共業の所産 マイクロプラスチック
共業の所産という言葉をご存知でしょうか?
この言葉は仏教用語で、呼んで字のごとく、一人一人から企業まで関係があるという意味。
近年、マイクロプラスチックが問題視され始めた理由は、自分達の捨てた有害なものが自分達の体内に帰ってきたからである。
電気のあり方が問題視されたのも、自分達の体内に有害な放射性物質が帰ってきたからである。
海に捨てられるプラスチックは、8割が街から川を伝って海へ、2割がポイ捨てや不法投棄と言われ、それらが紫外線や塩水により徐々に劣化し、長い年月を経て細かく砕かれ、海の生き物が間違えて食べて死んでしまったり、食物連鎖によって我々の食事にも含まれはじめた。
それは海だけにとどまらず、陸の上でも長年の紫外線や微生物により細かくなったものが土壌にも含まれはじめ、牛乳成分で出来ている粉ミルクにも含まれていることが分かった。
そして、最近の研究では大気にも含まれていることが分かっていて、粒子のプラスチックに水蒸気が結びつき、曇が増える試算もある。
我々、海に入って波に乗る人達は陸と海の狭間で生きていて、川や潮流で流れてくるゴミを、毎日、目の当たりにしていて、社会に警報を鳴らすフィルターの役割を必然と担ってきた。
ビーチクリーン活動は50年前から行われ、幾多に及び社会に警報を鳴らしていたが、なかなかその声は届かずにいた。
私が日本プロサーフィン連盟の選手会長に就任した時などは、少しでも社会にメッセージを届けようと試合中にビーチクリーンを呼びかけ、みんなでゴミを拾ったもんだ。
でも、拾っても、拾っても、きりがないのである。
嵐などの翌日は、再び砂浜にゴミがうようよあり、せっかく綺麗にしても本当にきりがないのである。
そのゴミの中で目立つものは、ペットボトル、漁具【網や発泡スチロール】、吸い殻、ビニール袋などが目立つ。
しかし、これら目に見える浮遊ゴミは全体の1%で、99%は分解され海に沈むという研究結果があり、その細かいものを海の生き物が間違えて食べ、それが我々に帰ってきたわけだ。
プラスチックの使用量を国別でみると、アメリカが1番で、日本が2番である。
しかし、海洋に捨てられるものは日本が30位で、東南アジアや中国が上位をしめる。
かつて、日本も発展途上時には、多摩川にゴミや洗剤を捨ててた時期があって、国が先進国になり始めると余裕ができ、綺麗にしていった経緯が日本にもある。
発展途上時は余裕がないからゴミ問題に目をつむるが、余裕ができはじめると綺麗にしようという人達がたくさん現れる。
東南アジアや中国はまさに今、その時期の転換期で、徐々にゴミの不法投棄の取締りを強化し始めた。
私は世界40カ国を旅したが、日本ほど過剰包装の国は見たことない。
タイトルに共業の所産と書いたのは、これらは人類共通の課題で、特に法案の整備や企業努力が必要で、人類は解決法を模索しなければ、40年後には魚よりプラスチックの方が多くなる研究結果もあり、人間の体内にどんどんマイクロプラスチックが蓄積するという何とも恐ろしい話である。
そこで、減らす方法、何度も使う方法、資源に戻す方法をみんなで考えなければならない。
例えば、自分の知り合いの若い漁師さんに話を伺うと、ナイロンの糸で出来ている網などはゴミを粉砕する時に機械に絡まるということで引き取ってくれないという。
お金に余裕がある漁師さんは産業廃棄物に持ち込むが、余裕がない漁師さんは港に放置したり、そして、海に捨てる者も少なくないという。
この話を聞いた時、自分は何も不思議に思わなかったが、一つ不思議に思ったことがある。
日本は漁師さんが採ってくる魚介類を食べ、成り立っている部分が多々あるので、漁具の廃棄に行政が税金を投入するとか、なんらかの解決策を考えるべきだ。
1つ100万円もするテトラポットの過剰投入より、もっと重要なことに税金を使うべきだ。
各自がマイボトルを持参してコンビニの大きな容器からマイボトルに飲料を入れたり、洗剤の本体ボトルを再利用する詰め替え方式をもっと普及させたり、売り方を変えることも重要だ。
過剰包装をやめ、自然由来の成分で出来ている包装へシフトしたり、海外の何か国みたいなポイ捨て罰金制度の導入も必要である。
インドでは、プラスチックを持っているだけで罰金という厳しい処置を取っている。
フランスではつい最近、食品への過剰包装に法案を可決させ強化している。
今現在、レジ袋の有料化で人々は環境への意識が少しは高まったが、逆に包むものが少なくなり、より散乱するということも起きている。
義務教育でもっと環境問題のことを子供達に教えることも重要だと思う。
しかし、企業はトップダウンの法案が成立しない限り、大半は動きそうもない。
それでも、国際社会の圧力や体内に挟まる粒子のプラスチックが蓄積し、時間の問題で動かざるえないと私は思っている。
なんでもそうだけど、根本的に根っこの部分を何とかしない限り、海に溶け込むプラスチックは増え、自分達の体内に帰ってくる。
環境問題というのは、正直、めんどくさい部分が多々あり、人々はなかなか取り組まないし、余計な労力であると人々は認識している。
人々を動かすには、インセンティブ〔ご褒美〕を設けるのも1つの方法だと自分は思っていて、たとえば、汚れがひどい海岸などでは行政主導でビーチクリーンイベントでもなんでもやって、20キロで1000円とか、支給するような取り組みがあったら参加する人は増えるし、意識も高まることだろう。
中には家庭ゴミを持ってきて不正するものもいるけど、イベント形式で袋を市役所が用意したりすればいいと思う。
過剰包装削減に取り組んだ企業には環境税率を少し安くするとか、お金で釣るやり方は好きではないが、そうでもしないと、永遠にいたちごっこが続くのが現状だ。
日本でいくらそういうことをやっても、東南アジアや中国、韓国のゴミが黒潮に乗り、こちらにやって来るという話もあるが、だからと言って何も取り組まないというのはおかしな話で、世界が脱プラに進んでいる中、日本は過剰包装世界一の称号から脱しないといけないし、その取り組みは時間の問題と待ったなしの状況でもある。
じつは、海洋投棄に関しては世界中で取り締まる法律がなく、誰も見ていないところで捨てたら、それを見張る人もいなく、取り締まることが困難な状況だ。
何はともあれ、減らす方法を模索しなければ、体内に挟まるマイクロプラスチックが増え続けることだけではなく、海の生態系を脅かし、結果的に我々に帰ってくることだけは確かである。
