自己愛が強い人の特徴や行動パターンを分析した著書『病的に自分が好きな人』(幻冬舎)で、榎本氏は現代を「自己愛過剰社会」と表現している。その原因の一つが、安易に発信できる“道具”の発達だ。 

 人は誰しも少なからず、注目されたい、認められたいという欲求を持っているが、昔は発信する権利を得るには努力が必要だった。本を書いたりテレビに出たりしたければ相応の実力を身につけ、他人の承認を得なければならない。インターネットの普及以降はその状況が一変し、誰もが発信力を持ったことはよく指摘されるが、同氏は「自撮りブームに直接寄与したのはスマホ、つまりデバイスの進化である」と考える。 

「特に日本は、あからさまな自慢や自己主張を良しとしない文化。何かを自慢したい衝動に駆られても、パソコン時代なら帰宅するまでに冷静になって“みっともないからやめよう”と判断できましたが、スマホはいつでも衝動的に発信できてしまうため、冷静な判断を差し挟む間がありません。いわば“理性を通さない自己愛”がネット上に溢れ、人々がそれに慣らされて、自撮り公開への抵抗感も薄れたのが今の状況なのではないでしょうか」(榎本氏)。 

 確かに、「皆がやってるから」という心理で自撮りを投稿している人は多そう。では、そもそも何のために? ヒントとなるのが、本書に登場する「自己呈示」という心理学用語だ。これは自分の見せ方を操作的に演出することを指す。自己愛の強い人は自己呈示のためのアイテムや行動パターンを求める傾向が強く、「できる人の魔法の習慣」「有能なビジネスパーソンの必須アイテム」「モテる男が選ぶ店」といったハウツー本や雑誌の特集タイトルは、その心理を狙ったものだという。 

「自分の印象を演出するのは悪いことではありません。ただ私が懸念しているのは、ネット上の安易な自己呈示に熱中するあまり現実が疎かになること。多くの人にとって、仕事や勉強やスポーツで評価されるよりもネットで目立つ方が手軽です。“努力しないで注目されたい”という欲望を、自撮りをはじめネット上の発信で簡単に満たせるようになった結果、自分が目立つための“チャンス”を探すことに執着してしまい、客観的な視点や他者への配慮がなくなる人が増えていると感じます」