今度は、各国におけるグルコサミンの位置づけを述べる。グルコサミンについては膨大な基礎および臨床研究が行われており、ここまで研究されている食品素材は恐らくほかにないだろう。
ちなみに、ほとんどの臨床研究はグルコサミンの関節痛に及ぼす効果と、変形性関節症(OA)の軟骨変性を防げるかという2点を主な論点としている。疼痛緩和効果については確かに肯定派と否定派があり、結論は一様ではないが、これは臨床研究の対象者が罹患する疾患の種類や重症度にもよると考えられる。なお、安全性が高い点では、両派とも評価している。
グルコサミン結晶性製剤は欧州、アジア、南米の多くの国でOA治療用の医薬品として承認されている。OAの治療ガイドラインを見ると、グルコサミンは10件中6件の既存ガイドラインで推奨されている。さらに、変形性関節症に関する唯一の国際学会であるOARSIが策定したガイドラインにおける63%の推奨度に対して、日本整形外科学会(JOA)のそれは41%であり、両者の間には22%の乖離がある。また、軟骨保護作用についてもOARSIは41%であるのに対してJOAは31%と低い。
一方、ヒアルロン酸の関節内注射については、OARSIの推奨度が64%でグルコサミンとさほど差はないが、JOAでは日本で軽症者に施されている実態を配慮して87%と23%の差が認められており、評価が大きく分かれている。また、あまりエビデンスのない温熱療法でさえ、JOAが63%と推奨していることを考えると、膨大なエビデンスを有するグルコサミンの推奨度が不当に低いと感じるのは筆者だけではあるまい。
東京大学運動器疾患の疫学研究であるROAD Studyの結果によると、X線所見上の変形性膝関節症患者は2,400万人であり、そのうち疼痛などの臨床症状を有する者は820万人である。同じく、X線所見上の変形性腰椎症者は3,000万人で、そのうち臨床症状を有するものは1,020万人である。合わせて、厚生労働省の14年(平成26年)の患者調査によると、治療を受けている関節症患者は125万人である。これらのことから潜在的な患者の多くは、通院はしていないものの、自ら何かしらの手段で対応している可能性がうかがえる。
日本におけるグルコサミンの研究開発および販売は90年代後半からスタートしており、この20年間で多くの国民に使用され、購買リピート率も高いことから、一定程度の満足が得られているものと考えられる。
一方、なぜグルコサミンは日本で医薬品として扱われないのかを考える。医薬品は薬機法によって効果や品質、安全性が法的に認められており、製薬会社が製造・販売を行うものである。医薬品として厚生労働省の認可を得るには、製薬会社は多大な時間と費用をかける。グルコサミンはサプリメントとして既に広く流通しており、これから認可を取得しても採算が合わないのが理由であると筆者は考えている。従って、効果の有無と、医薬品であるかないかということは次元が異なる話である。
グルコサミンが有効か否かの確定には、まずOA重症度における客観的な評価法の開発が待たされる。次に、比較的軽症者を用いる臨床試験と客観的な評価法が肝心である。当然、グルコサミンを飲めば軟骨はどんどん再生できるといった過剰広告に対する規制は必要であるが、今後いよいよ高齢者が増えていく日本社会においては、さらにグルコサミンを求める声が増えていくものと予想される。何よりも、そうした声にグルコサミンが応えていくことを期待したい。