英国の肉は固い。
その固さたるやゴムの如し。
といっても肉自体の質が悪い訳では決してなく
大体英国人の適当過ぎる調理のせいである。
さて、我が家でもよくいろいろな肉料理を作るのだが
私は固くてバサバサの肉が
蕁麻疹が出るほど嫌いであるため
いつも調理前に自家製塩こうじやらなんやらで3時間程付け込んでおく。
他にも筋切りをしたり叩いて伸ばしたり何時間も煮込んだりあの手この手を駆使。
我ながら食にかける執念は凄まじい。
しかしゴム長靴のような肉に慣れている料理音痴な英国人には
私のこの苦労がさっぱり分からないらしく、
ブレンやモゥは柔らかい肉を口にするたびに
「この肉柔らかいんだけど、生なんじゃないの?」
とのたまう。
4時間じっくりことこと煮込んだじビーフシチューが
生であってたまるか。
「ちゃんと加熱調理済みだ、問題ない」
と私が念を押すと
今度は
「へぇ、さすがうちの肉は美味いなぁ。」
である。
牛農家である我が家の冷凍庫には
文字通り 『産地直送』 の牛肉がひしめいているのであるが
私がどんなに手間暇かけて調理しようとも、
褒められるのは食材そのものであって
調理した人間には何の功績も認められないらしい。
さすが、
『素材で食え!』
を地で行く英国。
調理には手間がかかるという発想自体がもはや皆無なのである。
ちなみに同じ肉でモゥがステーキを焼くと
大抵 化石のような黒いブツ が錬成されるためブレンは不思議がっているが、
これはモゥが愛用している怪しいレシピ本に
『ステーキは両面合わせて40分焼け』
と書いてあるからである。
明らかに焼き過ぎじゃね?
そもそも『ステーキを焼く』という単純な行為に何故レシピが必要なのかも
私にはさっぱり理解できないのであった。