I S A エルサルバドル 2024
I S Aとは国際サーフィン連盟の略で今年で60周年をむかえる長きサーフィン大会
各国は国を背負って戦う為、普通のサーフィン大会とは違い、みなさん燃える、燃える、国旗を振って自国の威信にかけて戦うのだ。
一年に一回あり、最近ではエルサルバドルで連続開催している。
エルサルバドルは1980年代に政府と左翼ゲリラの間で内戦が続き、戦火を逃れた大勢の住民がアメリカのロサンゼルスに脱出。
その先のロサンゼルスでは若者達がギャングを結成し、90年代になると母国に強制送還されたギャング達は、商売する住民からみかじめ料をとったり、残虐な方法でたくさんの住民が殺された過去がある。
その後、ブケレという人物が大統領に就任すると警察がギャングをことごとく捕まえ、監獄に入れたと言う。
少しでも怪しいものを監獄に入れた為、今現在、刑務所に入っている25パーセントの人達が無罪でありながら収監されていると、泊まった先のホテルのオーナーが言っていた。
今現在は治安が良く、世界一治安が悪い国からアメリカ大陸ではカナダに次ぐ治安が良い国となった。
波は良く、世界的に一級ブレイクが78も点在する海岸線を持っている為、観光業の一貫としてサーフィンを誘致している。
ポイント前の土地の値段は跳ね上がり、サーフィンの町としてたくさんのサーファーが世界各国から訪れる。
さて、本題に入ろう。
今回は2028年のロサンゼルスオリンピックにおいて、ロングボードが種目に入る可能性が高く、その準備として自分はコーチに任命された。
今現在日本最強のロングボーダー4名、浜瀨 海、井上 鷹、吉川 広夏、田岡 なつみ 。
今大会においてこの4名をコーチングするミッションを依頼された。
この4名は今までに面識はあるが挨拶程度でよく知らない。
ただ、国内のツアー戦でジャッジを2年ほどしていたことから、この4名のライティングは熟知している。
僕は最初は様子を見ることを決め、あまり口出しはしないように心がけた。
まずは性格を分析し、その人にあった助言を考えようと思った。
ホテルからポイントまでは政府のお墨付きの送迎バスに乗って10分ほど。
試合3日前に現地入りしたので、あまり時間がなく、朝は4時半に起床し、日の出前に入水する毎日。
僕はポイントの前の崖の上に構える小さなレストランの半分ほどを貸し切ったチームジャパンの拠点からポイント全体を隈なく観察していた。
そして、1ラウンド、2ラウンドの練習を終え、ある特徴に気づいた。
それは、たくさんの選手が奥取り合戦に熱くなっている最中、左に来るいい波をたくさんの海外選手が見過ごしていた。
じつは僕は現役時代、世界の強豪相手と戦うときはセットの良い波は絶対に渡さない戦法を貫いた。
世界の強豪は父親がサーフィンしていて、5歳ぐらいからサーフィンを始めた者がゴロゴロいて、高校生から始めた自分が勝つにはその戦法しかなかったからだ。
そのいい波が入ってくる周期を分刻みでノートにつけて自分なりにいろいろ分析をしてみた。
だいたい3分から5分おきにセットが来て、右に左に振り分けられ、その割合はおよそだが、右2に対して、左1だった。
もちろん、潮の変化でブレイクポイントは変化するのだが、引き潮の時は右奥は波がワイドで抜けられる波が少なく、左で待つのが有効で、上潮の時は右と左の中間が良く、満潮時は一番右が良いという特徴を掴んだ。
もちろん、選手4名も自分がいなくても肩の張った波が点が出ることは理解していてあくまでも確認の作業だ。
そうだ! これを図に書いて説明しようと、選手4名に最初のアドバイスをした。
サイズが上がった時の特徴
練習3日間の間、沖から筋張ってくるセットが来るたびに、この波は良い、この波は良くない、このアングルは肩が張っている、このアングルは良くないとか、何度も何度も何度も独り言のように僕はつぶやき、選手に理解を求めた。
浜瀨 海 セミファイナルの敗者復活戦であと一本決めきれず惜しくも5位
もし、ファイナルに入って2本まとめれば、優勝する勢いだっだ。
井上 鷹 なんでも100%に攻める鷹には上半身の軸をぶらさず、ミドルセクションで一度、力を抜き、そしてギアを上げ、フィニッシュを決めてと助言した。
試合が始まると予想が的中し、海外選手は奥取り合戦に熱くなるさなか、ちょっと左に来る肩のはった波をたくさんの選手が見過ごしていた。
もちろんその良い波を把握していた選手もいた。
それは、フランス、ブラジル、ハワイ、オーストラリア、ペルー、フィリピン、等々だ。
次に神経を使ったのは、20分と言う短いヒート時間で、その肩の張った波が何本来るのか?と言うことだった。
いかんせん、プルアウトからピークまで、パドルで5分はかかる、しかも、ライディングは1分ほどだ。
あまり左に来るセットの良い波にこだわると時間ロスで命取りになる。
それと肩のあまり張らない波に手を出すと点数が伸びず、しかも時間ロスで命取りになることも何度も助言した。
そのへんの試合の組み立て方は選手にまかせた。
選手4名はそれぞれの戦い方があって、僕はあくまでもアドバイスと確認の立場を貫いた。
初陣はいつも浜瀨 海からスタートし、高得点、高得点の連続で、キャプテンとして日本チームを引き締めてくれた。
次に井上 鷹が続いた。
序盤の鷹のヒートは少し波数が減り、コンディションが不安定になりながら、最後の0.5秒のブザービートで勝ち上がった時は、ホッと胸を撫でた。
才能豊かな鷹が地獄の敗者復活にまわり、体力を消耗することだけは避けたかった。
男子二人の特徴は、ショートボードがトッププロ並にうまく、自分達が活躍した25年前とは異質だ。
ショートボードが上手いとは、波の崩れ方を熟知していて、常にカールから離れることなく最大限にその波のパワーを吸収してスピードを保持することが出来る技術を二人は持っている。
その肩の張ったいい波を掴むポジションニングを意識し始めた二人は、ジャッジスタンドの目の前まで綺麗に乗り繋ぎ、クライマックスのショアブレイクの最後まで乗り継ぎ高得点を次々と獲得していった。
当然男子二人の戦い方を見ていた広夏、なっちゃんもその肩の張ったジャッジスタンドまで届く良い波を意識しはじめた。
女子二人の特徴は、若い時から海のそばで育ち、サーフィンを始めたのが中学生?高校生の時からで、両親のサポートも絶大だ。
海外経験も豊富で、英語も理解していて、吸収力が凄い。
海外の試合でも上位に食い込む実力者で、サーフィンも安定している。
この二人もいい波を二本掴めばセミファイナル
ぐらいまでいくと思い、あまりアドバイスはせずに、とにかくその時間帯で良い波がヒットする場所を少し確認した程度だ。
なっちゃんは逆転、逆転の連続で、広夏も残り20秒で逆転した時は感動を生んだ。
二人とも何がなんでも勝ち上がりたい執念が垣間見れ、あきらめない姿勢が滲み出てた。
こうなってくると、徐々にチームジャパンの団結力が強くなり、普段見られない力が湧いてくるのがチーム戦の醍醐味だ。
僕は4人の体力をなるべく軽減する為に、ボードキャリーを徹底した。
特にビーチからレストランの拠点までの階段が長く、1分のライティングを1ヒート三本ほどしたあとは、足がガクガクになっていて、少しでも体力を温存して欲しかった。
日にちが進むにつれ、やる事は一緒。
とにかく肩の張った波をジャッジスタンドまで二本乗り継く。
それだけである。
そして、気づけば全員生き残っている国は日本だけになった。
しかし、フランス、ブラジル、ハワイは敗者復活で勝ち上がってくるのはほぼ間違いないので、選手達には気を抜かないように言っていた。
いよいよ最終日
ここまで来ると誰がうまいとかの話ではない。
一番いい波を二本、確実に仕留めた選手が勝ち上がるのがサーフィンの大会である。
結果は、鷹が0.23の差で銀メダル
もし、あのカイサラスが乗った9、5の波に鷹が乗っていたら、鷹が優勝だったように思える
なっちゃんは、3位の銅メダル
海は、5位
広夏は、7位
そして、ハワイのカイサラスが優勝
女子は、一人群を抜いているハワイのホノが優勝
ハワイのダブル優勝により、最後の最後で金メダルがこぼれ落ち、日本チームは銀メダル
銅メダルにブラジルと言う結果になった
悔しさは残るが日本は胸を張っていいほど素晴らしい快挙を成し遂げた。
長い間、日本にはツアー戦のロングの試合があり、海外にはない。
生き続けた日本のツアー戦が選手のレベルアップに貢献したのは間違いないのだ。
25年前は、アメリカやオーストラリア、フランス、ハワイ、ブラジルの各国で国内のロングボードの試合はたくさんあったが、今現在は日本のみと言っても過言ではない。
世界のツアー戦は3、4試合、存続しているが、いかんせんお金がかかるので、簡単には参戦できないのが現状だ。
そして、来年の2月に発表すると言うロサンゼルスオリンピックにロングが追加するのか?しないのか?と言う話。
現状では、ヒフティ ヒフティ 50パーセント
と仕掛け人の重要人物が言っていた。
でも、こうも言っていた。
いい手ごたえはあると。
最後に今回の大会には、チームジャパンの裏方でもう二人の存在を忘れてはならない
スポーツ科学庁から来たカメラマンの平瀬戸さん
そして、スペイン語が堪能で、コスタリカに10年以上住み、元空手の日本チャンピオン、僕が大好きな映画のひとつ、ラストサムライにも出演した純也さん
純也さんのスムーズな段取りと臨機応変な交渉術は目を見張るものがあり、ただ者ではない。
終わりに、もしロサンゼルスオリンピックが決まったら、各国総出でベストメンバーを揃えてくることだろう
特にサーフィン大国、アメリカ、オーストラリア、ブラジルが黙っているわけがなく、世界には強者がまだまだいることを忘れてはならない。
ハワイは、今回、ベストメンバーを揃え、途中、そのハワイを押さえたことは日本のレベルが段違いに上がったことは誇って良いと思う。
首都 サンサルバドル空港にて
選手皆さんへ、感動をありがとう
そして、日本からの応援も選手へ届き、とてつもない力になったことに感謝である。
おわり











