現在私が勤めている職場は

オーナー夫妻とその娘2人、そしてその婿が取り仕切る一族経営のホテルのレストランで

この短気かつ口の悪い一族のお陰でなかなか従業員は苦労が絶えないのだが

その中でも特にこのオーナー夫妻の孫娘(15)はいろいろとやばい

人様のお孫さんを形容するのに適切な表現でないことは重々承知だが、

とにかく、やばい



まずこのお嬢様、なんとも人の好き嫌いが激しく

自分の気に入った相手以外には挨拶をされようがガン無視である。

オーナーの孫娘である以上こちらも邪険にはしづらいので

一応毎度会う度に声はかけるのだが、

彼女の中で下々の民など相手をするに足らないのだろう。

今まで一度も返事が返って来たことはない。



そしてこのお嬢様、驚く程空気を読めない。

というか、多分読む気もさらさらない。


周りが忙しく駆けずり回っていようがお構いなくスタッフエリアを歩き回り

しょーもない個人的な用事で仕事中のスタッフをあごで使う。

先日など私が目が回りそうな勢いで駆け回っていたところを突然捕まえ

「ねぇちょっと、おじいちゃん(オーナー)はどこ?」


と言うので

「存じ上げません」


と答えれば舌打ちをされる始末。




ありがとうとか呼び止めてごめんとか言えんのかい。





さて、このお嬢様の一番のお気に入りは例の私の滑舌の悪い上司(料理長)である。

正直彼はそんなに絡んで楽しいタイプでもないと思うのだが、

長い付き合いだからか、やたらと仕事中の上司に絡みたがるお嬢様。

しょっちゅう厨房にやって来てはこの上司を死ぬほどイライラさせているのだが

普段から周りに悪態を吐きまくっている彼も

流石にオーナーの孫娘には表面上優しく接せざるを得ないらしい。

大人数のパーティのメインディッシュの調理にてんてこ舞いになっていようとも

彼女が

「ノドが渇いたー!」


と言えばレモネードを開けてやり

「お腹すいた―!」


と言えばチップス(フライドポテト)を揚げてやる。

あれを見ていると私なんぞむしろ彼女の眼中になくて幸せである。




さて先日、突然16名のグループのディナーの予約が入り

厨房はまさに「戦場」としか言いようのないカオスだったのだが

ここで空気を読まず、お嬢様登場。

秒刻みで動き回る上司を捕まえ、開口一番に

「お腹減った。何か作って。今すぐ。」


である。

幸い先ほど別のスタッフが注文を取り違えて用意してしまったサンドイッチがその辺に放ってあったため

「そこのサンドイッチ、食べてていいから。」


とお嬢様を軽く突き放したのだが

サンドイッチを見たお嬢様は即座に

「あたしこのサンドイッチ好きじゃないの!チップスが食べたいから作って。今!」


と料理長に命令。

流石オーナーの孫娘、向かうところ敵なしである。


とは言え本気で手が離せない上司。

「これが終わったらすぐに作ってやるから。」

とお嬢様をなだめようとするのだが、なんせ修羅場真っ只中、なかなか手は空かない。

今度はそれにイラついたお嬢様がほぼ一分おきに

「ねぇ、まだー!?」


と上司に催促をし始め、それにイライラし始めた上司のせいで徐々に厨房に緊迫した空気が漂う。

頼むからもうちょっと良い子で待っててくれ・・・・・!


と願う私の祈りも虚しく

ついにこのお嬢様、上司に向かって


「ねぇ、ちょっと!貴方、あたしをイライラさせてるって自覚はあるの!?」



と言い放った。







すげぇな、この女・・・・・・・。








これが3歳4歳の子どもならまだ理解しよう。

だが15歳でこれは些か甘やかされ過ぎではないのか。

というか実はこの現場には

キッチンの総責任者でオーナーの娘である彼女の母親もいたのだが

自分の娘の傍若無人っぷりを見ていたはずの彼女は

「こーら、良い子にしててちょうだいよ。」


と軽く窘めただけだったので、彼女による躾はもはや期待しない方が良いのだろう。





今後このアホお嬢さまが一体何をやらかすのか

不安であると同時に少々楽しみにもしている私である。