
政府は、22日の臨時閣議で、物価高への対応などを柱とし、民間の資金も含めた事業規模が39兆円程度となる、新たな経済対策を決定しました。
裏付けとなる補正予算案を12月上旬にも国会に提出し、年内の成立を目指す方針です。
政府 臨時閣議で新たな経済対策を決定

政府は、22日夕方、臨時閣議を開き、新たな経済対策を決定しました。
それによりますと「賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を確実なものにする」として、
▽賃上げ環境の整備などを通じた日本経済・地方経済の成長
▽物価高への対応
▽国民の安心・安全の確保を
柱に掲げています。

主な事業としては、
▽来年1月から電気・ガス料金の補助を再開し3月まで行うことや
▽住民税の非課税世帯を対象とした給付金の支給
▽能登半島地震の被災地のインフラ復旧や生活再建の支援策などを
盛り込んでいます。
経済対策の
▽財政支出の規模は21兆9000億円程度
▽民間の資金も含めた事業規模は39兆円程度となります。
対策の裏付けとなる今年度の補正予算案での一般会計からの支出は13兆9000億円程度となる見通しで、政府は、来月上旬にも国会に提出し年内の成立を目指す方針です。
一方、今回の経済対策には、自民・公明両党と国民民主党との合意に基づいて、年収が103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」について「税制改正の中で議論し、引き上げる」と明記され、来年度の税制改正に向けた議論の中で、制度設計など具体的な検討が進められます。
新たな経済対策の内容は
経済対策の柱(1)賃上げ環境の整備など

経済対策の柱の1つが「日本経済・地方経済の成長」で、すべての世代の賃金・所得を増やすとしています。
▽賃上げ環境の整備では、特に、最低賃金を2020年代に全国平均で1500円に引き上げる目標に向け、中小企業への支援策を多く盛り込みました。
賃上げのために業務改善や設備投資を行う中小企業への助成を行います。
また、コストの上昇分を取引価格に適切に転嫁できるよう促す取り組みを強化する方針です。
▽賃金・所得の増加を全国に波及させる政策として、ICT技術も活用した「地方創生2・0」を掲げています。
地域資源を活用した農林水産業や観光などの高付加価値化や、デジタル化の推進を「新しい地方経済・生活環境創生交付金」などで支援するとしています。
▽「投資立国」の実現では、今後、成長が期待される分野で内外からの投資を引き出すとしていて、国内のAIや半導体産業を下支えするため、10兆円以上の公的支援を行う枠組みも盛り込みました。
経済対策の柱(2)物価高への対応

2つ目の柱は当面の物価高への対応です。
燃料価格の高騰への対策として行われるのが電気・ガス料金への補助です。
この補助は、10月の使用分で終了していましたが、電力やガスの使用量が増える冬場の支援を目的に、来年1月から再開し3月まで実施するとしています。
このうち電気料金は
▼1月と2月は10月分の補助額と同じで、
▽家庭や小規模な事業所向けの「低圧」の電気料金で1キロワットアワーあたり2.5円、
▽企業向けなどの「高圧」の電気料金は、1.3円を補助します。
▼3月は
▽「低圧」は1キロワットアワーあたり1.3円、
▽「高圧」は0.7円へと補助を縮小します。
また、ガス料金は1立方メートルあたり
▽1月と2月は10円、
▽3月は5円をそれぞれ補助します。
経済産業省によりますと、標準的な家庭の場合、
▽1月と2月は電気代で1000円、ガス代で300円、
▽3月は電気代で520円、ガス代で150円、
それぞれ負担が減るとしています。
一方、低所得者への支援として住民税の非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円を目安に給付金を支給し、このうち子育て世帯には子ども1人あたり2万円を加算するとしています。
このほか、ガソリン価格を抑えるための補助金については、経済対策の策定後の12月から出口に向けた対応を行うとして、補助率を段階的に引き下げるとしています。
経済対策の柱(3)国民の安心・安全の確保

3つ目の柱が国民の安心・安全の確保です。
▽能登半島地震やその後の豪雨災害を受けた地域でのインフラの復旧、被災者の生活再建や事業者のなりわい再建、災害廃棄物処理の加速を支援する事業を盛り込みました。
また、▽防災・減災対策の推進に向け、簡易ベッドなどの備蓄の促進やキッチンカーやトレーラーハウスの登録制度の創設などによって、避難所環境の抜本的改善に取り組むほか、避難所となる学校の体育館への空調整備を計画的に進めるとしています。
このほか、▽闇バイトによる犯罪が社会問題となる中、いわゆる「青パト」と呼ばれる車両の整備やサイバーパトロールの強化なども打ち出されました。
闇バイトへの対策も

首都圏で相次ぐ強盗事件など、闇バイトによる犯罪が社会問題となる中、新しい経済対策には闇バイトへの対策も盛り込まれました。
具体的には、
▽捜査機関が実行役などから押収したスマートフォンを解析し、指示役の特定につなげるための資機材の高度化、
▽闇バイトを募集する書き込みや投稿に対するサイバーパトロールの強化、
▽求人サイトやSNSの事業者に対し、書き込みや投稿を削除するよう捜査機関側から依頼する取り組みを進めていくことなどが盛り込まれています。
さらに、
▽防犯機能の高い住宅のドアや窓ガラスの設置に対する補助の拡充、
▽青色の回転灯をつけたいわゆる「青パト」と呼ばれる車両で防犯パトロールを行う自治体や団体に、車両の整備費用を補助するなど財政的な支援策が盛り込まれています。
捜査の体制確保と地域住民や自治体による自助、共助、公助の取り組みを組み合わせることにより、社会全体で防犯対策を強化していくとしています。
内閣府“経済対策は実質GDPを21兆円程度押し上げる効果”
今回の経済対策の効果について内閣府は物価の変動を除いた実質のGDP=国内総生産を21兆円程度押し上げる効果があると試算しています。
実質の成長率でみると今後3年間で効果があらわれると想定した場合、1年あたりの平均でプラス1.2%程度となります。
▽半導体産業や中小企業をはじめとする産業支援を通じて民間企業も含めた投資が促進されることや、
▽住民税の非課税世帯を対象にした給付金などの物価高への対応で消費が活性化される効果を見込んでいます。
また、今回の経済対策の柱の1つとなっている物価高への対応のうち、電気・ガス料金への補助など直接、国民負担を軽減する施策にあわせて3兆8000億円程度の財政支出を行います。
電気・ガス料金やガソリン価格への補助の効果としては、消費者物価指数の上昇を1か月の平均で0.3ポイント程度抑える効果があるとしています。
財政の課題は

今回の経済対策の実施にあたり、今年度の補正予算案での一般会計からの支出は13兆9000億円程度となります。
補正予算の規模は、コロナ禍前の2013年度から2019年度は多くても5兆円程度でしたが、2020年度以降はコロナ対策などとして10兆円から30兆円規模の補正予算の編成が続き、財源の多くを追加の国債発行で賄ってきました。
政府は去年に続き、ことしの「骨太の方針」でも「歳出構造を平時に戻す」と明記しましたが、今回の経済対策に伴う補正予算案での支出規模は昨年度を上回ることになります。
今年度は当初予算の段階で、すでに一般会計の歳入の3割を超える35兆円余りを国債でまかなう計画で、今回、国債を追加に発行する可能性もあります。
日銀の金融政策の転換で長期金利の上昇が見込まれるなか、巨額の国債の償還費用に加え利払い費も膨らめば、財政状況はいっそう厳しくなります。
また、政府は、財政健全化の指標である「プライマリーバランス=基礎的財政収支」を来年度=2025年度に黒字化する目標を掲げ、内閣府は、ことし7月、来年度は8000億円程度の黒字になるという試算を示しましたが、今回、盛り込まれた事業が年度をまたいで執行された場合、来年度の基礎的財政収支にも影響することになります。
今回の経済対策で政府は「経済あっての財政」だとして賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進めるとしていますが、財政規律のあり方が改めて問われることになります。
石破首相“「高付加価値創出型経済」への移行目指す”

石破総理大臣は22日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「国民の暮らしが豊かになったと感じていただくためには、賃金と所得が増えることが必要だ。『コストカット型経済』から脱却し『高付加価値創出型経済』への移行を目指す。家計を温めるため、物価上昇を上回る賃上げを実現する。最低賃金の引き上げや、中小企業をはじめとした事業者が確かにもうかり、賃上げができる経営基盤の強化、成長のための支援、価格転嫁を後押しをする仕組みを構築する」と述べました。
また「都市部のみならず地方が希望や幸せを実感してもらえるよう、新しい地方創生交付金の倍増を前倒しして実施し、地域の人たちがみずから考え、みずから行うことを支援していきたい。2030年度までにAI、半導体の分野に10兆円以上の公的支援を行い10年間で50兆円超の官民投資を引き出したい」と述べました。
そして「自民党と公明党が丁寧に協議し、国民民主党と合意した。補正予算案を速やかに編成し、予算審議に丁寧に答えながら多くのご理解を得て早期成立を目指したい。令和7年度予算案に向けても、引き続き、党派を超えて優れた方策を取り入れ政策を前に進めたい」と述べました。
以下、省略
