記憶だったのですが、今回、久しぶりにスクリーンで観直してみると……
「ああ、こういう映画だったのか」
と、改めて感じる部分がありました。
タイトルから想像すると、壮大な宇宙開発や火星探査を描いたSF映画だと思ってしまいます。
しかし、実際の内容はまったく別物でした。
これは宇宙の冒険物語ではなく、国家規模の陰謀と、人間が作り出した巨大な嘘を描いたサスペンス映画でした。
■1970年代アメリカの“不信の時代”
この映画が公開された1970年代のアメリカは、政府や巨大組織への不信感が高まっていた時代でした。
ベトナム戦争やウォーターゲート事件などによって、
「権力者の発表をそのまま信じてよいのか」
という空気が社会に広がっていました。

また、アポロ月面着陸について疑問を口にする人がいたのも、この時代の空気の一つでした。
もちろん『カプリコン・1』は、アポロ計画そのものを描いた作品ではありません。
しかし、
「もし国家が威信を守るために、世界中を欺くようなことをしたら?」
という発想は、そうした時代の空気を、この映画もどこか反映しているように感じます。
■最大の見どころは、あの飛行機シーン!
正直に言うと、ストーリー展開や演技については、少し荒削りなB級サスペンスらしい雰囲気も感じました。
「国家規模の陰謀」という壮大なテーマを扱っているだけに、もう少し人物の葛藤や社会への問いかけを深く描いてもよかったのでは……と思う部分もあります。

しかし、この作品には一度観たら忘れられない、強烈な見せ場があります。
それが、砂漠で繰り広げられる複葉機とヘリコプターの空中戦です。
真実を追う新聞記者コールフィールドは、宇宙飛行士たちを救うため、砂漠の牧場主に協力を求めます。 彼らが乗り込むのは、なんと農薬散布に使われていた古い複葉機。
操縦するのは、一見すると普通の年配の牧場主。
「本当に大丈夫なのか?」
と思ってしまうのですが……
いざ空へ飛び立つと、
その操縦技術はすごいのなんのって、すごいんです(笑)。

ちなみに、この飛行機はステアマン(Stearman)という機体。 もともとは第二次世界大戦期にパイロット訓練用の練習機として使われ、その後、農薬散布機として活躍した飛行機です。
そんな時代を感じさせる古い複葉機が、最新鋭の軍用ヘリコプターを相手に砂漠の空を舞う姿には、思わず手に汗握ります。
急旋回やきりもみのようなアクロバティックな飛行を次々と見せる複葉機。
「そんなアクロバティックな操縦、農薬散布には必要ないでしょう!」
と思わずツッコミを入れたくなるほど(笑)。
しかも驚くのは、操縦士だけではありません。クライマックスでは、宇宙飛行士が飛行機の翼にしがみつくという、今ではなかなか見られない命懸けの実写アクションまで飛び出します。CGではないからこそ伝わるスリルと緊張感には、思わず息をのみました。
最新の技術を持つ巨大な組織に対して、古い機体と一人のベテラン操縦士が立ち向かう。 まさに、この映画のテーマを象徴しているような名シーンです。

宇宙開発を題材にした作品でありながら、私の印象に最も残ったのは宇宙ではなく、この砂漠で繰り広げられた地上と空の逃走劇でした。
■ほくと的まとめ
期待しすぎなければ楽しめる一本
決して完璧な作品ではありません。
「国家的陰謀」という大きなテーマを考えると、もう少し重厚なドラマにできたのでは……という思いもあります。
ただ、1970年代という時代背景を感じながら観ると、単なるSF映画ではなく、
「人は何を信じるのか」
を問いかける作品でもあります。
細かい部分を気にしすぎず、当時のハリウッドが作ったスケールの大きなサスペンスとして観れば、十分楽しめる一本だと思います。
宇宙開発の夢を描いた映画ではなく、人間が作り出した“巨大な嘘”の恐怖を描いた作品。
それが『カプリコン・1』でした。
評価:5点満点中3.6
(画像すべてお借りしました)






