映画「少女ムシェット」 | ほくとの気ままなブログ

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孤独で、惨めで、

あまりに哀れな少女の受難劇
多くの映画監督たちを魅了した、ブレッソンの問題作にして伝説の一作

 

 

映画「少女ムシェット」

 

 

 

1967年 フランス 78分

 

<監督>

ロベール・ブレソン

<原作>

ジョルジュ・ベルナノス

<キャスト>

ナデーヌ・ノルテイエ、

マリア・カルディナール、

ジャン=クロード・ギルベール

 

<内容>

ロベール・ブレッソンが傑作『バルタザールどこへ行く』の直後に手がけた本作は、またも一人の少女の悲運な運命をまざまざと描きだす。原作はカトリックの作家ジョルジュ・ベルナノスの小説。

ブレッソンは、これ以上ない厳格なフレーミングと、俳優たちの演技を最小限に抑制することにより、原作にあった冷酷さを忠実に映像化。

常に孤独な魂を映し続けてきたブレッソン映画のなかでもとりわけ苛烈な問題作が誕生した。

強情で忍耐強い少女ムシェットを演じたのは、この映画のために抜擢されたナディーヌ・ノルティエ。

彼女の悲惨さが極まるそのラストシーンは、ベルイマン、タルコフスキー、ジャームッシュら多くの映画監督をも魅了し、映画史に残る名場面として今も語り継がれる。

 

(物語)

重病に苦しむ母と、酒に溺れ暴力を振るう父。自分が面倒を見るしかない赤ん坊を抱え、14歳のムシェットは、貧しい生活のなか、ひたすら孤独な日々を過ごしていた。

 

家でも学校でも居場所のないムシェットは、森の中に逃げ込むが、突然の嵐で道に迷ってしまう。やがて森をうろつく密猟者のアルセーヌと遭遇したムシェットは、その夜、彼に強姦される。翌朝帰宅した少女は、母親の死去という悲劇に見舞われる。いつものように牛乳をもらいに出かけたムシェットは、ただ一人、村はずれの池に向かう…。

(公式サイトより抜粋)

 

 

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公式サイトの解説、キャッチを読めば、鑑賞欲がふつふつと湧いてくること間違いなしです。

2月14日ジャック&ベティにて鑑賞。

先日記事アップした「バルタザールどこへ行く」と同じ日に鑑賞しようかと思いましたが、翌日の鑑賞。

 

ラストのシーンがネタバレにならないように、もう少し内容をお伝えしましょう。

 

少女の人生を暗示させる冒頭シーン

 

冒頭からムシェットに降りかかる不幸を暗示するようなシーンが展開されます。

やはりここでも、映画「異端の鳥」を思い出さしてしまいました。

彼女が通学する森。

そこに二人の男の姿が、一人は鳥や動物を密漁する者(アルセーヌ)。そしてもう一人はそれを監視する男(マシュウー)、弾丸に息絶える鳥や罠にかかった小動物。

中には、瀕死の思いで逃げおおせる姿が映し出されます。

 

それらの様子を彼女は藪のなかからじっと見つめています。

このシーンは、彼女の置かれている状況そしてこれから起こりうるドラマの伏線になっている、印象的な場面でもありました。

 

 

ムシェットは学校へは通っているのですが、貧しい身なり。

特徴的だったのは、ブカブカの木靴を履きパカパカ音を立てながら通学しています。

同級生や先生からも、軽蔑の眼差しで観られている日々。

 

 

合唱の時間に声が出ないでいる彼女を、ピアノの前にひっぱってきて頭を鍵盤に抑え何度も歌わせようとする女教師。

その様子を見て冷笑している同級生。

そのようなことが原因なのか、学校が終わると通学路のドテに隠れて、同級生めがけて泥を投げつけるムシェット。

彼女はけっしておとなしい少女ではなく、自分なりの復讐を行っていたのです。

 

スクリーンに映し出される彼女の大きな瞳は、とてつもなく虚無感が漂っています。

演技なのでしょうが、この作品全編を通じて見せるその表情には圧倒されます。

 

一瞬の微笑みを見せる瞬間

 

そしてそんな彼女が、一度だけ微笑みをみせる場面があります。

何かの祝日なのでしょうか、酒場の前に遊園地のようなものが作られます。

 

 

大人も子供も楽しんでいるゴーカート。

その様子を見ているムシェットに、ゴーカートに乗れるコインを渡されます(なんで渡されたのかはわからないのですけれど)。

日々の辛い生活では、笑顔の一つもでない。

所狭しとゴーカートがぶつかり合う。

 

 

その中で故意的でしょうか、わざとムシェットの車にぶつけてくる少年。

その相手にムシェットも興味をしめしたようで、車をぶつけ微笑みあう。

そんなやりとりの中で見せた、少女ムシェットの笑顔。

 

ほんのひととき一人の少女として楽しむ機会を得たのでしょうか、この作品の中でムシェットが一度だけ見せた笑顔でした。

彼女のほんのひとときの、青春の時間であったのだろうか、この作品の中でも代表するシーンでした。

 

ゴーカートを降りたあと、男の子の後を追うように射的場で遊ぼうとする。

そこへ父親が立ちふさがり、彼女に平手をくらわすのです。

幸せなひと時が一瞬にして、断ち切られてしまいます。

 

場面は冒頭で出てきた、密猟者と森の番人この二人が酒場の女を巡って争う。

二人は恋敵でもあったのです。

ある時ムシェットが森の奥深くに入って道に迷ってしまいます。

雨も降ってきてずぶ濡れになる。恋敵同士ひと悶着あったあと、密猟者アルセーヌが森の中にある隠れ家に帰ろうとする途中、ずぶ濡れのムシェットを見つけて、小屋につれていく。

火を焚いて服を乾かすように彼女に話す。

 

 

しかし彼女は警戒する、その時、森の奥から銃声がした。

様子を見に行くと出ていき、時が経過して戻ってきたあるアルセーヌ。彼は森の番人マシューを殺してしまったかもしれないと彼女に伝え、アリバイ工作のために無人の酒場に彼女を連れていく。

そこで酒をガブ飲みしていると、テンカンで倒れてしまう。

それを彼女が介抱する。

 

この場面で学校で歌えなかった歌を、ムシェットは歌いながらアルセーヌを介抱するのです。

印象的なシーンでした。

 

 

そんな彼女に対して発作が治まったあと、彼はムシェットの肉体を奪ってしまう。

ただこのシーンは難解なのです。

酩酊しているアルセーヌがムシェットを押し倒してのようにも見えるのですが、ムシェットの手が上になっているアルセーヌの背中を抱きしめるように手を回すのです。

被害者なのか否、曖昧なシーンでもありました。

 

不幸の連鎖

 

一夜明けて家に戻った彼女に、さらなる不幸が訪れます。

 

ムシェットはけっしておとなしい少女ではなく、学校でも近所つきあいでも自分の気に入らないことに対しては拒絶反抗する。

ただ、病床に伏せている母のいうことには忙しい中疲れている身でも従っていた。

その母親が、彼女に対して「自分のように男に騙されるんじゃないよ」と伝え、横たわりながらムシェットに酒をとってくるように命じます。

その酒を飲み、「うんざりよ」との言葉を残し翌朝に亡くなってしまいます。

母親は自殺を計ったのでした。

 

 

心の叫び

 

不幸のどん底のムシェット、赤ん坊に飲ませるミルクを買いに出かけます。

近くの雑貨店の前を通ったときに女店主から、店でパンとコーヒーをご馳走になります。

もうこの時点でヌシェットの母親の事は、町中に知れ渡っていたと思われます。

 

 

ムシェットの胸のところにできた傷をみて、女店主は問い詰めます。

彼女は必死で隠そうとするのですが、コーヒーカップを落としてしまう。

女主人は態度を一変して叱りつけます。

 

 

 

ムシェットはその言葉に

「私はアルセーヌの愛人よ」

と吐き捨て、パンを放り投げて店を出てしまいました。

これまた印象深いシーンでしたね。

 

そのあと気になっていた門番のマシュウーの家に寄りますが、そこで死んでいたと思っていたマシューが奥さんと一緒に出迎えます。

ここでアルセーヌの話したことが真実だったのか、彼のただの妄想だったのかムシェットも混乱していきます。

話はとくに詳しい解説などなく、進んでいきます。

 

 

偶然か、必然なのか

 

その後親切な近所の老婆から、葬式の時には神様の前だから奇麗な服を着ていくのよと、レース編みのようなドレスを恵んでもらいます。

 

 

しかしムシェットは老婆の話を聴きながら、その家のカーペットに汚い木靴の汚れをこすりつけています。

 

 

 

そしてそのドレスをもって、驚愕のラストシーンへと話は進んでいきます。

 

 

 

フランスの片田舎、極貧の中で生活する14歳の少女の救いようもない不条理の物語。

 

細かい説明などは語らないで場面は進みます。

先日のバルタザールどこへ行くでも書きましたが、仕掛け満載この監督の独特の物語の進め方、そのシーン展開は今作でももちろん健在でした。

 

前述したように印象的なシーンがいくつかでてきます。

先日記事アップした、ロバのバルタザールが少女ムシェットに入れ替わったような内容でしたね。

 

大人たちの無神経な行動、そのひとつひとつが少女を追い込んでいく無慈悲な世界。

 

俳優としてほとんど素人を使っているから、どことなく演技として何か違和感を最初は感じるのですが、それがこの監督の特徴でしょう。

そしてストーリー展開も、話の内容を極力削ぎ落しているので各自の想像に任せるところもあって、エピソードの独特のつなぎが話の展開をわかりにくく、歯車がかみ合っていないような違和感をこれまた最初は感じます。

ただ、話が進むにつれそんな事は気にならなくなるほど、作品にグイグイ引き込んでいく得体のしれないオーラーがこの作品にはあります。

 

 

そしてラストシーンは、公式サイトにもあるように映画史に語り継がれるというのも納得。

本当に唖然としてしまったラストシーンでした。

 

どの様なラストシーンかは伏せておきますが、それが何であったのか?

またその行動が結果が意味するものは偶然なのか、はたまた必然的な運命の連鎖の一部であったのか?

観る人それぞれによって違うかもしれません。

 

 

この作品、初鑑賞なのですが、あのラストシーンは、どこか記憶の彼方にあったのではないかと錯覚したほどでした。

とっても印象に残るラストシーンでした。

 

淡々とした中にも力強いストーリー展開、そして誰もに勧められる作品ではありませんが、ほくとの気ままなブログ、今年のグランプリ候補になりそうな予感です。

 

5点満点中4.2