〇〇しかない。
この言い回し。最近、流行ってますよね。生徒が書いてくれる受験体験記にも「マジで感謝しかありません」という表記が多数見受けられます。
この言葉が爆発的に流行する前に「〇〇しか勝たん」という若者言葉が流行ってました。そこにイチロー選手が引退する際の会見で「感謝しかありません」を使ったことで世の中の人々が「自分も使ってみよう」と流れていったのではないかと推測します。

私は「言語は世情に合わせて変遷して然るべき」という立場を取っているので「その言葉遣いはおかしい」と注意して回る「言葉狩り警察」は嫌いです。自分の気持ちがしっかりと相手に伝わりさせすれば、言葉遣いは正直どうでもいいと思います。むしろ文法を無視した表現の方が相手の心を打つ、琴線に触れることもありますからね。


ただ、「それが100%正しい言葉遣いなのか、違和感を覚える人もいる表現なのか」を把握したうえで、場面と相手に合わせてコントロールする能力は生徒たちに身につけてほしいなと思います。

文法的には誤りです。

では解説をします。

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1、「しか」は文法的には副助詞または係助詞に分類されます。

2、副助詞(係助詞)は特定の意味を文意に副える働きをします。

3、「しか」が文意に副える意味は「限定 限る」です。


「しか」は文末の打ち消し表現とセットで用いられ、限定的な意味合いを文意を副える言葉ということです。


100円しかない

(もっと上限を増やしたいが)

 100円に上限が限られている

文句しか言わない

(他の行動も取るべきだが)

 文句を言うという行動に限ってやる

これが「しか」の本来の使い方です。従って


感謝しかない

(感謝以外の感情も持ちたいが)

 感謝という感情に限られている

 感謝以外の感情を持ち合わせてないです。

 感謝以外はするつもりはないです。

 感謝しとけばいいんでしょ。


と、場面や相手の解釈によってマイナス表現に捉えられることも想定されうるわけです。まあ、あんまりないとは思いますが。例えば「この会社に採用してもらえて感謝しかないです。」といったときに「いやいや感謝するばかりじゃ困るよ、しっかり頑張ってよ」と思う先輩や上司はいるでしょうね。


友人の歯科医の笑い話ですが

急な飛び込みの患者さんが来て、歯痛に苦しんでいるのを放っておけず、2時間待ってもらって診察をしようとしたところ、「今日は本当に感謝しかありません」と言われたそうです。お金持ってきてなかったらしいです。


「やばい」はかつて開成中で出題された



2010年頃の開成中学校の問題ですね。

基本、中学受験塾では文法を深堀しませんので、「ウ音便」の音便変化を既習の生徒は受験生でもほとんどいなかったはずですから、会場が一瞬ざわついたのではないでしょうか

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「ありがとうございます」という言い方がありますが、これは「ありがたい」という言葉に「ございます」をつけて、ていねいな言い回しにかえたものです。

問1 次の①~⑤を、「ありがとうございます」にならって、それぞれ「ございます」をつけた言い回しにしなさい。

① めでたい  ② せこい  ③ さむい  ④ やばい  ⑤ おおきい

問2 問1の中で実際の会話で使うにはふさわしくないものをすべて選びなさい。

問3 なぜふさわしくないのですか。理由を答えなさい。




私はこの問題をかなり気に入っているというか秀逸だなと感心しているのですが、ウ音便の知識がない状態で、形容詞が ございます に接続する形を考えるわけです。開成中を受験しようかという子たちですから、例示されたありがたい→ありがとう をもとに1〜4はクリアしてきそうですよね。(開成の国語は毎年、算数偏重型の子供を篩にかける役割を果たしますので、例から類推できない国語力の子はここでアウトです。)ただ、5の「大きい」を「大きゅう」と変化させられる子はなかなかいないのではないかと。親戚のお年寄りから「おおきゅうなったなー」と声かけられコミュニケーションをとった経験とか時代劇の「苦しゅうない」とか「悲しゅうございます」のようなセリフに興味をもっていないと変化が思いつきませんよね。


からの〜

問2、問3です。この2つは連動問題ですね。


問2の答えは、2せこい と 4やばい です。


ございますを使う場面を想定できているか問うています。「ございます」を使うということは

問3はこれを上手に文章にできるかを問われています


ございますは相手に丁寧さを伝える言葉なのに、せこいという悪口ややばいという流行語と一緒に使うと丁寧なのか乱暴なのかわかなくなるから。


ぐらいの解答なら及第点をもらえると思います。


使ってはいけません ではない

よくある悪い例ですが(我が家もですが)

親が本来的でない言い回しや流行語を日常生活で使っているのに子供には使わせないというやり方。暴君タイプです。これは最悪。

次に親も使わないが子供にも使わせない。これは言葉狩りタイプ。これも良くない。

良いやり方は「親は使わない」が子供が使うのは許容する。ただし、本来的な使い方を伝えたり、どうして使わないほうが良いのかを伝えたり、一緒に考えたりを繰り返す。これが最適です。


誕生日プレゼントをヒットさせた父大仏に娘大仏が


えー、きゃぱい。今回のたんプレ、マジハオなんだけどー。パパ、しごでき〜。


と言ってました。メモった上で、解説を求め、通訳してもらいました。


お父さんの誕生日プレゼントに選び方は大変、優秀で、もらってうれしいです。感動しました。


とおっさん語に通訳するなんて想定で修正の練習をしてもらうとまあ、笑いながら取り組めます。