手には腕利きの料理人が作った食べ物が二段重ねになった弁当箱を包んだ袋と松明を持っていた。
薄暗い螺旋階段を二週ほど ぐるりぐるりと回ったら
ザイール王の視界には
牢に閉じ込められているデビラーが 見えてきた。
王の視線に気づいたデビラーは案外 落ち着いた口調で 王に言った。
「おお〜飯かぁ〜ありがてえ。
早く食いてえ 腹減ったなあ」
王は その声に呼応してか 螺旋階段を ささっと降りて牢獄まで速やかに到達した。
「お主が天下の大悪徳デビラーとやらなのだな。
この牢獄はダイヤモンドにも匹敵する硬度があるので
相当なレベルの冒険者だろうが なんだろうが脱出は不可能なのだよ。」
ザイール王はデビラーの目を睨みつけるように見つめながら 牢獄の右端にある 小さな魔法の扉に鍵を開けて
弁当箱が入った容器を速やかに牢獄内に入れた。
そして 尋常じゃない程のスピードで速やかに鍵を再びかけた。
「おっそろしいコトをオレを睨みつけて語ってる隙に 牢に飯を入れてくるたぁ
なかなか おめえさん 隙がねぇなぁ。
まぁ いい 腹減ってるんで 食うぞ」
僅かな隙をついて逃げようと思ったが 牢の開け閉めの速さと 王のフェイント力に感服したのかデビラーは
ひたすら弁当箱の食事をフォークもナイフも使わず貪った。
その様子は 犬のようだった。
王は デビラーが貪り食ってる間は空気を読んで 彼に言葉を発することはなかった。
食事を食べ終わり手で口の周りを 擦りつけながらデビラーは言った。
「あぁ うめかったぁ。
さすがは王さんだ。
他の城の住人だとオレに飯を届けるのを絶対に嫌がっただろうなぁ」
「ふっ そうか?!
それよりお前が どんな経由で悪行三昧したか私に聞かせてくれたまえ。
処罰をどうするか それにより軽減できるかもしれないぞ。
まぁ 内容次第だがな」
「わかった 話すよ。
だがオレ様を牢に閉じ込めたことの おめえらの凄さを讃えよう。
こんなうめえ飯を届けてくれたのも感謝すっぞ!
何よりオレの話を聞いてくれる姿勢に心打たれたわ。
」
なにやら感動したそぶりを見せながら デビラーは
牢の隙間から 王に握手を求めてきた。
「ザイールの先代達は相手が どんな鬼畜でも 握手求めるなら拒むべからずとの教えがある。
キサマ よく知ってるなあ。
よし! 今は休戦だ。」
王は がっちりとデビラーに握手をした。
ゴキゴキゴキッ
デビラーは王の手を破壊するかのように強く王の手を握った。
「くっ キサマ 何をする?!」
王はデビラーの手を離そうとするが離れない。
(マミラビアビマ……)
デビラーは呪文のような言葉を口にした。
するとデビラーの首が霊体のように半透明となりニョロニョロと 牢の外に徐々に出ていった。
ぐぅ…くっ
まさか キサマ ワシの想像の斜め上をいく方法を
使ってくる…なんて
王が 首に まとわりつくデビラーの蛇のような部分を抜こうと両手を使って
なんとかはらいのけた。
しかし
デビラーの首から下も はらいのけた部分と合体し、あっという間に元のデビラーの姿になり王の背後を取っていた。
「王の家系のものは 握手を求めて拒む奴はいないことをオレは最初から知ってた。
だが 王以外の者が来れば 間違いなくオレとの握手を拒んだだろうな……
いつ 王が地下牢へ来るのか
待つことにしていたが まさか こんな早く来てくれるとはな キャハハハ」
デビラーは高笑いしながら王の背後から鋭利なナイフで王の心臓部分を刺し貫いた。
「無念………」
王はデビラーの一刺しで息絶えた。
生き絶えた王の心臓部めがけ高速の拳を繰り出すデビラー。
ポタポタと液状の心臓部を垂らしながらニヤケるデビラー。
(マラスタブ ハラムス ハート)
なにやら呪文のような言葉を唱えるデビラー。
マラスタブ ハラムス……ハート
その言葉を繰り返し唱えることにより
デビラーの身体は 徐々にザイール王の姿に変化していった。
それとともにザイール王の亡骸は徐々に消えていった。
呪文を唱え終えると
まるで 大好物にでもありついたかのように王の心臓部を貪り食うデビラー。
「あぁ〜最高だなぁ、
ウメェ ウメェ 」
ジュルル〜
奇妙な音をたてて 口周りの汚れを取るデビラー。
そして数分後、デビラーは目が怪しく輝くほど充血している以外は ザイール王と そっくりの姿になった。
はははっ はーーっはっはっ」
高笑いしながらデビラーは宴会場に向かった。
何事もなかったように宴会場の中央の席に座るデビラー。
そこにミレーヌが安堵な表情を浮かべながら近づいてきた。
「あら パパ
遅かったじゃない?
目が赤いけど
なんか あったの?」
ミレーヌは怪訝な表情で王を見つめた。
「まぁ ちょっとな……
デビラーとの やり取りで
疲れたのかもな」
ミレーヌや宴会場のその他の人がデビラーとの会話について 色々聞こうと近づこうとしたが
ザイール王に乗り移ってるデビラーは
それを無視して 宴会場の中央に移動した。
「ようこそ皆の者よ!
私は新しい魔法を閃いた。
今 ここで それを宴会芸みたいに披露しようではないか!!」
宴会芸?王が?
新しい魔法を このタイミングで?
宴会場内は
ざわめいた。
「まぁ沈まりたまえ
皆の者よ。」
はぁあーーーーっシャラク!
王が一言 不思議な言葉を唱えると
マントから100個近いワイングラスが
手品のように出てきた。
そのあと 大きなワインの樽がマントから出てきた。
おおぉーーー
すっげぇ それが魔法ですか すっげえ
王様素晴らしいです。
と宴会場の人々は王の出したワイングラスやワインの入った樽を見て 大いに湧いた。
「皆の者、こっからが私の真骨頂だよ。
このワイングラスから 今 マントから出したワインを取り出して テーブルを囲みなさい。」
宴会場の人々は王のマントから出したワイン樽とワイングラスを持って ざわめきながらビュッフェスタイルの料理が並んだ長テーブルを囲んだ。
「皆さん ワイングラスにワインは入っておるようじゃな。
では こっから さらなる楽しい魔法を唱えよう。
ハムラムマブブルー」
王が呪文のような言葉を唱えるとワイングラスのワインが 一気に青に変化した。
宴会場内は 大きなどよめきがあった。
しかし 不気味すぎる青く輝いているワイングラスを見て 周りの人々は 不安そうに青に変わったワインを見つめていた。
「なにやら ワシが変化させた青のワインでは まだ皆の者は乾杯の音頭が取れんようじゃな。
仕方ない
ここは神官のマーサーよ!
ワシの前に 来たれ!」
王の前に 行った。
「マーサーよ よく来たな。
ここで マーサーは実験台となってもらうぞ」
「実験台と申しますと??」不安そうに首を傾げたマーサー。
「おまえの潜在意識の中の 力を一時的に解放させるのだよ!」
「私の内なる力???」
「YES! では 行くぞ!」
E M D R
と 王はマーサーに向かって 呪文を唱えた。
マーサーの眉間から頭頂部に光の筋が一瞬見えた。
そのあと マーサーは どこを見てるのかわからないような 目つきになった。
頭を 軽くグラグラ揺らし出したマーサー。
マーサー神官?
マーサーさん ?
不気味な表情と動きのマーサーに 会場は変な空気となった。
しかし それから刹那
マーサーは 「マーサーだーー
僕 マーサー だ ぴょ〜ん」
と言って うさぎのような格好で その場で
飛び跳ねた。
それを見て 会場内は 先ほどまでの 地獄にでも行くのかしらというような悪寒が一気に吹き飛び 一気に空気感がマーサーの
ぶっ飛んだ発言に緩んだ。
「なんと 美味しいワインなんでしょう。
なんか僕ちゃん 美味しすぎて テンション爆上がりしちゃうわよーー」
いきなり オネエ口調になりマーサーは ストリップの時に使う あの曲を
口ずさみながら どんどん服を脱ぎ出した。
ええぞーーマーサー
もっと脱げーー
マーサーって めっちゃ面白い能力あったんだーー
あの堅物マーサー さん 意外と お茶目だったんですねーー
会場内から 普段は敬虔な神官で 真面目で堅物なマーサーが トリッキーな行動を するんで 大きな喝采が響いた。
そして マーサーは褌一丁になっていた。
「なんだか わたくしマーサーは
今、人生の絶好調を迎えております。
まさに感無量です。」
人々は もはや変態なスタイルのマーサーに
神をも見るのかのような視線で
釘付けになっている。
「わたくしマーサーの
踊りと歌にも 皆さま
お付き合いくださいませ」
マーサーは
褌一丁で
顔も緩みまくり
手足を
バタバタ動かしている……
自分の頰を パチパチと叩く
歌なのか? 叫びなのか??
やたらと耳に残るフレーズを
口ずさみながら手足を バタつかせるマーサー。
その時 ザイール王に化けたデビラーは
心の中で自分のしてることを自画自賛してたようだ。
ほほほーい ほほほーーい
ほほほーい
ほほほーいって 聞いたこともないような言葉を使いながら 踊りまくるマーサーに 会場は
大拍手で迎えた。
ほはほーい ほはほーい
ほほほーい
10分も 同じ動きが続いた。
「はよ やめんかーーい」
王の一言で マーサーは 踊りをやめて 疲れたのか その場に横たわり居眠りを始めた。
「寝るんかーい」
宴会場の誰かが 奇行過ぎるマーサーに ツッコミを入れた。
「どうじゃ?ワシの幸福度をアップさせる青ワインの魔法は
皆も 飲んで 一気に 今以上に楽しく盛り上がろうぞ
青いワインが入ったグラスを持て」
王の一言で宴会場の全員がグラスを手にした。
「乾杯 皆の者!」
王の乾杯の挨拶に応じて 宴会場の人々が
乾杯 かんぱーーい パンカーーイ!と言って
青いワインを飲み出した。
しかし レックスやミレーヌや 一部の人達は飲んだふりをして青いワインを飲まなかった。
少しだけ飲んだものもいたようだが……
しばらくして宴会場は異様な空気に包まれた。
青いワインを一気飲みしたものは 次々と血を吐いて倒れた。
「はっ 私は……」
倒れていたマーサーも 目を覚ました。
マーサーは 青ワインを飲んだにかかわらずデビラーの術により 死なずには済んだが
自分のおかしな姿と 無力さに腹を立てて地面に膝を落とし嘆き悲しんだ。
「王様……キサマあぁーーーっ!
何しやがったーー」
次々と血を吐いて倒れて行く宴会場の人々の姿を見て
レックスは ブチキレる。
テーブルの上に置いてある花瓶を思いっきり王に投げつけた。
ヒョイと かわす
王。
「はははっ はーーっはっはっ おかしいぜ〜全くよお。
オレ様の青ワインを 飲んでない奴や
一口しか飲んでない奴も まぁ 結構いたもんだなあ」
そう王は言って城のあちこちの扉に視線を向けた。
宴会場の大広間のいくつもの扉に向かって 青ワインを飲まなかった人々は 脱出しようと扉の方にかけて行ってる様を王の視線に合わせて 眺めるレックス。
だが 西の入口には 通常の2倍はある大きさの(ビッグベア)が何頭も 入り込んで来ていた。
逃げようとしてる 兵士と兵士の妻が何頭も ビッグベアに囲まれている。
若き兵士は言った。
「おまえは お腹に赤ちゃんがいる。
ここは オレが食い止める。
おまえだけでも バラン王国でも どこでも逃げてくれ」
「でも あなたが……
あなたに わたくしと あなたとの命の結晶が……」
ブサッ!
ビッグベアにバトルアクスで応戦しながら 若者は言った。
「おまえだけでも 逃げてくれーー オレも必ず後から
行くからーー うわぁ 」
ビッグベアの攻撃を受けながら兵士は妻を その場から逃がした。
東の出口では
人間以上の大きさの「ホーンザ・ラビッツ」という兎の魔物が数頭 入り込んできた。
そこで 城の医療用ロボット博士が 応戦してるようだ。
ロボットだが 戦闘力は 並みの兵士に匹敵する。
頭脳なら 並みの魔道士では 太刀打ちできないほど優れた博士だ。
アランは 速やかに城の異変に気付き 各部屋にも魔物が侵入してないか 様子を見に行った。
「みんなー 持ちこたえてくれ
部屋にも魔物が侵入してるかもしれないので。
オレ様、すぐ戻ってくるから」
アランが 各部屋の様子を見に行き また宴会場に戻ってくることを聞いて信じた1人の魔道士は
知性溢れる行動をしたようだ。
各部屋に いるであろう兵隊蟻の魔物や中庭に ぱらついてる兵隊蟻の魔物を
「密蜜」の術で おびき寄せて
宴会場外の中庭に 寄せ集めていたのだった。
これにより 全体攻撃のプロであるアランに兵隊蟻を一掃してもらおうと計らっていたようだ。
そしてミレーヌは変わり果てた王に 何かが憑依したと思ってレックスに続いて 王を問い詰めようとした
しかし……
ミレーヌが一番見てはいけないものを
ミレーヌは目の当たりにしてしまった……
マ、マロン先生……と ミレーヌの亡くなった母のように慕っていたマロン先生のもとに駆け寄ったミレーヌ 。
ミ レー ヌ ……ごめんね…
こんな姿になってしまって…
何もあなたに してあげられなくて
ごめんね
「いやだいやだ
まだまだ 先生から
色々 教えて もらいたかった。
先生の教えてくれた学術、拳術、など ほんとに あたしの力になり糧となりました。」
「それなら 良かった……
今 あなたに 最後に
教えたいことは……」
「何?なんなの 先生
先生」
多少熱くなりすぎて 強引にマロン先生を揺するミレーヌ 。
「熱いだけじゃダメなのよ 人間は。
どんなに辛くたって悲しくたってピンチに陥ったって
忘れちゃいけないことが……
そんな時こそ 深呼吸してごらん。
ピンクのオーラが 身体に満ちるイメージをして
大きく吸って 止めて ゆっくり ネガティブな気持ち 身体の邪気を吐き出すようなイメージで……
」
しかし 最後にミレーヌはマロン先生に習った
ピンクのオーラを吸収するような深呼吸を ゆっくり1分ほど したようだ。
(不思議だ……あんなに悲しかったのに
あんなに 理不尽な状況に 激怒してたのに
あっ そういうことか 今 自分にしか できないことがある
レックスの加戦? 違う
人々の加戦?違う?
そう! まだ生きてる人々の 安全を確保することだ!)
続く






