伊勢神宮に所属する125社の一つ、御塩殿(みしおどの)神社がある。
文字通り、神宮の祭典に使う御塩をつくるところだ。
『ひととき』の連載のために、撮影に行った。
二見町の旅館街から1キロほど離れた静かな海辺にある。といっても、入口である鳥居は集落側に立っているので、海は見えない。ただ森が広がる。
今回は、鴨長明がテーマなので、長明が詠んだ和歌にちなんで、
松の木を映したかった。
祭典の日か、塩作りをしているときに来るのがほとんどなので、
人っ子一人いないときは珍しい。
境内は静かだ。松の木は数本あった。いずれも高い。
裏に回って、御塩焼所へ行く。ここへくると、踏みしめる大地が、土から砂地にかわる。足底が軽やかな感触に変わる。
そして、目の前には海が広がる。
ここは松が多いが、植樹された小さなもの以外は、
皆、すくっと背が高い。
もちろん、庭木の松とは違うが、海岸べりで見られる白砂青松の松は、もう少し、すんぐりして斜めに立っているのに。
なにか、違うのだろうか。松にも黒松が男松、赤松が女松があるが、
ここのはどちらだろう。おそらく、海岸沿いなので男松だろうか。
平安時代初期に生きた長明が松を見たのは、もう800年以上前。
松は代が変わっているだろうが、その子孫と考えていいのだろうか。
あるいは、御塩殿の位置も変わっているかもしれないが、いずれにしろ二見の海岸沿いには違いない。
神宮というと、神宮杉の杉や檜を思い浮かべるが、
御塩殿いたっては、松に限るのである。