追い返せばいいものを
イムジャも物好きだな
だいたいこいつは
村人ではないぞ
やれやれといった表情で
チェヨンはぶつくさ言った
ウンスがインギュを
屋敷で催す村の宴に誘ったのが
どうやら気に入らないらしい
人手は多い方が助かるし
それにインギュさんには
この村のことを
もっと知って欲しいもの
チュンソクさんに
トクマンさん トルベさん
チュソクさんだって
いつのまにか
村の人とは顔見知りじゃない?
ウダルチのみんななら良くて
インギュさんはダメって話は
ないでしょう?
酒を酌み交わす宴の席に
ウダルチの面々が参加することは
確かに過去にはあった・・・が
それとこれとは話が違うと
チェヨンはまだぶぅたれ顔
だがそこは年上女房
そんな分からず屋には
もう褒美はなしね
と一喝
渋々チェヨンが折れた
みんな
気さくでいい人ばかりよ
インギュさんイケメンだから
奥さんたちに人気だと思うな
いけ?めん?とは??
天界の言葉にインギュは
目をパチクリ
そんな戸惑いなど
気にもせず
ウンスはヘジャを呼んだ
みんなを集めてちょうだい
今夜 パーティするから
はい 承知
ヘジャにお任せを!
今日はお天気もいいし
宴日和ですね 奥方様
カヤさんにつなぎをつけて
村の女衆にも
下ごしらえやら なんやら
手伝ってもらいましょう
酒は都から持ってきたものが
たくさんあるし・・・
足りないものは各自持参で
さあ
忙しくなりそうですねぇ
心なしかヘジャも
浮き足立った様子で
早速準備に取り掛かる
じゃあ インギュさんは
子供達と食器を磨いて
もらえるかしら?
この村では
働かざる者食うべからず
せっせと手を動かしてね
タン
このお兄さんに磨き方を
教えてあげて
あぁ〜い
タンにおまかしぇ〜
使用人兼用心棒の
ソクテが運んで来た
真鍮の食器や
匙や箸の山に
タンは手を伸ばした
インギュのおじちゃん
この布でこうして
キュッキュってふくんだよ
おかおが映るくらい
きれいにね〜
はい どうぞ
タンは布と匙をインギュに
手渡した
ここではできる人が
できることをやる
そう言う約束なの
だからこの村じゃ
大人しく待っている
だけじゃあ
いつまでたっても
ご馳走に有り付けないわよ
ウンスは匙を磨くインギュを
面白そうに眺めながら言った
インギュも最初のうちは
オロオロしていたが
タンにやり方を教えてもらうと
あっという間に食器磨きの
達人へと変貌していく
ヘジャに呼び出され
ぞろぞろやって来た女衆も
勝手知ったるなんとやらで
誰に命令されるわけでも
ないと言うのに
野菜を切るもの
肉を裁くもの
魚を炙るもの
と 役割を決めて
料理の下ごしらえを開始
口を動かしながら
手も休まず動かして
アレヨアレヨと仕上げていく
奥方様
ぱーちいでソンムル争奪戦が
あるって本当ですかい?
あら 早耳ね
ええ 都でいろんなものを
仕入れて来たから
今夜は大盤振る舞いよ
くじ引きがいいかしら?
それとも?
そりゃあ 酒の飲み比べ
一番の酒豪には
一番上等な酒がもらえる
ってのはどうです?
亭主たちみんな
張り切ると思うなぁ
この世は実力主義ですよ
うふふ
いいアイデアね
うちの亭主も負けちゃあ
いないわよ
あああ そうでした
旦那様がいましたねぇ
浴びるだけ飲んでも
全然酔っ払わないんだから
けどさ
奥方様には
酔っているじゃないかい
旦那様と来たらさ
今回も二晩
こもりっきりだって
言うじゃあないか
お盛んなことで
この村も安泰だねぇ
違いない!
もうやめてよ
その話は
照れるじゃないの!
ウンスは赤くなった
あはははは
奥方様が照れてるよ
みんな〜
陽気で朗らかな女衆の
笑い声が天に響く
楽しそうだね
この村は・・・
インギュはタンに言った
たのしいよ〜
ね サン?
あいっ!
それにみんなしりあい
なんだよ〜
アッパのチング
タンは誇らしそうだった
そういえばこの村は
かつてチェヨンが
少年時代を過ごした
赤月隊の残党や血縁者が
いつかまたチェヨンが
新生赤月隊を
編成できるようにと
密かに準備した村だと
インギュも
聞いたことがあった
だから安心して医仙様を
お連れできたんだな
いせん??って
オンマのこと?
都ではみんなそういうけど
オンマはオンマだよ
タンたちのオンマで
アッパのおくがたしゃまって
よばれている
そうか
そうだね
いい村だね ここは
うん タンここ大好き
ほんとうは海もおしえて
あげたいけど
今日は荒れているから
ダメだって〜アッパが・・・
晴れた日にまたきてね
はい
ぜひまた寄らせて
いただきます
インギュが食器拭きの
仕事をしている間に
男衆も続々集まり
勝手に宴の会場作りをし
勝手に酒樽を運び出し
勝手に飲み始めた
あんたたち
パーーチイは
まだだってのに
もう飲んでいるのかい!
呆れたもんだわ
前の村長の姪っ子カヤが
亭主のシンスの耳を
引っ張りながら
小言を言い始め
チソンやウィソンも巻き込んで
部屋の中はすでに大騒ぎ
テマンはそんな大人たちを
苦笑しながら見回している
あまりにあけすけで
驚いたでしょう?
この村は
みんなの拠り所でもあるの
みんな言いたいことを
言い合って
不平や不満は溜め込まない
助け合って暮らしているわ
私もこの村が大好きよ
王宮を出奔して
不安もあったけど
あの人について来てよかった
ここから私たちの
新しい世界が広がったんだもの
ここからが始まりだったのよ
ヨンは念願の漁師になって
私はこの村で医者をして
子供にも恵まれたし
だから インギュさん
ヨンは王宮へ戻ることは
もうないと思う・・・
ごめんなさいね
でもね 彼は信義に厚い男だから
王様や民のためなら
いつでも駆けつける用意はあるわ
わかりました
残念ですが
もう無理は申しません
あの方があの方らしく
生きられる場所で
輝いているのは
王様も嬉しいはずですし
あ?
インギュ
我が女房殿と
なんの密談だ?
ウンスは俺の女だ
ウンスと二人きりで
話すなど許さんぞ
二人の会話に
割り込んで来たのは
やはりチェヨンだった
はいはい
ヨンったら
相変わらず悋気大魔王
なんだからぁ
ウンスはくすくす笑って
チェヨンの腕の中に
飛び込んだ
でも まあ
仕方ないわね
惚れた弱み
嫉妬深いヨンも大好きよ
らぶ〜らぶ〜ね〜
スニョンが嬉しそうに
笑って言った
うん らぶらぶだね
アッパとオンマぁ
タンもニコニコ笑っている
サンも〜
らぶらぶがいい〜
よし みんなまとめて
ここへ来い!
チェヨンはウンスと
子供達を腕の中で抱きしめた
とてもとても大事な宝物
二度と手放すことはない
その時
村の入り口に仕掛けてある
拍子木がカチカチ鳴った
王宮から急ぎの知らせ
トクマンさんの馬のようですよ
都近くで倭寇が出た模様
隊長!
音の使い手イェジュンが
トクマンのつぶやきを拾って
チェヨンに伝えた
チェヨンの顔色が
きりりと引き締まる
イムジャ!
出かける支度を
あとのことは頼むぞ
わかったわ
村のことは任せて
ヨン 気をつけて
怪我しないで帰って来てね
ああ わかっている
イムジャ 帰って来たら
また褒美を頼むぞ
ウンスは笑って頷いた
チェヨンはウンスの唇に
軽く口づけてから
ぬっと立ち上がって
声をあげた
インテ チソン ウィソン
イェジュン シンス
そして テマン!
我ら新生赤月隊はこれより
民のために
倭寇退治に向かう
はっ 隊長!
どこまでもお伴します
皆が声を揃えて答える
チェヨンは村のみんなを
ぐるりと見ると
拳を上げて叫んだ
影は影のやり方で
悪に裁きを!
赤月隊 参上!!
*******
『今日よりも明日もっと』
この世に悪がいる限り
しっかり影から見守って
あなたの暮らしを守り隊
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昨年12月より
お届けして来た「ひみ恋」
二月も終わろうという今日
ようやくお話の区切りが
つきました
ゆるゆる更新に
おつきあいいただき
ありがとうございました
思えば2016年から?
書き綴って来たひみ恋です
わがままで悋気大魔王で
女房一筋
ガキンチョ年下亭主のヨン
本編ともドラマとも
違う設定の このお話を
気に入っていただいた皆様
本当に
ありがとうございました
名残惜しい気持ちも
もちろんあるのですが
ひみ恋はとりあえず
これにて完(仮)とさせて
いただこうと思っております
またいつか
赤月隊のチェヨンに
会えることを願って・・・
早いもので
明日から
三月になりますね
次作は
門出の春にふさわしい?
お話をお届けできればと
思っております
ぼちぼちになりますが
また
おつきあいくださいませ