ツレに勧められて福永武彦著「忘却の河」を読みました。
あらすじ
初老の小企業の社長・藤代と、その妻で10年間寝たきりのゆき、二人の娘・美佐子と香代子の、それぞれに苦悩多い人生…。
忘却の河に流し得ぬようなそれぞれの過去が四人に暗影を投げかけており、痛切な愛の挫折、愛の不在がある。そして彼らはいつでも自分の心を探している。
主人公は、終章で北陸の海辺にある賽の河原に罪のあがないを乱すのだが、宗教なき日本人の、愛と孤独への救いを追求した、密度の高い長編小説である。
福永の美しい文体で安心して心地よく読むことができました。全編感傷的なのに、論理的である。人の罪は誰が赦すのだろう、どう赦されるのだろうと考えさせられてしまう。日本という風土で罪に相対して、導かれる答えが意外にハッピーエンド。家族でありながら少し心がバラバラ、しかし誰も悪くない、みんなが正直で素直に生きている。このような日本の家族らしさを感じつつ、でもこの物語の重いテーマから解放されたのではないと知りながら・・・。
個人的には呉さんとゆきさんのロマンスが好き。そして次女からそのロマンスの存在を伝えられたときの父親の安堵にほっとしました。
久しぶりによい小説を読みました。
