ミレーヌは何日も何日も手にしてる楽譜と異国語の文字を考えるが
ララライ〜 ララライ〜誰も知らない 名もない今をかけてゆくの
あの三日月へ
手を伸ばして〜
の部分しかメロディラインが掴めないし 歌詞が読めなかった。
「なんてことでしょっ!
私、昔 音楽は習っていたのに
ピアノも弾けてたのに
今は ほとんど 楽譜が読めなくなってるわ。
どんなリズムで歌うのよーー
これーーっ
ほとんど何書いてるのかわかんない。」
ミレーヌは雪がちらつく木造造りの休憩所で
嘆き悲しみ涙する。
すると どこに潜んでいたのか?
カンドンゴ師匠が ミレーヌ の後ろに通り過ぎつつ
こう つぶやいた。
「7日ほどのちに 皆の前で歌う前に
そなたの得意技を うまく使えば
きっと 良い歌が完成するはずじゃ。
ヒントは
歌は 呼吸が大切なのじゃよ。
姿勢を整えること。
どんなリズムを 取るべきなのか?
この偉大な歌を その歌い手のように 素晴らしい歌唱力で 歌うとか
到底 そなたには 無理じゃよ。
歌手じゃないし
当たり前のことである。
じゃがなあ。
だから
みんなの前で 魂込めて 音域を広げる工夫をしたいとかじゃろうて。
それもええかもしれん。
だが
そなたは 大切な人を思って
その大切な人に自分を 魅せる気持ちで歌え。
相手の心を揺さぶるのじゃ。
すると どんな歌詞になろうとも
五感に訴えることができると思うぞよ。」
そう言って カンドンゴ師匠は風のように雪のちらつく小道を かけて行った。
「姿勢を整えるからの〜
思いを大切な人に届けること。
からの〜
心を揺さぶるとは??
なんか 見えてきた気がする。
よっしゃ もう一息頑張ってみるか!!
試練を乗り越えてみせる。」
一方でレックスは毎日8時間労働を強いられていた。
時給1000円。
希望すれば残業は3時間まで可能。
パラレルワールド世界の(日本という国のように)円という単位で 「羅漢」の国では金が稼げるシステムのようだ。
20000円稼げば 「みかわしのマント」が買える。
これは回避率を とにかく大幅にアップできるマントなのだ。
50000円稼げば 「自動回復ベルト」が買える。
これは 装備してるだけで 状態異常にもならないし
HPが ヒーリング効果により
超絶回復できるチートなアイテムだ。
ぜひゲットしたいアイテムだと思う。
しかし それ以上に
100000万も稼げれば
とんでもないものが手に入るようだ。
最近 「羅漢国」と取引してる
「竜騎士族の生き残り達」
その竜騎士とドラゴンが
100000万で 冒険者の助っ人になるというシステムらしい(目的を完遂するまで)
レックスは 自分ほどの冒険を積んできたヒーローなら
軽く ぜーーんぶ 毎日 残業して稼ぐと
羅漢の僧侶達に豪語していた。
そこにカンドンゴ師匠が 風のやうに
颯爽と
やってきた。
「やれんのかな?
身の程を知ることになるぞ。
今なら 命は助かるぞ。
海賊達を呼ぶんで ザイールに帰ったほうがええ思うぞ」
カンドンゴは レックスに また修行をあきらめるように問いかけた。
「じじい しつこいぞ!
やるって言うたら
やるんだよ。
それが男ってもんだゴラァ。」
「ほぉお 威勢がいいのぉ」
「で、じじい
竜騎士って まさかアゼムって名前の奴いる?
ドラゴンってコドラという名前かな?」
「はてぇ?
そんな竜騎士やドラゴンなんて
わしゃ知らんぞ」
「そっか……
やはり
オレの いいように解釈しただけのことか……
世の中
そんなゲームみたいな話は ないだろうし……
でも ゲーム以上に クソみてえな
イージーな仕事を とっとと
紹介しやがれ
ボケがーー」
ニャッ
カンドンゴ師匠は不敵にレックスに微笑んだ。
そして仕事の初日
まずは 「ポルトリングへ輸送する荷物を書状に書く仕事をレックスに依頼した 僧侶&仕事の上司達」
レックス……仕事 初日から
やらかしたようだ。
書き間違え多すぎ。
字が汚くて読めないことが多い。
毎回
なんか 書く文字が抜けてる。
字のバランスが悪すぎて不快になる。
「おい!
おまえ
今日一日で
この部署
ここには こんでええぞ。
もっと単純な仕事を紹介してやる。
事務処理能力だけで14日
過ぎればよかったと思うはず。
まぁ 仕方なかろう」
翌日
レックスは 単純な段ボールに商品とか食品とかを
仕分ける作業に就いた。
1日目から
段ボールの箱詰め作業が
全くできてないレックス。
「今日一日
まあ 初日だから許してやる
明日は
今日
言われたことを ぜんぶできるようにしとけよ。」
「ふざけんじゃねえ
慣れてないから
失敗しただけだ
明日は
リベンジしてやらぁ クソがっ!」
「レックスよ
楽しみにしておるぞよ」
そして翌日
吠えたわりに
レックスは
その日も失敗だらけだった。
(混ぜるな危険)の表示のところに
本当に危険なものを混ぜてしまった。
台車に積み上げる荷物が
尋常じゃなかったようだ。
何度も何度も
荷物を落としてしまった。
不良品ばかり出してしまうレックス。
「うわぁああああ
オレはヒーローだぁああ」
レックスは 仕事も後半戦の終わり頃に
ついに 感情的に苦しくなり叫んでしまった。
その時
奥から その声を聞いて、
課長が
走ってレックスの側に行った。
「おまえ、今すぐ
感情を捨てろ!
でなきゃ 首!
そして他の部署で働くことも禁止する」
その部署の課長が
レックスの前に立ちはだかりクールに
それだけを
言い放って
くるりと踵を返した。
「くそっ、オレは
オレは……
ちっ
すいませんでした。
あらためます。」
レックスは
グッと感情を抑え込んだ。
そして翌日から
キャラを変えてでも
仕事のために
頑張ろうと前向きな考えをしていた。
そして その日の勤務終了前に その部署の親方は言った。
「おまえ ものを壊すしか脳がないんか!!」
「すいません……仕事は 簡単にできるかと舐めてました。」
あまりに仕事が出来ないので すっかり覇気をなくして声も細くなってしまうレックス。
翌日
レックスは
もう悔しくて悲しくて
いてもたってもいられなかった。
一心不乱に
仕事を こなした。
「おっ レックスーー
君 今日
絶好調だね」
とか
「やればできるじゃん」
とか
「早くて手際いいし
見ていて気持ちいいね」
とか
レックスは
褒められまくった。
その日の午後
「おっしゃー
ようやくオレの本当の出来るヒーロー力が
覚醒してきたぞー
おっしゃー
おっしゃーー
やったるぜーーー」
午後からも、調子良く作業をしていた
していた
していた つもり
だったが……
ガシャーン!
製品を積んだ 台車を 機械にぶつけて壊してしまった。
その機械は100000円もするものだった。
(あわわわわわわわ
や やべぇ………)
高額な機械を壊したので
激しく怒られるし
損害賠償を要求されると
思っていた。
腹が大きくでている激ぽちゃ坊主の主任は
豚を丸焼きにする前の豚みたいな
醜い顔して
レックスに近づいてきた。
そして 激しく何かを罵倒しようとしてきた
その時
ささっと カンドンゴ師匠がレックスの前に現れてこう言った。
「まあ良い。損害賠償など請求はしないぞよ。
今までの給料は とりあえずゼロには しないが
8000円だけ 渡しておこう。」
思わず 安堵の表情を浮かべるレックス
「ただし
明日からレックス君は力仕事に就いていただくからね。
逃げ出すなら今のうちに」
「オレ……もとい 私は逃げ出しません。
わたくしめの犯した罪を許してくださり寛大なお気持ちに感謝致します。
カンドンゴ師匠。
明日から
しっかり学び頑張ります。」
「うむ!明日からの力仕事
わしゃ期待しておるぞ」
「力仕事こそ
わたくしの真骨頂で ございます。
私は 過去に 強力な魔物達を倒し
すご〜くレベルアップしてると思いますので」
「たわけーー
うつけもの。
身の程を知るが良い!
まぁ 明日から いやでも知ることになるがなぁ
フォフォフォ」
不気味な笑い声をあげてカンドンゴ師匠は去って行った。
そして翌日から レックスの力仕事が始まった。
重い杭を使う建築作業では
しょっちゅう杭を 斜めに打ってしまうレックス。
50kgのハンドミシンを 案外
思うようにこなせず
糸を ひっかけるばかりしてしまうレックス。
建築作業のためのピッキング作業もあり
多くのレーンから部品が落ちてくるが
それを 落としまくるレックス。
無事にカゴや箱に入れて
まとめなければいけないのに
落としてしまうとは情けない。
僧侶達は カンフーや空手、陸上選手のような
動きで 見事に
ほとんど 部品が落ちてないではないか!?
「あなた達
もしかして
オリンピック選手ですか?」
と レックスは働く 修行僧らに問いかけた。
「ちげーよ」
「オリンピックって 東京五輪は 2021年にパラレルワールドで あったと聞くが」
「オリンピック?うまいのそれ?」
と3人の僧侶達は
それぞれユニークな返事をしてきた。
「そんな 素早いしキレのあるうごきができれば
デビラーとか魔王にも勝てるんじゃないでしょうか?」
とレックスは ぶっとんだ質問を投げかけた
(*あまりに仕事場で惨めな思いばかりしてるので
心も萎えて 気が小さくなってしまったレックス。
被害妄想癖もついたようだ かわいそうに*)
「魔物なら 下手したらゴブリンレベルにも勝てないよ ワイらぁわ。
レックス殿、
力じゃないし 頭でもない
コツを 掴めば これくらいの仕事なら
君なら簡単に出来るよ」
と 上司はレックスに言った。
何日も同じような作業をするうちに
徐々に 作業スピードが アップしてきたレックス。
「元気百万米」を
大きな鉄の入れ物から 鉄の入れ物にうつしかえる作業をするが
毎回
こぼすとか
弱々しい動きで なんとか
入れ物に入れられるレベルで レックスは
大苦戦した。
「こんな重いもの
化け物レベルですよー
先輩方
すごいですねー
」
「レックスよ!
おまえ
情けないぞ。
仕事しにきたの?
違うだろ?
世界を救いにきてるんだろ?
こんな素人の仕事で
すげいだの 感心してる場合かよ!
もっと大きな仕事を やって一攫千金目指さない?」
上司が なにやら羅漢で 一攫千金が夢でもないクエストが受けられるとの話をレックスにしたようだ。
そこに
また
颯爽と現れたカンドンゴ師匠。
「レックスよ
羅漢の北の洞窟に
1000万円相当の宝石が眠る宝箱がある。
それを とってくれば 竜騎士や マントや回復ベルトなど、全て ソナタに差し上げる。
おまけにミレーヌ の 難解なミッションも 免除できるようにしてやる。
どうするレックス
やる?やらない?」
カンドンゴは 右手、そして左手を やけにスローにレックスに差し出しながら
ゆっくり喋った。
「こんな ポンコツな 私でも、できるんでしょうか?
なんだか不安です。
もし イージーなら
やってみてもいいかなと思います。」
「レックスよー悪い意味でみちがえたぞ
やってみてもいいかな?
はぁ?
たわけものめがーー
やれよーー
クエストを
うけてよいよーー
男だろーー」
カンドンゴ師匠は レックスの胸ぐらを掴んで揺らしながら
レックスに吠えた。
「わかりました。
やってみます。
でも怖くなったら逃げますから」
「おう!逃げてこい
逃げるが勝ちとも言うからのぉ」
メガネをクイっと上げ下げしてカンドンゴは
咄嗟に言葉を変えた
「
まぁ うさぎをちょっと強くしたモンスターが
ちょいちょいおるから
気をつけてな」
「へぇええええ
オレ
やっぱ怖いーー」
「強くなりたいんじゃないのかレックス!!
もしクエストに成功したら
全ての 報酬がゲットだぞ。
失敗したら
最初に言ったよな?死んでもらうから。
クエスト途中で
死ぬほうが良かったと後悔させてやる」
「ひぃーーーーっ わかりました。
宝石箱を取ってまいります。」
レックスは
雪山を どんどん登った。
「オレ
本当は 強くなかったんじゃ
なんのために旅してるんだろ??
オレより強い奴
世の中
こんなにたくさんいるなんて
なんか オレは 強いんかと 自惚れてたのかなあ。
仕事も ろくにできないのか」
ネガティブな心境で 見渡す限り雪景色の
山を長靴で
ズシリ
ズシリと
登っていくレックス。
日も暮れてきた。
「ううう
なんだか
また寒くなってきたぞ。
多分
もうすぐ山頂の
洞窟なんだけどなぁ」
薄暗い雪山の茂みから
いくつもの光を感じたレックス
「なんなんだ
この光は……
」
洞窟が見えてきたと思ったら
突如
不気味なほどに 増えた黄色い光がレックスを
取り囲んだ。
そして
一斉に襲いかかった。
「うぎゃああああぁあ
こんな
こんなとこで
終わってたまるかーー
いや、
やっぱオレ
終わるべきなのかもしれん
生きててなんになる??」
その頃
アランと汁風が
デビラーと対峙していたようだ。
「久しぶりだな
アラン。
随分と逞しくなったんじゃないかな?
だが
汁風と2人がかりでオレと戦おうとする時点で
反則としか思えないがなあ」
デビラーはニヤニヤしながらアランに言った。
「デビラーよ!
オレ様の前に おまえは花火のように散るだろう。
美しい花火のように
散らして差し上げるぜ」
「アラン……
そして汁風
2人まとめて
かかってきな」
啖呵を切りながら 指先を くいくいさせて挑発のポーズを取るデビラー。
その時アランは
「汁風、そこで熟睡してるユメ様を安全な所に連れて行ってくれ!
遠くへ
なるべく遠くへ
」
「はっ?アラン
正気な考えされてますぅ?」
汁風は首を傾げながら言った。
「オレ様1人で デビラーなんて倒せるんで言ってるんだぜ!
まあ デビラーと タイマンしてえんでね。
男と男の勝負だ!ロマンチックだろ?
カッコいいだろ?
オレ バズってるだろ?」
「ふっ アランも 後から あたいらと合流しなはれーー 楽しみにしてまっせ
ほな、健闘祈るわー」
アランのことだから単なる カッコつけ……
ではないと読んだ汁風は
ユメ様を抱き抱えて
そこから離脱した。
「オレ様
このタイマンを 待ち望んでいたぜ!
この勝負
どっちか死ぬまで 戦うことを誓おうぜデビラー。」
「おう!望むところだ
このデビラー様相手に
たった一人で挑もうとする
おばかな アランさんよぉ
」
果たしてミレーヌはステージで羅漢の人々の心を揺さぶる歌を歌えるのか??
レックスは 現時点で あんな全方向に囲む敵を倒す技を持ち合わせてないが 無事に試練をクリアできるのか!?
アランはデビラーとのタイマン勝負に勝てるのか?
続く




