変形性関節症の疫学調査 | グルコサミン博士のブログ

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グルコサミン研究会第3回研修会での、東大の吉村典子先生による講演を紹介します。


変形性関節症(以下、OA)については、臨床の場においてはきわめてありふれた疾患であるにも関わらず、一般住民を対象とする疫学調査が少なく、予防対策のためのエビデンスは十分であるとは言えません。


吉村先生を中心とする研究グループはOAに関する大規模の疫学研究であるROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)プロジェクトを立ち上げ、わが国には50歳以上で、痛みを伴う膝OA患者が820万人、痛みを伴う腰椎OA患者が1020万人いると推定されると報告されました。


関節症は「要介護」となる原因の9%を占めており、「要支援」となる原因としては、老衰に次いで第2位(17.5%)を占めています。


ROADプロジェクトは、地域特性の異なる全国3地域でのコホート調査が、2005年から始まりました。参加者は50歳以上の男女で、都市型(東京都板橋区)コホート、山村型コホート(新潟県美山村)、漁村型コホート(和歌山県太地町)計3040人に達し、世界でも最大規模です。


吉村先生は、ベースライン調査が終了した地域コホートの結果の一部を報告しました。それによりますと、X線上の変形所見から診断された膝OAの有病率は男性で44.6%、女性で66.0%と高い数字が示されました。そのうち、痛みを有する膝OAも男性25.4%、女性38.9%という高い有病率を示しました。

この結果を日本の人口構成に当てはめると、日本には50歳以上で、X線上の膝OA患者は2400万人(男性840万人、女性1560万人)、X線上の膝OAで痛みを有する患者が820万人(男性210万人、女性610万人)いると推定されました。

腰椎OAについても同様に検討を行いました。それによると日本には50歳以上で、X線上の腰椎OA患者が3510万人(男性1850万人、女性1660万人)、X線上の腰椎OAで痛みを有する患者が1020万人(男性450万人、女性570万人)いると推定されました。

また、性別、地域特性との関連について、膝OAのリスクは、女性が男性の3倍、山村部在住が都市部在住の2.6倍高いことが分かりました。一方、腰椎OAのリスクは逆に、女性が男性より60%減、山村部在住が都市部在住より20%減と明らかになりました。なお、都市、山村に比べ漁村のOA罹患率は低いという興味深い結果になりました。

年齢、体格因子などについても検討されました。その結果、膝OAも腰椎OAも加齢やBMIの増加が危険因子であると報告されました。


さらに、最も長く就いていた職業における主な姿勢や動作との関連を調べますと、膝OAのリスクは男女とも「立つ」「歩く」「坂道を上る」「重い物を持つ」などで、また、腰椎OAのリスクは、女性で「坂道を上る」「重い物を持つ」などで有意に高くなっていました。なお、男性では同じ傾向はあるものの、有意な差は示されませんでした。

吉村先生の研究グループは今後、ベースライン調査のさらなる詳細な解析を進め、OAのリスクファクターについて仮説を提唱する考えです。また、追跡調査によるOAの発生率とその影響要因を明らかすることによって、OAの診断支援システムを開発を目標としています。