ウンスはひきつった笑顔で
元国より戻った一行を出迎えた
もちろん愛しい弟との
久しぶりの再会はうれしい
が それ以上に
ウダルチ隊長の佇まいに
異変を感じて
心がざわついていたのだ
いつもの彼の姿ではないわ・・・
もしかして病気?
それとも怪我?
近くで確かめてみなくちゃ
わからないけど
顔色が悪い上に
うまく誤魔化してはいるが
少々ふらついているようにも
思えた
道中 何があったのだろう?
姉上
お出迎えありがとうございます
息災にお過ごしでしたか?
カンヌン大君は輿を降り
満面の笑顔でウンスに近づくと
ゆっくりと尋ねた
ええ まぁ
とりあえず元気よ
姉上・・・?
少し会わぬうちに
口調が少々お変わりに
なられましたなぁ?
カンヌン大君は
訝しげに姉を見つめた
ああ ええ
まあ・・・
色々あったのよ
ウンスは口ごもる
さてどこから話すべきか
私のことはいいのよ
それより まずは
無事の帰還おめでとう!
すぐに即位式を
執り行いましょう
王様不在だと何かと
よろしくないわ
あぁ でもその前に
お嫁さんを紹介してくださる?
元の魏王の御息女だって
聞いているけど?
カンヌン大君の後ろに控える
慎ましやかな女人に
視線を移した
穏やかな表情で微笑む女人は
元の装束に身を包んでいた
黒髪がとても美しく
つぶらな瞳の美少女だ
姉様・・・
ふつつか者ではございますが
何卒よろしくお願いいたします
公主様
頭を上げてくださいな
いえ これからは王妃様と
お呼びしなくちゃね
こちらこそ弟を
王様のことを
どうぞよろしくお願いします
臣下の出迎えが少なくて
驚いたでしょう?
みんな
側妃のファスインのところの
宴に出ているの
正直に言うわ
これが今
我が王家が置かれている
現状なの
キ・チョルの勢力が強くて
困った状態なのよ
けれど私はあなた達に
期待しているの
きっとこの国をいい方向に
導いてくれるって思っている
王様 王妃様
この国をどうぞよろしく
お願いします
ウンスは捲し立てるように
話した
もちろん新王の即位式も
気になる だが
それ以上にチェ・ヨンの様子が
気になって仕方ないのだ
旅の疲れもあると思うけど
アン・ドチ内官が
すべての用意をしてくれているわ
このまま宣仁殿(ソンインジョン)で
元の皇帝の宣旨を読み上げて
もらいましょう
ギが新王としてこの国に戻って来たと
広く民に知らしめるのよ
わかりました
姉上の仰せのままに・・・
なれどこの元の装束のまま
王の宣誓はできませぬ
支度がございますゆえ
しばしご猶予を・・・
わかったわ
支度はチェ尚宮に頼みましょう
信頼のおける配下に
公主様のお支度も任せるといいわ
二人はチェ尚宮が率いる
ムガクシに守られて
一行は王様の居所である
康安殿に向かう
その最後尾を歩くウダルチ隊長に
ウンスは声をかけた
聞きたいことがあるの
隊長は残ってくださる?
は?
何用です?
某は王様直属の親衛隊
王様のおそばを離れるわけには
参りませぬ
チェ尚宮もいるし
ウダルチの他の隊員もいる
少しぐらいあなたが抜けても
大丈夫だわ
それより気になることがあるの
副隊長のチュンソクに目配せし
他のウダルチを先にやってから
ウンスはおもむろに
隊長のおでこに手を当てた
何をする!
いくら王族とはいえ
いえ 王族だからこそ
むやみに男の体に
触れてはなりませぬ
そのような分別のないお方では
なかったはずが・・・
咄嗟のことに声をあげ
男は顔をしかめ後退り
やっぱり!
熱があるじゃない
他の人のことは誤魔化せても
私の目は誤魔化せないわよ
あなた 具合が悪いでしょう
それもかなり・・・
嘘をついても無駄よ
私は医者なの
それもかなり優秀な
は?公主様は
妄想癖がございましたか
いつから医者になられたのか
お戯れも大概に・・・
いいえ
今 詳しいことを話している
場合じゃないけど
あなた達が元にいる間に
神の信託を受けたの
私は華陀の生まれ変わりだって
ご冗談がすぎますぞ
華陀の生まれ変わりだという
信託を受けたと言うのは
思いつきの出まかせだが
前世の記憶が蘇ったと
話をする方が信じてもらえないと
ウンスは考えたのだ
この国は神仏に対する信仰が
とても厚い
また華陀が優れた医者で
今なお崇拝しているものが
数多くいるのも事実だ
チェ・ヨン
あなた 脇腹に
怪我をしているわね
無意識に庇っているもの
私に診せてちょうだい
は?
ご心配には及びませぬ
あなた様は相変わらず
困ったお方だ
ウンスは男の話に
耳を貸さずに言った
チャン・ビン先生
典医寺の診療室を貸してください
一刻を争う事態なんです
チャン・ビンは驚いていた
公主様以外
誰もチェ・ヨンの不調に
気がついたものはいない
それほど完璧に隠していたはず
なのにその病状に気がつくとは!
その上自分を
華陀の生まれ変わりの
神医だというのだ
信託を受けたと言うのは
本当なのだろうか・・・
わかりました
私も隊長の症状が
気になっておりました
公主様にもご確認いただけるなら
幸いでございます
何があったの?
鉛と思われる銀の玉が
隊長の体にあたったのです
なんてこと!
それでその弾は?
取り出せたの?
いえ・・・まだそのまま
隊長の体内に・・・
止血は致しましたが・・・
まずいわね
とにかく急ぎましょう
なりませぬ
公主様
これから大事な即位式が
ございます
某はウダルチ隊長として
参列せねばなりませぬ
病人は黙っていて
命よりも大事なものなんて
この世にあるわけないでしょう
先生
このわからず屋を診療室に
連行してください
まずは傷を確認しないと
ウンスは前を歩く若い男に
声をかけた
そこの二人
あなた達の隊長を運ぶの
手伝ってくれる?
若い男達は驚いた顔で
振り返った
一人は隊長の唯一の私兵テマン
もう一人はトクマンだ
はっ
公主様
二人は抵抗する隊長を
挟んで抱え歩き出した
診療室について開口一番
ウンスは言った
ほら
やっぱり
これは敗血症になっているわね
この状態で立って歩いて
しかも平静を装うなんて
どんだけ我慢強いのよ
いくらチャン先生の痛み止めが
効いているとはいえ
信じられないわ
耳元で声が響いて
うるさくて敵わん・・・
男はため息をつき
面倒臭そうに答えた
診察台の上
天井を見つめる
どうしてこのような事態に?
公主様の御前で服を脱がされ
腹を見せ
その細い指先が肌に触れる
このようなこと
あっていいわけがない・・・
弾を取り出して
傷の炎症を最小限に
抑えなくちゃ
チャン先生
手伝ってもらえる?
それと・・・
麻酔薬ってあったかしら?
それとメス・・・はないから
小刀
細くて鋭利な刃のやつがいいわ
ます・・・い?
チャン・ビンは一瞬
なんのことかわからない
と言った表情を見せたが
すぐに
麻沸散のことだと理解した
それから小刀を用意し
大量の湯を沸かし
殺菌効果のある薬草と止血の
薬草を準備
医官の白い制服をウンスに渡し
部屋に気分を和らげる香を焚き
頼まれた以上の働きで
準備万端 整えた
では手術(ススル)を始めるわ
ススル?とは?
ええ 外科手術をしないと
手遅れになる
お腹を切って弾を取り出すの
その話を聞いていたテマンは
ウンスに飛びかかろうとしたが
すんでのところでトクマンに
取り押さえられた
王族に手を出せば死罪は免れない
だ だ だけどっ
はら 切るって
そんなのダメだ
テジャンが死んじゃう
大丈夫よ
心配ないわ
設備も薬も何もないけど
チャン先生は優秀だし
私もついているし・・・
衛生上の問題があるから
あなた達はこの部屋を出て行って
それからチェ尚宮と副隊長に
この状況を
そっと知らせてきてくれる?
私が即位式に間に合わなくても
滞りなく進めるようにって・・・
はっ
トクマンは診療室を飛び出して行く
いまだに不安と不満と恐怖が
入り混じっているテマンは
ウンス公主を睨み続けていたが
結局 手術の邪魔だと言うことで
チャン・ビンに追い出されてしまった
チェ・ヨン・・・?
私を信じて 私にあなたの体
預けてくれない?
大丈夫よ きっとあなたのこと
守ってみせるから・・・
お守りするのは・・・
それ・・・がし・・・の
役目・・・ですが
公主様を・・・信じ・・・
そこまで言うと麻酔が効いたのか
男は目を閉じた
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
ゆるゆる更新に
お付き合いいただき
ありがとうございます
気がつくと7月も半ば
やばい!
もう少しペースを上げたい
と思っておりますが
なんだかんだと遅れがちで
みあねよ〜
8月の終わりまでには
(ゴンの誕生日までには)
本編を再開したいと思っているので
この転生話はキリのいいところで
ひとまず休憩し
本編を挟んでまた続きを〜
と言うことになりそうな予感です
どうぞよろしくお願いいたします
梅雨明けのところもちらほら
蒸し暑かったり大雨だったり
食中毒や
体調不良になりやすい時期です
ご自愛くださいませ
安寧にお過ごしくださいね