バイトの帰りなどよく話をしながら歩いた。銀座からホームグランドの新宿目指して意味もなく歩いてゆく。何を話したのかも覚えていない。ただ飯田橋当たりの暗闇で、まだ高架でなかった中央線が横切る明かりを見て、次の駅からは電車に乗ることにする。
昔は銭形平次だって八丁堀から内藤新宿まで軽く往復したのに、なんて笑いながら。
出てくるおかずは今日はいわしが付いたご馳走だね。甘い煮豆、豪勢だ。普段は菜っ葉とか大根の煮物とかそんなもので歩き回っていたんだから大したものだ…なんて感心しながら。
本当はまもなく卒論の題目も決定しなければならない。就職難の時代卒業後のことも考えなければならない、だからくらい夜道は現実逃避の場所だったかもししれない。
「鬼平犯科帳」でもよみたくなった。
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