麻布のスパの帰り道、
かつての「お洒落な麻布」の面影を残す、高齢の方が通いそうなブティックに立ち寄った。
そこで手に入れたのは、母のために
冬の空気に映える一着のピンクのセーター。
店主と談笑していると、一人の女性が「どこか良いレストランはありませんか?」とお店に入ってこられた。
「私がこれからクリスマスケーキを取りに行くのがイタリアンですが、ご一緒しましょうか?」
そうお誘いすると、「是非是非!」と快いお返事。
彼女は名古屋から、東洋英和女学院大学院での「移民受け入れ」に関するお話のために、わざわざこの地を訪れたのだという。
目的地のレストランまで、麻布の坂道を自然と並んで歩き始めた。
話題は、日本が直面する「移民問題」の本質へと切り込んでいく。
「受け入れには賛成ですか?」と私が尋ねると、
「受け入れざるを得ないでしょう」と彼女。私も全く同感だった。
しかし、話はさらに深いところへ。
「でも、日本が本当に欲しがっているのはブルーワーカーですよね」
「そうそう。都合が良いんですよ。現場の労働力は欲しいけれど、同時に高度人材にも来てほしいなんて……」
「そうですね、今の日本にそんな(高度な)人は来ませんからね」
初対面とは思えないほど、本質を突いた議論に熱がこもる。
気づけば、目の前にあるはずのレストランを二人して通り過ぎていた。
「あら、行き過ぎてしまいましたね」
笑い合いながら、麻布の入り組んだ素敵な路地裏をあえて遠回りして歩く。
「雅子さまが外務省時代に通われていたのも、この近くの狸穴坂(まみあなざか)なんですよ」
そんな地元の歴史を添えると、彼女は興味深そうに頷かれた。
知的な対話に夢中になり、美しい坂道を彷徨う贅沢。
ようやくレストランに辿り着き、
予約していたケーキを手に取る頃には、心はピンクのセーターのように温かく、満たされていた。
麻布という街の懐の深さと、見ず知らずの方とここまで高いレベルで響き合えた一期一会に、
心からの興奮を覚えた一日だった。







