驚きの朝の出来事
養護教諭をしていたころ。
朝の始まり、いつものように保健室で仕事をしていると
廊下を通り過ぎる足音が聞こえました。
ふと顔を上げると、中学3年生のAくんが歩いてきます。
その瞬間、思わず目が釘付けになりました。
耳たぶに――鉛筆?
「なんで鉛筆?え?見間違い?」と心の中でつぶやきながら、もう一度よく見ます。
やっぱり鉛筆が刺さっているのです。
きっとこのあと生徒指導の先生に呼び出されるだろうな、と直感しました。
案の定、ほどなくしてAくんは呼び出され、
怒られた様子で教室には戻らず、そのまま保健室へやってきました。
いつも通りの時間から
Aくんは普段からよく保健室に足を運ぶ生徒で
この日もいつものように黙って椅子に腰掛け
机の上のものをいじりながら時間を過ごしていました。
私は特別な声かけはせず、自分の仕事をしながら彼の様子を横目で観察します。
しばらくすると、呼吸や動きが少しずつ落ち着いてきたのがわかりました。
そのタイミングで、私はようやく声をかけることにしました。
「びっくりしたよー!耳に鉛筆刺さってるんだもん!自分でやったの?」
「え?まぁ、自分でやったけど…」
「わぁー!痛くなかった?? 私は無理だわー」
私がそう言うと、Aくんは思わず吹き出しました。
「やっぱ先生、変だわ!ふつう“なんでやったの?”って聞くじゃん。」
笑いながらそう言うAくんの声には、どこか安心したような響きがありました。
そこから会話は少しずつ深まり、
「昨日、親とケンカしてさ…」
「なんか色々うまくいかなくて」
と、怒りやモヤモヤの背景を自分から話してくれるようになったのです。
もしあのとき私が「なんでやったの?」と理由を問い詰めていたら、
この会話はきっと始まらなかっただろうと、今でも思います。
行動の裏には“そのときの気持ち”がある
あの日のAくんが耳に鉛筆を刺して登校してきたとき
最初はただただ驚きました。
でも話していくうちに
前日の親とのケンカや、いくつもの“うまくいかないこと”が重なって
気持ちがいっぱいになっていたことがわかりました。
こういうふうに
思春期の子どもは自分の気持ちをうまく言葉にできないとき
行動や外見の変化で表すことがあります。
怒りや悲しみ、寂しさや不安…。
それらが「どうせわかってもらえない」と思ったとき
突飛な形で出てくることもあります。
もしかしたら、あなたのまわりにも
“あの行動の裏にはこんな気持ちがあったのかも”と
気づいた経験があるのではないでしょうか。
理由よりも“体験”や“感情”への興味を示す
あの日の保健室で、私がAくんにかけた言葉は
「痛くなかった?」
「私は無理だわー」
でした。
「なんでやったの?」ではなく
その瞬間の体験や感覚に興味を向けた言葉です。
一般的に、「なんで?」と理由をたずねると
責められているように感じて心を閉ざしてしまう子も多いです。
でも、「どうだった?」「びっくりしたよ」のように
出来事や感情に寄り添うと、防御の壁が下がりやすくなります。
こんなふうに、言葉の選び方ひとつで
その後の会話の景色ががらりと変わることってありますよね。
安心感が本音を引き出す
保健室に来たAくんは、しばらく黙って自分の時間を過ごしていました。
私は急がずに見守り、落ち着いてきたタイミングで声をかけました。
その結果、耳に鉛筆を刺した理由ではなく、そのずっと奥にあった
「むしゃくしゃした気持ち」
「うまくいかないもどかしさ」
を話してくれました。
思春期の子どもが本音を話すのは
「この人には話しても大丈夫」と感じたときです。
安心できる空気があるからこそ、心の奥にある言葉が出てきます。
そんな瞬間に立ち会えると
「あぁ、話してくれてよかった」とこちらの心も温かくなるものです。
子どもの行動の理由を追及する前に
Aくんとのやりとりから改めて感じたのは、
「なんでやったの?」と理由を探る前に
その子がどんな体験をして、どんな気持ちだったのかに興味を向けることが
本音への扉を開く」ということです。
本音を引き出す3つのステップ
じゃあ、実際にどうすればいいのか――
私が意識しているのは、たった3つのステップです。
1:まず“待つ”
びっくりするような行動や出来事でも、まずは安全を確認して自分も深呼吸。
すぐに問い詰めず、落ち着く時間を持ちます。
2:“興味のひと言”をかける
「痛くなかった?」「びっくりしたよ」「そのとき、どんな感じだった?」など
相手の体験や感覚を知ろうとする言葉です。
評価や説教は、あとに置いておきます。
3:落ち着いてから“確認と合意”
「今話す?後でもいいよ」「必要なら一緒に誰かに伝えよう」など
選択肢を渡すことで、自分から話す姿勢が生まれやすくなります。
学校でも家でも地域でも使える声かけ
これは学校だけでなく、家庭や地域など、子どもと接するあらゆる場面で使えます。
たとえば――
-
急に髪型や服装など外見が変わっていたりしたとき
「おっ、雰囲気変わったね。どんな気分でそれにしたの?」
-
遊びなど様々な場面で、ルール外のことをしていたら
「びっくりしたよ!やってみてどうだった?」
-
友達や誰かとケンカしてイライラしていたら
「大変だったね。いちばん嫌だったのはどんなこと?」
心のドアを閉ざしやすい言葉と置き換え例
逆に、つい言ってしまいがちだけど、相手が心を閉ざしやすい言い方もあります。
-
「なんでそんなことを?」 → 「どうだった? そのとき」
-
「やめなさい/ダメ」 → 「まず安全確認しよう。その上でどうする?」
-
「説明して」 → 「一番伝えたいところからでいいよ」
こうやって言葉を少し置き換えるだけで、会話の雰囲気はがらりと変わります。
そして、その小さな変化が
子どもの「話してみようかな」という気持ちにつながっていくんですよね。
関係を変えるのは、言葉の選び方
子どもの行動の裏には
想像もしていなかった気持ちが隠れていることがあります。
ときには、それが不器用な形で外に飛び出してしまうことも。
「どうして?」と急いで理由を聞きたくなる瞬間もあるけれど、
まずはその子の“感じたこと”や“そのときの空気”に目を向けてみる。
それだけで、心の距離が近づくことがあります。
学校でも、家でも、ほんの数秒でできること。
その小さな一歩が、「話してもいいかも」という安心を
子どもたちに感じてもらうことができます。
今日の問いかけ
最近、子どもの言動に驚いたことはありましたか?
そのとき、行動の奥にある気持ちに目を向けたことはありますか?
今日できる小さな一歩
今日、子どもの言動に「えっ!?」と思ったら
①待つ→②興味のひと言→③確認と合意を試してみましょう。
noteもどうぞ💕
もっと子どもたちの気持ちに寄り添う関わり方や、日常でできる小さな工夫を知りたい方は、noteもどうぞ👇
📘 こちらから
今日のサスケさん💕
公園できのこ🍄🟫発見!クンクンクン…
かわいい💕


