卒業試験も無事に終わり
学生たちは全員医官の免状を
手にすることができた
それはウンスにとっても
養成所を立ち上げてから
脈々と続く女医たちの絆を
感じられる嬉しい出来事だった
今年の学生たちも
優秀だったそうだな
イムジャの指導の賜物だ
家族で囲む夕餉の席で
ウンスを労うように
夫のチェヨンが言った
ウンスはうふふと微笑み
夫を愛しそうに見つめる
ねえ オンマ
オルはどうだった?
タンは顔見知りの進路が
気になるようで母親に聞いた
ええ バッチリ合格よ
彼女は菊花診療所の分院に
就職が決まっているわ
たまにはうちにも
手伝いに来てくれるかもね
おおっ
それはいいね
タンは満足げに頷いた
ゴンもオルのことを
なんとなく覚えているようで
にぃにと一緒になって
嬉しそうに手を叩いている
ねえ にぃに
サンもお医者様になれるかな
え?
サンは医官になりたいの?
唐突な質問に
タンは少し驚いた顔で
弟を見つめた
サンは筋金入りの勉強嫌い
書物を広げたら逃げ出して
読み書きよりも木登りや
剣術ごっこが大好きなサンが
難しい勉強をいっぱいしなくては
なれない医官を希望するとは
思っていなかったのだ
お医者様って
かっこいいもん
かっこいだけじゃないのよ
大変な仕事だよ
オンマ見ていたら
わかるでしょう?
スニョンが心配そうに
サンを諭す
だがサンはへっちゃらな顔で
ふふんと鼻を鳴らし言い返した
サンはね
やるときはやる子なの
ユハ先生が言ってたもん
いつ勉強をやる気になるのか
それが問題だねぇ
タンはククっと笑って
サンに言った
でも志を持つことは
いいことよ
サン 頑張りなさい
母親に言われてサンは
照れた顔でこくんと頷く
その横でユニョンが
やれやれと首を振った
そういえば
アン・ジェの親戚の娘も
おったな?
試験はいかがであった?
アン・ズね
ええ 典医寺を希望して
いたんだけど・・・
実はアン・ズは
恵民局に決まったの
でもね不屈の精神の彼女なら
いずれ王宮に戻ってくると思う
それに早いうちに恵民局を
体験するもの悪くないわよ
いろんな症例を勉強できるから
恵民局は典医寺と違って
市井の民の診療が主な仕事
朝から晩までひっきりなしに
患者が訪れる過酷な職場で
役人に賄賂を渡せば
診察の便宜を図るような
不正の温床もあったのだが
チェヨンやウンスが
改革に乗り出したおかげで
不正は取り締まられ
労働環境もだいぶ改善され
今では医官にとっても
働きやすい場所となっている
先輩医官の
テヤンもいるし
アン・ズならきっと大丈夫よ
患者に寄り添える
いいお医者様になると思うわ
ウンスは答える
それは本心だった
希望通りの進路の者もいれば
時には思いとは違った道へ
進む場合もある
けれどもそこで腐ったり
諦めたりせずに
地道に頑張るものには
次の扉が用意されているはず
ウンスはアン・ズに期待を
寄せている
そしてもちろん他の学生たちにも
大いに
羽ばたいてほしいと願っていた
いよいよ学生たちが
寮を後にする日の朝が
やって来た
皆で食する最後の朝餉
そう思うと寂しくもある
二年なんてあっという間ね
入学したのがつい昨日の
ことみたいだもの
ホ・トマはしみじみと
呟いた
ホ・トマは首席で卒業を決め
典医寺の配属が決まっている
本当よねぇ
私はね
またホ・トマと一緒に
学べることが嬉しいの
典医寺でもよろしくね
お互い頑張りましょう!
同じく典医寺所属になったのは
元ムガクシだったイ・ジウだ
あたしはね
入学したことも嬉しかったけど
こうして医官になれたことは
もっと嬉しいわ
これからうんと頑張ろうって
気になるもんね
でも 荷造りはもうひと頑張り
しなくっちゃなぁ
引越し先の部屋が狭いから
あまり荷物を持っていけないの
オルは小さくため息をついた
ここに来た時には
わずかな荷物しか
持っていなかったはずが
二年の月日で大きな箱にも
収まりきらない量に増えていた
オルの新居は
菊花診療所分院に近い
こじんまりした屋敷で
分院の職員たちが
寮として使っている場所だった
オルが羨ましいわ
だってまた寮生活でしょう?
先輩たちもいるし
楽しそうなんだもの
あたしは実家に戻るから
なんだかつまらないわ
それにうちは都の中心部から
ちょっと離れているしねぇ
ここの暮らしも楽しくて
よかったなぁ
そう言ったのはサクラだ
両親の念願でもある
地域に役立つ薬房を
実家の敷地に建ててもらって
すぐに開業できる段取りも
ついている
それは入学の時からの
両親との約束で
サクラも希望していたこと
なのだが
典医寺や分院の話を聞くと
そこに勤める人が
少しばかり羨ましくも思えたのだ
サクラは都に住むんだから
みんなにも会えるじゃない?
あたしは故郷に帰ったら
滅多にみんなには会えないわ
国境の近くなんて
遠すぎるもの・・・
でもみんなのこと思い出して
故郷で頑張るつもり
サノももう一年
都で修行できたらよかったのに
寂しくなるわね
ユチェはしみじみ言った
卒業後はバラバラになるのは
仕方ないとわかっていても
寝食を共にした仲間と
離れ離れになるのは
寂しいものだ
ユチェはオルと一緒ね
おめでとう!ユチェ!
サノは微笑んで
友の進路を祝った
ユチェもまた
菊花診療所分院勤めが
決まっていたのだ
みんな医官になれて
本当によかったと思うわ
卒業式の医仙様のお言葉を胸に
これからも頑張らないとね
ユチェはウンスの祝辞を
思い出しながら遠くを見つめた
『先輩たちが築いて来た
医官の道を
あなたたちもこれから
歩くことになるでしょう
世の中はまだまだ女人に厳しく
医官として仕事をする中で
この先 嫌な思いをすることも
あるかもしれません
それはこの時代も天界も
たとえいつの時代も同じで
世の中から不条理なことは
なかなかなくならないと思う
けれども そこで自分の思いを
諦めるのではなく
しなやかに 時には受け流し
時には時代に争って
何より自分の心を守りながら
前に進んで欲しいと願っています
皆さん 卒業おめでとう!
これからは同じ医者として
お互いに頑張りましょうね』
ええ・・・
卒業式の医仙様の言葉
胸に沁みたわ・・・
あの方こそ
心がしなやかな方よね
なんでも包み込むような
優しさと強さと暖かさがあって
やっぱり憧れちゃう
私は最初の希望とは違う
恵民局に配属になったけど
天命だと思って頑張るわ
私を必要としてくれる
多くの民がいるんだもの
ええ ええ
そうですとも!
アン・ズさんの意気込みを
聞くことができて
寮母として嬉しく思いますわ
さあ 冷めないうちに
朝餉を食してくださいね
しっかり食べて力をつけて!
今日は荷出しやお掃除で
忙しくなりますもの
寮母ホン・ソアは卒業生
一人一人を見回した
皆
晴れやかな顔をしている
この国の医療の未来は
とても明るいと予感させるような
いい表情をしていた
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『今日よりも明日もっと』
新しい明日に向かって
幸せが訪れますように
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四期生の皆様が
養成所をご卒業されました
お話の中ではありますが
もう二年たったのですねぇ
お話の中で
一期生から四期生まで募集して
29名の卒業生
それ以降はお話に描ききれない
と思って新規の募集をやめました
だから
虹の学生たちの話は
これが最後かなぁとも思います
が
これからも卒業生の皆様方には
時々 お話に登場したりして
花を添えていただけたら
嬉しく思います〜
四期生の皆様
(ご協力いただいた方々のお名前)
サクラ(hiro様) 実家で薬房開業
イ・ジウ(マコ様) 典医寺見習い医官
ホ・トマ(hotkumama様)典医寺見習い医官
ユチェ(菜の花様) 菊花診療所分院勤務
オル(kaoruko96様) 菊花診療所分院勤務
アン・ズ(きくちゃん様)恵民局勤務
サノ (オリキャラ) 故郷に帰る
お話に
ご参加ありがとうございました
感謝を込めて haru
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なんだかきな臭い戦の日々
この国も対岸の火事とは
言ってもいられない
そんな社会情勢ですが
どうぞ皆様 週明けも
安寧にお過ごしくださいませ