ホリーさんと私が暮らしているのは人口4000人ほどの小さな町で

四方を大草原に囲まれちょっとした陸の孤島のような場所である。

住んでいる住民の多くは代々ここに住んでいる人たちばかりで

若者が出て行くことはあっても、余所から人が入ってくることはあまりないらしい。

当然住んでいる住人同士は数十年来の顔見知りであることも多く

誰と誰が知り合いでもおかしくない小さな世界。


例えば私の知人Sは元グラニーの同僚であり、さらに私の別の知人Aのお茶友達なのだが

この知人Aはこれまた私の知人Jの向かいに住んでいて面識がある。

このJと私の共通の知人であるW

ジルとミック
(ダッダ氏妹弟)さらにはチハナ嬢とモモカ嬢の保育園時代の先生であり、

さらにWの息子は何故かAと面識があり、Wの娘はなんとモゥの友人である。

そのモゥが以前

「あの家の住民、いつも道路ぎりぎりで日光浴してて轢きそうで怖いんだけど・・・」

と言っていた家は実はチハナ嬢モモカ嬢の幼馴染ケイティの家だったりするので

いかに小さな社会かお分かり頂けただろうか。

ゆえにこの町では

「人の悪口をみだりに喋ってはならない。何故ならあなたが今話しかけているその人は

あなたが非難している人間の家族や友人や恋人である可能性があるからだ。

という諺が存在する。




さて、言うまでもないがこの町で東洋人は希少種である。

というかここに10年以上暮らしていらっしゃるホリーさんの知名度があまりに高い為

この町に稀に出現する東洋人はすべてホリーさん扱いされる。


外を出歩けば知らない人から

「こんにちはホリー、最近どう?」


と声をかけられ、逆に私が教会で西洋人に混じって賛美歌なんぞ歌おうもんなら

ホリーさんが知人から

「この間聴きに行ったわよー!素敵だった!」


と意味不明な言葉をかけられる始末。

なんせ彼ら、東洋人の顔など識別できない。




そんなこんなで常日頃からホリーさんに

「頼むからT社の自動ドアに挟まれたり沼に落ちたりしてくれるな」


と釘を刺されている私。

なんせそんな現場を目撃されようものなら

全てホリーさんの犯行になってしまう。





さて先日いつものようにT社で買い物をしていた時のこと。

T社の一角には小さいながらアジア系の食品を扱っているエリアがあり

そこに米も売られているのだが

ここで私、なんとうっかり手を滑らせて米の袋を足元に落とし

さらにその衝撃で袋が破裂、

中の米を通路中にぶちまけるというアホをやらかした。


慌てて店員のところにすっ飛んで行き平謝りで片付けてもらったのだが

T社に買い物に来ていた町民達にすでにばっちりこの現場を目撃された後。

こんな小さな世界では箝口令など敷けるはずもない。

「ホリーがT社で米をぶちまけたらしい」


という噂が

せめてグラニーの耳には入らないでくれと願う今日この頃である。