キプロスの番外編:ブランドの香りにひそむ「キプロス」 | グルコサミン博士のブログ

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キプロスを旅していると、海風の香りの中にどこか懐かしいような、

それでいて異国の深みを感じる瞬間があります。

この島は東西文明の交差点として、古代からさまざまな文化が行き交ってきました。

そんな「香りの記憶」を、実は世界の有名ブランドも取り入れています。

 

 香水の世界に生き続ける「キプロス=CHYPRE(シプレ)」

「シプレ(Chypre)」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。

フランス語で「キプロス」を意味するこの言葉は、

香水の世界でひとつ「香調」を表す専門用語でもあります。

 

今からおよそ100年前、フランスの調香師フランソワ・コティが

「Chypre(キプロス)」という香水を発表したのが始まりでした。

オークモス(苔)、ベルガモット、パチョリ、ローズなどを組み合わせた

深く上品で、少し湿ったような香りだそうです。

その名を「キプロス」と名づけたのは、

この島に漂う地中海の緑と太陽の記憶を表したかったからだと言われています。

 

以来、エルメス(Hermès)、ディオール(Dior)、グッチ(Gucci)など、

多くの名香がこの「シプレ調(キプロス調)」を継承してきました。

つまり、ブランドの香りの系譜の中に「キプロス」という地名が

いまも静かに息づいているのです。

 

エルメスという名に重なる「旅と伝達の神」

キプロス島は「愛と美の女神アフロディーテ」が生まれた島として知られています。
エメラルド色の海と、どこか懐かしい静けさ。
歩いているだけで、神話の時代に迷い込んだような気持ちになります。

そんなキプロス、実はフランスの高級ブランド「エルメス」とも深い関係があるのです。

ギリシャ神話では、アフロディーテと「旅と商業の神エルメス」との間に
「ヘルマフロディトス」という神が生まれました。
つまり、キプロスはエルメスと「神話の家族」のようなつながりを持っているのです。

19世紀、フランスの鞍職人ティエリー・エルメスは、
自らのブランドにこの神の名「Hermès(エルメス)」を選びました。
旅人のために馬具を作る彼にとって、
旅と商いを司る神の名は、理想的なシンボルだったのでしょう。

キプロスから生まれた神話の風が、
パリのラグジュアリーな世界へと受け継がれている。
そう思うと、エルメスが大切にしてきた「旅」や「美」の精神が、
神話の時代からずっと続いているように感じます。

 

たしかに、私がキプロスで見た海の青さ、
古代から変わらぬ石の街並み、
そして風の中に漂う静かな気配。
そのすべてが、エルメスの物語と重なり合うように思えました。

 

地中海の香りを纏うということ

シプレ(キプロス)の香りは、

単なる調香のスタイルではなく、

どこか哲学のような深さを持っています。

太陽の下で乾いた風に混じるオリーブや苔の匂い、

港に漂う塩気、古代から続く祈り。

そのすべてが一滴の香水の中に封じ込められているのです。

 

私が歩いたサラミ遺跡の石畳にも、

そんな「地中海の香り」が確かに残っていました。

ブランドの香水瓶の中に息づく「キプロス」を思うと、

旅の記憶がふと甘く蘇ります。