80代前半 男性

一軒家に独居

前立腺を患っておられ

ステージも進んでいる。


歩行時、痛みを伴うようだけど

庭の手入れをしたり

室内の片付けをしたり

調理をしたり

できることをされている。




訪問が始まり 約ひと月経った。


開始時、鋼の包丁の扱いには

注意するよう、申し送りがあった。



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    ・



「刃が欠けたから研いでおいた。

 包丁はね、

 引くか押すかだけなの。

 絶対、叩いたらだめ。

 誰がやったとか

 そういう話じゃなくて、

 扱い方があるんだから。」

 うわっ来た! ピーんと張り詰めた空気 ヒヤり


 


「はい、勉強になります。

 以後気をつけます。ペコリ」

 恥ずかしながら、我が家ではステンレス包丁を

 雑に扱ってる。



利用者さんが

鋼の包丁にこだわる理由を

話してくれた。



「義父がね、言ったんだよ。

 お前はひょろっこくて

 弱く見えるから、

 社会で太刀打ちしていくには、

 鋼を磨いておけ。

 そうしなきゃ、

 世間にやられちまうぞってね。」





その教えを守りつづけ

仕事と◯道の指導を両立。

今に至る。


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いやぁ〜調理支援も緊張するなぁ 汗

トントンって音立てられない…



わたしは身を切られる思い。

場合によっては、クビ切られる。

他事業所を断り、うちの事業所に変更された方




でも利用者さんの言ってることは正しい。




この利用者さんとは

縁あって出会ってるんだ。

利用者さんの生きた軌跡、

ほんの一部だけど受け継げるよう

頑張ってみよう。


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訪問ヘルパーをしていると

道具の扱いや

礼儀に厳しい利用者さんに

出会うことがある。



職人さんだったり

◯道を極めた男性に多い。



そういうお宅の包丁は、

決まって抜群の切れ味だ。



そこに一切の妥協はない。

人に対しても物に対しても厳しい。

でもそれと同じくらい情深い。



『自分を律する』ということなのだろう。





本当にあった話を元にしたフィクションです。