広場では踊り手に混じり
まだ 興奮冷めやらぬ
民達が 愉快に踊っている
ウンスの顔を
かがり火が照らし
その頬を茜色に染めていた
チェヨンにはそれはそれは
美しく輝いて見えた
ウンスの肩に手を置くと
チェヨンのその手を
きゅっと掴んで
良かったわね
タルチュム(仮面劇)
夢見るように呟いた
ああ そうだな
ウンスを後から
抱えるように包むと
チェヨンが静かに言った
びっくりしたでしょう?
自分たちのことで!
ほらね 私の言った通り
やっぱり
知らなかったでしょう
市井の噂話なんて
てんで
気にしなさそうだものね
ウネは
アンジェに得意げに言う
アンジェはやれやれと言った
表情で妻を眺めていた
これ以上褒めると
調子に乗りそうだと
言わんばかりに・・・
このタルチュムの噂を
ご近所の奥様から聞いた時
ウンスさん
絶対 知らないだろうから
見せてあげたいって
思ってたのよ
ウネは自分の策が
功を奏したことが
うれしそうであった
ありがとう ウネさん
高麗の人たちが
私達のこと
こんな風に思っていて
くれてるなんて
考えたこともなかった
ウネが真顔でウンスに言う
あのね あなた達はね
自分達で思っているより
ずっと有名だし
ずっと慕われているのよ
敵から国を護る高麗の
守護神と
病気や怪我を
たちどころに治してくれる
医仙様なんだから
あ ほら踊り手さんが
こっちへ来るわ
広場の中央で輪になって
踊っていた
木彫りのお面を着けた
踊り手たちが
ふたりの前にやって来る
白い布をなびかせて
ふたりのまえで
大きく一礼をすると
また 軽やかに
走り去った
楽しかったわね
ねえ ウンスさん
またこうして
四人でお出かけしましょう
子どもが生まれたら
暫くはお出かけも出来ないわ
今のうちに
羽を伸ばさなくちゃ
なんなら 旦那抜きにする?
それも楽しいわよね きっと
おいおい
もうそれくらいにしておけ
チェヨンの顔が
引きつっているぞ
医仙殿とお前 2人きりで
でかけるなど
この大護軍が許す訳なかろう
アンジェがチェヨンを
からかうように
ウネに言った
いやね 心が狭いんだから
たまには奥方を自由にして
やりなさいよね
うふふ ウネさんには
やっぱり
大護軍も敵わないわね
ウンスが笑った
俺は 何も
束縛などしてないぞ
ただ 心配なだけで
それを束縛って言うのよ
でも まあ いいわ
ウンスさんもその方が
幸せそうだもの
ねえ
ウネは
ウンスの首元を指差し
からかった
もう ウネさんたら!
軽口を叩き合い
四人の笑い声は
尽きることがなかった
テマンが
輿の準備が出来ましたと
チェヨンに告げる
イムジャ
そろそろ帰るか
もう夜も更けた
明日も
典医寺の務めがあろう
そうだった
帰って寝なくちゃね
ほんとにちゃんと
寝かせてもらうのよ
ウンスさん
無理をしちゃ駄目
いくら落ち着いていても
何があるか
わからないんだからね
ウネに釘を刺され
その言葉に赤くなるウンス
うん ありがとう
またね ウネさん
アンジェ将軍おやすみなさい
またね ウンスさん
2組の夫婦はそれぞれに
広場を後にする
少し歩き出したところで
チェヨンとウンスは
どちらからともなく
さっと 手をつないだ
楽し気に見つめあい
今にも抱き合いそうだ
その様子を後で見ていた
ウネはアンジェに言う
ねえ 私達もたまには
手でも繋ぐ?
なにを たわけたことを
もうそんな年でもなかろう
あら 年ならあのふたりと
変わらないわ
あっちは新婚
こっちは古女房だ
ひどい そんな言い方
しなくったって
ウネがアンジェに
食って掛かると
ほら
アンジェが照れながら
手を差し出す
気が変わらぬうちに
早く繋げ
へへっ
まったく
素直じゃないんだから
あんただって ほんとは
繋ぎたかったんでしょう
何 言ってる
離すぞ
うそうそ やだ
離さない
ウネがアンジェの腕に
しがみついた
それぞれの家路に向かう
道すがら
高麗の夜空に満天の星が
きらめいている
*******
『今日よりも明日もっと』
かがり火を
照らしてくれるのは
いつも あなた・・・
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