先日のブログでも触れましたが、間違ったクマ治療「過剰脱脂」の後遺症によって人生が暗転してしまった被害者の方のインタビュー動画がYouTubeにアップされています。
この動画に対する思いは、こちらのブログで一度記載しています。
もしよろしければこちらもご覧ください。
再生回数がかなり伸び、コメントも多数書き込まれており、その関心度の高さが垣間見えます。
今回は、動画の内容とともに、書き込まれたコメントについても少し触れながら、感想を追記したいと思います。
「アンサー動画を出せ」という声について
動画のコメント欄には、
「執刀医はアンサー動画を出せ」
という意見も見られました。
しかし、動画内では医師名もクリニック名も特定されていませんので、その状況でアンサー動画を出すという行為は成立しません。
むしろ、もし誰かが反応したとしたら、それは動画で語られている後遺症や術後対応に「心当たりがある」と自白するのと同義です。
自首と言っても良いかもしれません。
「顔を晒せ」という“罵声”
もちろん、動画の内容が事実であるならば、当該医師やクリニックを責めたくなるお気持ちは痛いほど理解できます。
私がもし被害者の立場であったら、冷静に振る舞える自信はありません。
コメント欄には、「被害者が顔を出さなければ、言っていることが正しいか判断ができない」という趣旨の書き込みもありました。
確かにそうです。
しかし、ただでさえ誰にも会いたくなくなるほどに酷く傷ついたお顔を、誰もが閲覧できるネット動画に晒せという声は、重い心身の苦しみの中で勇気を振り絞って出演された被害者への二重の蹂躙に他ならないと思います。
書き込む人々は、落書きのように、独り言のように書き込んでいるかもしれませんが、当事者にとってはあまりにも重く鋭い刃となります。
私も書かれる立場ですので、痛いほどわかります。
人生を変える医療の力 〜良くも、悪くも〜
動画の内容と似たような事例の報告・相談は、全国の消費者センターにも数多く寄せられています。
これは個人攻撃で終わる話ではなく、美容医療業界が抱える構造的な問題として受け止める必要があります。
美容医療は、サービスである以前に医療です。
医療というものは、それはそれは絶大な力を持っています。
良い方向に人生を変える力を持つ一方で、誤った判断や手技が人生を大きく狂わせてしまう可能性もあります。
このような医療の素晴らしさと怖さを、私は20年の診療で身をもって感じてきました。
だからこそ私は、身をわきまえ、謙虚に、誠実に、医学的に正しい治療だけを積み重ねたいと思っています。
医学部卒業後にすぐ美容業界に飛び込む「直美」が昨今話題になっていますが、私は直美の先生方に対して、技術はもとより経験の少なさを危惧しています。
人の人生を左右するという医療の怖さを知らない若者が、軽い気持ちで美容でメスを持ったら…
重みを知るメスの動きと、そうでないメスの動きは同じようで違う。私はそう思います。
そして、万が一の際のリカバリー能力。
仮に技術が優れていたとしても、全てが全て最良の結果になるとは限らないのが、医療の怖いところ。
ここでリカバリーできるかどうか?というも、数多の経験があってこそ。
今後の美容業界は、発展とともに脆弱性が危惧されます。
動画のような事例を少なくするためにも、美容業界全体の構造の見直しは必要であると思います。
今回の動画は、美容医療に携わる全ての人間が正面から向き合うべき重いテーマであると感じました。
私自身も、今一度、自分の姿勢を見直す大切なきっかけにしたいと思います。
