ある利用者宅に伺うとき
ひざまづいて
挨拶をするようになった
利用者は
80代の男性で
書道の師をされていた方だ
自他ともに厳しく
律することに長けたその姿に
私の背筋は自然と伸びる
その方は、ある言葉を
「お守り」に生きてきたという
「お前は体が小さいんだから
やられてしまわないように
いつでも包丁を研いでおかないと
いけないよ」
義理の父からもらった教えだ
教えどおりその方は
人生の荒波の中で
決して自分を甘やかすことなく
心の包丁を研ぎ澄ませながら
凛として生きてきた
お宅に一歩足を踏み入れると
何一つ 無駄のない空間に
緊張した空気が隙間なく張られ
ギリギリの所で均衡が保たれている
一ミリも崩せない空気だ
私はいつの頃からか
入退室時には
ひざまづいて
深々と頭を下げ
挨拶するようになった
接遇という枠を超えて
彼が積み重ねてきた人生の重みと
その静かな迫力に
心からの敬意を払わずには
いられなかったからだ
忘れることのない利用者
わたしの心を
強くしてくれた方だった
東洋の教えにおいて彼女の持つ性質は『庚(かのえ)』、すなわち「刀」や「鋼鉄」を象徴すると知りました。 |
鋼は、激しい「火」に打たれることで、強靭で美しい刀へと生まれ変わります。
そしてその火が司る本能こそが、奇しくも『礼』なのだそうです。
そしてその火が司る本能こそが、奇しくも『礼』なのだそうです。
人生の荒波という火に打たれ、礼節を重んじることで、ご自身を磨き上げてこられた見事な生き様。
その研ぎ澄まされた輝きに触れるたび、私は自然と
その研ぎ澄まされた輝きに触れるたび、私は自然と
