4歳離れた兄は優秀でした。
兄は開成中学に進学しました。
そこで深海魚になりました。
私の兄の時代のことでございますから
当時は深海魚なんて言葉はなく、落ちこぼれという
言葉でくくられる時代でございました。
兄は中学二年のときに地元の公立中学に編入いたしました。いろいろと口にできぬ屈辱があったのかもしれません。ある時を境に兄は部屋から出でこなくなりました。今では引きこもりなどという言葉がありますが、当時は「ノイローゼの登校拒否」と言われていたことが記憶に残っています。
成績優秀で聞き分けの良い兄は、ノイローゼの登校拒否となり、両親は兄の育て方に行き詰まり、私が14のときに、とうとう兄を放棄したのです。
高校にも進学せずに、のらくらと日々を経た兄はまもなく二十歳になろうとしていました。
精神病の療養という名目で兄は祖父母の家に移り住みました。私が高校一年の終わりに兄の死を伝えられました。当時は病死と教わりましたが、後に自死であったことを知りました。
兄は世間的に見れば優秀であったはずですが、開成で落ちこぼれたことで自己肯定感、幸福感が激しく失われたのではないかと今でも思うのです。
今日が兄の誕生日でした。開成なんぞにいかなければ
今日という日に年を重ねた兄に会うこともできたかもしれないと思うのです。
親の覚悟が曖昧なまま中学受験に臨むと私の兄のような形の結末も起こりうるのです。