少し前の話だが

 
朝、緊急の要件があり
 
駅のホームでマネージャーに電話をしていた。
 
ホーム自体が相当にガヤガヤしていたので、
 
私もそこそこのボリュームで話していたように思うのだが、
 
しばらくして横にいたお爺さんに肩を叩かれた。
 
 
やばい、声がデカ過ぎたか?
 
 
と思い、慌ててマイクを押さえながら
 
「あ、すみません」と謝ったのだが、
 
お爺さんは何故かニコニコしながら
 
「あんた、観光しに来はったん?」
 
と私に尋ねた。
 
 
いや、明らかに違うやろ。
 
 
平日の通勤時間帯の駅で
 
いかにも今から出勤しますと言わんばかりの出で立ちだったので
 
どのアングルから見ても観光客ではなかったように思うが、
 
まぁ私は喋る時のイントネーションが
 
この辺りの人とはややズレているので、
 
電話での喋り方が余所者感丸出しだったのかもしれない。
 
要件はそれだけだったようなので、
 
今度は気持ち小声で電話に戻ろうとしたのだが、
 
またしてもお爺さんが、今度は
 
「あんた、学生さん?」
 
と聞いてきた。
 
 
私 「いえ、違いますが…?」
 
お爺さん 「私はこの辺りの出身なんやけども、学生の頃に〇〇に引越してもうてなあ。」
 
私 「は、はぁ…。」
 
お爺さん 「せやけどたまにはここの神社にお参りせな思ぉて、今日は電車で来たんや。」
 
私 「そ、ソウナンデスネ…。」
 
お爺さん 「あんたも今から〇〇神社に観光に行くんか?」
 
 
いや、行きませんけど。
 
 
さてそろそろ存在を忘れ去られていそうだが
 
実はこの時電話の向こうでは
 
まだマネージャーが待っていた。
 
マイクを押さえたスマホを持っているので、
 
明らかに通話中だと分かるはずだが、
 
何故かつらつらと身の上話を止めないお爺さん。
 
とは言えこれ以上上司を待たせる訳にもいかない私は
 
やんわりとお爺さんに
 
ちょっと仕事の電話中なので後にして頂けますか
 
と伝えてみることにした。
 
 
お爺さん 「お友達と電話してたんやな。えぇでえぇで、先にそっちと話しや。」
 
 
 
いや、あんたの許可いらんけどな。
 
 
 
その後このご老人は何人か他の人に声をかけていたようだが、
 
そこでも若干不審がられたり、避けられたようで
 
結局一人ホームから去って行った。
 
ひょっとして話し相手や
 
一緒に神社に行く相手が欲しかったのだろうか。
 
大分謎が残る。